日本外傷学会雑誌
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原著
  • 大饗 和憲, 井口 浩一, 森井 北斗, 上田 泰久, 八幡 直志, 高橋 翼, 松田 浩美, 笠原 知樹, 田沼 悠太
    原稿種別: 原著
    2022 年 36 巻 3 号 p. 265-269
    発行日: 2022/07/20
    公開日: 2022/07/20
    [早期公開] 公開日: 2022/03/04
    ジャーナル フリー

     高齢者の非骨傷性頸髄損傷に対する積極的早期手術療法の治療成績について報告する. 対象と方法 : 70歳以上の非骨傷性頸髄損傷患者に可及的早期に除圧術を施行し, その術後成績を検討した. 結果 : 治療を行ったのは59例でそのうち手術を行ったのは57例であった. 男性48例, 女性9例, 平均年齢78.2歳, ASIA分類でAIS A13例, B8例, C36例であった. 受傷から手術までの時間は中央値9時間, 在院日数は46日, 入院中の死亡は5例 (8.8%) であった. 入院中にAISで1段階以上改善した症例は40例 (70.2%) で, そのうち7例 (全体の12.3%) では2段階以上の改善がみられた. 考察 : 高齢者の脊髄損傷は神経学的予後が悪く, 合併症により死亡率も高いと報告されている. しかし, 高齢者であっても積極的に早期に除圧を行うことで死亡率を下げることができ, 機能予後も改善できると考える.

臨床検討
  • 矢形 幸久, 多田 圭太郎, 中山 晴輝, 伊集院 真一, 松山 重成, 石原 諭, 中山 伸一
    原稿種別: 臨床検討
    2022 年 36 巻 3 号 p. 270-275
    発行日: 2022/07/20
    公開日: 2022/07/20
    [早期公開] 公開日: 2022/03/14
    ジャーナル フリー

     胸骨骨折の多くは保存的加療の対象となるが, 稀に骨接合術の適応となる症例を経験する. 自施設で手術加療を行った胸骨骨折8例について調査した. 高エネルギー外傷が7例で大動脈損傷や脊椎損傷など重篤な合併外傷がみられた. 胸部打撲によって受傷した1例は胸骨骨折単独外傷であった. 手術適応の主因は, 骨折部の転位が著しいもの6例, 呼吸障害の要因となっていると評価したもの2例であった. 手術は全例胸骨裏面にスパーテルを挿入して心大血管を保護した状態で操作し, 7例で2枚の顔面骨用ロッキングプレートを並べて固定, 柄部片側骨折の1例にはT字プレートを使用した. スクリューは胸骨裏面の骨皮質を貫通して挿入し, 手術時間と出血量は中央値でそれぞれ84分, 74mlであった. 多様な骨折型に対して, 顔面用プレートを主として, 臨機応変な固定方法を選択することが望ましい.

  • 佐藤 啓太, 浦城 淳二
    原稿種別: 臨床検討
    2022 年 36 巻 3 号 p. 276-279
    発行日: 2022/07/20
    公開日: 2022/07/20
    [早期公開] 公開日: 2022/05/18
    ジャーナル フリー

     非常に低いエネルギーの外力を契機として, 出血性ショックや凝固障害に至る症例を時に経験する. 自然止血が得られず, 止血術が必要な体幹部皮下出血を大量皮下出血と定義し, 症例の背景や, 臨床経過について検討を行った. 2019年から2020年の1年間の当院で経験した8症例を後方視的に検討した. 圧迫止血にもかかわらず, 6例がショック状態であり, 6例に輸血を必要とした. 血液透析や抗凝固, 抗血小板剤の内服歴は大量皮下血腫のハイリスクとなる可能性が示唆された. 全例, transcatheter arterial embolization (TAE) によって止血が得られた. 圧迫しやすい四肢と異なり, 体幹部では血腫が同心円状に増大し, 出血点に十分な圧迫が加わらず, 結果として大量出血をきたす. 来院時点で造影剤の血管外漏出像である場合には積極的な止血を検討すべきである.

症例報告
  • 松田 知也, 永嶋 太, 三宅 亮, 古城 都, 奥川 郁
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 36 巻 3 号 p. 280-285
    発行日: 2022/07/20
    公開日: 2022/07/20
    [早期公開] 公開日: 2022/02/08
    ジャーナル フリー

     症例は50代男性. 自殺企図により9階から墜落し前医へ搬送された. 左肺内の造影剤血管外漏出像を伴う外傷性肺嚢胞を合併した多発外傷による出血性ショックで当院に転院搬送された. 気道出血・大量血胸を認め, Damage Control Surgeryを行い, 非解剖学的肺部分切除術, 胸腔内ガーゼパッキング, 一時的閉胸を施行した後, 開腹止血術を施行した. 第2病日, 全身状態は安定化し左肺下葉切除術, 根治的閉胸を施行した. 経過良好で第6病日に転院した. 外傷性肺嚢胞は, 時に造影剤血管外漏出像を伴い大量の気道出血および血胸の原因となり致命的となる. その際は, 保存的加療に固執せず迅速に開胸止血術を行う必要があり, さらに多発外傷で他部位の止血術も必要な場合はDamage Control Thoracotomyを行うべきである.

