日本外傷学会雑誌
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症例報告
  • 生天目 かおる, 小林 辰輔, 山村 英治, 長嶺 嘉通, 横堀 將司
    原稿種別: 症例報告
    2025 年 39 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 2025/01/20
    公開日: 2025/01/20
    [早期公開] 公開日: 2024/11/15
    ジャーナル フリー

     【背景】咽頭後間隙血腫 (Retropharyngeal Hematoma : RPH) は鈍的外傷のうち約1%と低頻度であるが, 気道狭窄を来すことがある.

     【症例】79歳, 女性. 交通外傷で救急搬送となる. CTを施行したところ, 咽頭後間隙前後径 (以下, 前後径) はC2 12mm, C6 11.7mm でありRPHと診断した. 来院時の呼吸・循環動態は保たれていたが, 来院5時間後に気道狭窄を来した. 経口気管挿管は困難であり, 輪状甲状靱帯間膜切開を行い, 翌日気管切開術を施行した. 血腫の消退とともに気道狭窄は改善し, 入院42日目に気管切開チューブを抜去, 自宅退院となった.

     【考察】RPHは遅発的に気道狭窄を起こす可能性があり, 厳重な経過観察と適切な気道管理が重要となる.

  • 高須 惟人, 永嶋 太, 富澤 悠貴, 松田 知也, 松本 大昌, 菊川 元博, 番匠谷 友紀
    原稿種別: 症例報告
    2025 年 39 巻 1 号 p. 6-11
    発行日: 2025/01/20
    公開日: 2025/01/20
    [早期公開] 公開日: 2024/11/26
    ジャーナル フリー

     86歳の男性が下腹部を重機と塀の間で挟まれて受傷した. CTで膀胱直腸窩にextravasationを伴わない液体貯留を認め, 代用膀胱損傷を疑い緊急開腹した. 損傷部位を同定できなかったが, 濃い血尿とCre値の高い腹水から代用膀胱損傷と診断した. 経尿道的ドレナージとopen abdomen managementで経過をみる方針となったが, 持続する濃い血尿と腹腔内からの血性排液のためunexpected reoperationを行った. 代用膀胱周囲の剥離をすすめると一部に血液の貯留を認め, この周囲へのガーゼパッキングと抗凝固薬の拮抗薬の投与を行ったところ血尿の改善を得た. まれな外傷性代用膀胱損傷の症例に対して, ガーゼパッキングと抗凝固薬の拮抗の組み合わせを迅速に遂行したことが有効に働いたため報告する.

  • 松田 知也, 永嶋 太, 佐々木 亮太, 小西 良一, 三宅 亮, 古城 都, 奥川 郁
    原稿種別: 症例報告
    2025 年 39 巻 1 号 p. 12-18
    発行日: 2025/01/20
    公開日: 2025/01/20
    [早期公開] 公開日: 2024/11/26
    ジャーナル フリー

     症例は生来健康な70代女性. 1週間前に自転車走行中に転倒, 徐々に体動困難となり救急搬送された. 血液検査にて炎症反応の上昇を認め, CT検査上, 骨傷や明らかな膿瘍形成は認めないが, 右腸腰筋を含む周囲筋組織に腫脹を認め, 化膿性筋炎と診断し抗菌薬治療を開始した. 第5病日に, 血液検査上, 炎症反応の増悪を認めCT検査を施行した. 右腸腰筋を中心とした多房性多発筋膿瘍を認め外科的ドレナージを施行した. 術後経過は良好で第55病日に転院した. 感染の危険因子が少ない患者でも, 擦過傷などの軽微な皮膚の破綻を伴わず, かつ骨傷を伴わないような軽微な筋挫傷からでも筋肉内膿瘍をきたす可能性がある.

  • 稲垣 直哉, 松岡 竜輝, 笹本 翔平, 梶原 宗太, 羽尾 元史, 一森 紫衣奈, 西沢 剛, 斎藤 充
    原稿種別: 症例報告
    2025 年 39 巻 1 号 p. 19-24
    発行日: 2025/01/20
    公開日: 2025/01/20
    [早期公開] 公開日: 2024/11/26
    ジャーナル フリー

     高齢者の低エネルギー外傷による脆弱性骨盤輪骨折 (fragility fractures of the pelvis : FFP) が増加している. 特にRommens分類FFP IVbのH型やU型は, 脊椎骨盤解離の特徴を有するため, 手術はSpinopelvic Fixation (SPF) が施行されることがある. しかし, 既往歴の多い高齢患者に対してはtrans-iliac trans-sacral (TTS) screw固定などの低侵襲な治療が望まれる. 今回, 著者らはFFP IVbに対してTTS screw固定を施行した2例を経験した. 2症例ともにFFP IVbのH型で, 横骨折の高位はS2椎体レベルであった. S1に対してTTS screwを2本挿入し, 術直後から全荷重歩行を許可. 術後6ヵ月で骨癒合し受傷前と同様のADLとなった. 術前に綿密な計画と技術の再確認が必要であるがTTS screwが2本挿入できれば, 良好な臨床転帰を得られる.

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