研究の目的 ある原系列の1項目を新奇刺激に置き換える際に順向もしくは逆向という方向性を持たせると、ランダムな刺激置換に比べ順序機能の転移が促進されるか否かを検討した。参加者 大学生42名を21名ずつ順向置換群と逆向置換群に振り分けた。手続き 5項目の原系列刺激に対する系列反応を訓練した(A1-A2-A3-A4-A5)。次の置換訓練では、原系列を構成する刺激を1項目だけ置き換えた5項目に対する系列反応を訓練した。このとき、順向置換群では、B1-A2-A3一A4-A5、A1-B2-A3-A4-A5、A1-A2-B3-A4-A5、A1-A2-A3-B4-A5、A1-A2-A3-A4-B5の順に訓練し、逆向置換群ではこの逆の順序(A1-A2-A3-A4-B5から始まりB1-A2-A3-A4-A5で終わる)で訓練した。テストフェイズではB1-B2-B3-B4-B5の系列反応が創発的に生じるか否かを検討した。また、B系列のうち任意の2項目についても系列反応が生起するか否かを検討した。行動の指標 テストフェイズでの正系列生成率を指標とした。結果 両群ともにチャンスレベルより有意に高い正系列生成率が5項目B系列において示され、促進の程度に有意な群差はなかった。結論 置換訓練に順向ないしは逆向という方向性をもたせることで、ランダムに刺激を置換するよりも順序機能の転移が促進されることが示された。
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