  • 松田 知也, 奥川 郁, 三宅 亮, 古城 都, 阪本 雄一郎
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 36 巻 3 号 p. 286-290
    発行日: 2022/07/20
    公開日: 2022/07/20
    [早期公開] 公開日: 2022/02/18
    ジャーナル フリー

     外傷性腰ヘルニアは比較的稀な疾患であり, 手術時期および術式において標準的な治療が確立していない. この度, われわれはシートベルト損傷による外傷性腰ヘルニアに対し超音波検査を併用し修復術を施行した症例を経験したため報告する. 症例は40代女性. 自動車運転中に電柱に衝突し救急搬送となった. 病院到着時, 全身状態は安定していたが右前胸部から左側腹部および右側腹部にシートベルト痕を認めた. CT検査にて右下腰ヘルニアと診断し, 一度退院後に待機的に前方アプローチにてヘルニア修復術を行った. 術後8日目に退院, 術後12ヵ月現在, 明らかな合併症なく経過している. 外傷性腰ヘルニアは, 腹腔内臓器損傷の有無・合併症のリスク・ヘルニア門のサイズを考慮した手術適応・時期の決定が重要である.

  • 出口 亮, 内田 健一郎, 栗正 誠也, 脇田 史明, 羽川 直宏, 野田 智宏, 西村 哲郎, 溝端 康光
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 36 巻 3 号 p. 291-296
    発行日: 2022/07/20
    公開日: 2022/07/20
    [早期公開] 公開日: 2022/03/22
    ジャーナル フリー

     患者は72歳の男性. 4m下の道路に墜落し, 鈍的頸部外傷を受傷した. 頸髄損傷に加えて第6頸椎レベルでの右椎骨動脈閉塞と左椎骨動脈損傷を認めたが, 併存する頭部外傷により抗血栓療法の早期開始は見送られた. 第6病日より抗凝固療法を開始したが, 第19病日の頭部MRI検査で左出血性小脳梗塞および左椎骨動脈閉塞を認めた.

     椎骨動脈損傷の治療は早期の抗血栓療法が中心となるが, 他の併存する外傷のために抗血栓療法を導入できない時期には, 後方循環の脳梗塞を回避するため早期のコイル塞栓術の検討も必要と思われた. また抗血栓療法の導入に併せ少なくとも7~10日は経時的な画像検査を行い, 損傷血管の血流について評価する必要があると考えられた.

  • 藤森 大輔, 本村 友一, 山本 晃之, 原 義明, 西本 哲也, 高橋 希, 柄澤 智史, 高橋 功
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 36 巻 3 号 p. 297-302
    発行日: 2022/07/20
    公開日: 2022/07/20
    [早期公開] 公開日: 2022/03/30
    ジャーナル フリー

     74歳男性. シートベルトを着用し軽乗用車運転中に意識を失い前方の車両に追突し, フロントエアバッグが作動した. ドクターヘリで当院へ搬送され, CT検査で胸骨骨折・内胸動脈損傷・多発腰椎圧迫骨折の診断となり, 経カテーテル的内胸動脈塞栓術を施行した. 入院後より経時的に血中CPK値が上昇し, 代謝性アシドーシスと高乳酸血症も進行した後, 心停止・自己心拍再開を経て腸管虚血に至り, 第4病日に死亡した. 経過中のCT検査より胸部大動脈原性の両下肢の筋梗塞を含む多発塞栓症が疑われた. 安全装置であるエアバッグとシートベルトによる鈍的胸部外傷に起因した二次的な大動脈原性塞栓症で広範な筋梗塞を認めた例は稀有であり報告する.

  • 寺住 恵子, 佐々木 妙子, 堀 耕太, 林田 和之
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 36 巻 3 号 p. 303-309
    発行日: 2022/07/20
    公開日: 2022/07/20
    [早期公開] 公開日: 2022/06/01
    ジャーナル フリー

     50歳, 男性. 自動車事故. ショック, エコーで腹腔内出血陽性のため緊急開腹止血術を行った. 肝右葉深在性裂傷に対し, 肝縫合と肝周囲パッキングを施行後, n-butyl-2-cyanoacrylate (以下NBCA) を用いて右肝動脈前区域枝を塞栓した. 二期的手術時は止血していたが12時間後出血性ショックに至った. 塞栓部からの再出血に対し再止血を要した. NBCAは凝固障害下でも確実な塞栓効果が得られるとして知られる. 再出血の原因としてパッキングによる肝の変形時に形成された鋳型状硬化物が, パッキング解除後の肝血管に合わなくなった可能性が要因の一つと考えられた. NBCAによる止血後でも, パッキング解除後は常に再出血を念頭に置く必要があると考える.

  • 松岡 綾華, 三池 徹, 永嶋 太, 井上 聡, 岩永 幸子, 朝日 美穂, 吉武 邦将, 鳴海 翔悟, 木庭 真由子, 小網 博之, 阪本 ...
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 36 巻 3 号 p. 310-314
    発行日: 2022/07/20
    公開日: 2022/07/20
    [早期公開] 公開日: 2022/06/01
    ジャーナル フリー

     症例は46歳男性. 出血性ショックを伴う III b型肝損傷の診断で転院搬送された. 前医で輸血とresuscitative endovascular balloon occlusion of the aorta (REBOA) が開始された. 当院到着後damage control surgery (DCS) を行い, 根治的止血までに148分間の大動脈遮断を行い, 術後合併症なく経過した. REBOA使用時間が40分を超過すると虚血性合併症が出現しうるが, 本症例ではpartial REBOA, intermittent REBOAを併用し長時間遮断が可能であった. 出血性ショックの転院搬送ではREBOAによる循環動態維持が一つの選択肢となる.

  • 大井 真里奈, 丸橋 孝昭, 美島 利昭, 栗原 祐太朗, 藤岡 俊一郎, 宮地 鑑, 浅利 靖
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 36 巻 3 号 p. 315-319
    発行日: 2022/07/20
    公開日: 2022/07/20
    [早期公開] 公開日: 2022/06/14
    ジャーナル フリー

     背景 : 胸部大動脈損傷 (Blunt Thoracic Aortic Injury : BTAI) の治療の第一選択は胸部ステントグラフト内挿術 (Thoracic Endovascular Aortic Repair : TEVAR) となったが, 左鎖骨下動脈 (Left Subclavian Artery : LSA) の処理に関しては様々な議論がある. 症例 : 当施設でBTAIに対しfenestrated TEVAR を施行したのは3例で年齢はそれぞれ 70歳, 16歳, 42歳であり性別はいずれも男性であった. 受傷機転は交通外傷が2例, 転落外傷が1例で, ISSの中央値は41であった. 手技的成功率は100%, 手技時間の中央値は126分であった. フォローアップ期間中にmigrationやLSA閉塞, 逆行性A型解離, 四肢麻痺などの合併症は認めなかった. 結語 : 当院で経験したfenestrated TEVARの初期・中期治療成績は良好であった. 長期成績に関しては今後さらなる検討が必要である.

  • 佐藤 友子, 前原 潤一
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 36 巻 3 号 p. 320-323
    発行日: 2022/07/20
    公開日: 2022/07/20
    [早期公開] 公開日: 2022/06/14
    ジャーナル フリー

     症例は40代の男性. トラックの下敷きになり受傷した. 当院搬入時, 外傷の系統的アプローチにて右多発肋骨骨折, 右血気胸を認めた. 胸腔ドレーンを挿入したが気漏が持続するため第7病日に50%ブドウ糖液を用いて胸膜癒着術を行った. 200mlを胸腔内に注入後2時間クランプして開放し, 気漏の消失が得られた. 第10病日にドレーンを抜去しその後の再発はなかった. 50%ブドウ糖液による胸膜癒着術は自然気胸や肺手術後の気漏に対する治療法として報告されているが, 外傷性気胸に対して奏効した1例を経験した.

  • 津谷 明香里, 大村 範幸, 湯本 聡, 大高 葵, 中島 発史, 中畑 潤一, 藤田 康雄
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 36 巻 3 号 p. 324-331
    発行日: 2022/07/20
    公開日: 2022/07/20
    [早期公開] 公開日: 2022/06/22
    ジャーナル フリー

     症例は64歳男性. トラック同士の交通事故により, いわゆるOpen book typeの右骨盤骨折と両側下肢の多発開放骨折を受傷した. 先行した下肢創外固定手術中にabdominal compartment syndrome (以下ACS) を発症した. Open abdomen management (以下OAM) にて循環呼吸動態は安定したものの, 第2病日に閉腹したところACSを再発した. 第4病日に再開腹し, 第11病日に根治的閉腹術を行い, その後はACSの再発や合併症は認めず第81病日に退院となっている. 腹腔内圧測定の開始が遅れたこと, またOAMの適切な終了時期について確立した理論がないことにより, ACSの診断やOAMの方針について医療スタッフ内での統一したコンセンサスが得られず, そのマネージメントに苦慮した症例であった.

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