行動分析学研究
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31 巻, 1 号
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論文
  • 島宗 理, 若松 克則
    2016 年 31 巻 1 号 p. 2-14
    発行日: 2016/08/25
    公開日: 2017/08/25
    ジャーナル フリー

    研究の目的 参加型マネジメントの介入パッケージの効果を検証した。研究計画 顧客企業群間の多層ベースライン法を用いた。場面 関東近郊にある小規模な会計事務所で主に顧客企業から提出される会計書類の仕訳作業を対象に実験が行われた。参加者 パートタイム従業員4名(女性、38~50歳)が参加した。介入 参加者自らがチームで経営目標の達成について話し合い、月ごとに決めた標的行動の遂行について記録、集計し、フィードバックを行い、標的行動の目標達成に対して相互依存型の集団随伴性に基づいたインセンティブを会社側が支払った。行動の指標 顧客企業ごとに、毎月、請求金額をコストで割って算出される経営指標を従属変数に用いた。介入後は行動目標の完了率も毎月記録した。結果 介入パッケージの導入により、対象とした顧客企業群の経営指数が改善され、収支が改善された。参加者による手続きの評価もおおよそ高かった。結論 参加型マネジメントの介入パッケージには経営指標の改善につながる生産性の向上に効果があり、社会的妥当性もあることが示唆された。

  • 須藤 邦彦, 宮野 玲子
    2016 年 31 巻 1 号 p. 15-29
    発行日: 2016/08/25
    公開日: 2017/08/25
    ジャーナル フリー

    研究の目的 通級指導教室において平仮名の書字に困難を示すLD児に対する支援を行った。そして、これまでの平仮名のエラーパターンから数量的な評価基準を抽出し、参加児が理解できるように加工したうえでフィードバックする支援方法の有効性(判読性と動機づけの改善)を検討することであった。研究計画 課題間マルチベースラインデザインを用いた。場面 小学校通級指導教室で実施した。参加児 平仮名の書字に困難を示し、かつ書字活動への動機づけが著しく低下してしまっている小学校通常学級第1学年のLD児1名と支援者(長期研修派遣教員)1名が参加した。独立変数 エラーパターンから抽出した数量的な判読性の評価基準を加工して見本として提示し、口頭でも要点を教示した。また、参加者が記した文字をその都度見本と比較し、その差をフィードバックした。行動の指標 判読性として正しく文字を記す反応(正反応)の生起割合を、また動機づけとして連絡帳に記した文字の割合を求めた。結果 介入後、正反応の生起割合が上昇し、その効果が通常学級にも般化した。また、通常学級における連絡帳への書字割合が増加した。結論 エラーパターンから抽出した数量的で客観的な評価基準と、それに基づいた自己記録や自己評価とを合わせた支援方法が、児童の書字活動における判読性や動機づけ、そして通級と通常学級との支援者間の連携に有効である可能性を示唆した。

研究報告
  • 大屋 藍子, 武藤 崇
    2016 年 31 巻 1 号 p. 30-39
    発行日: 2016/08/25
    公開日: 2017/08/25
    ジャーナル フリー

    研究の目的 本研究は、野菜摂取行動に対するパーセンタイルスケジュールが大学生の野菜摂取行動の変動性を増大させるかどうか、また食習慣が改善するかどうか検討した。実験デザイン 参加者間多層ベースラインデザインとABABデザインを組み合わせて用いた。場面 参加者は様々な野菜を摂取するよう教示を受け毎日ウェブアンケートの回答が求められた。参加者 野菜摂取が不足していると感じている7名の大学生がプログラムへ参加した。介入 ベースラインフェイズでは、参加者は毎日その日に摂取した野菜品目名をウェブアンケートへ回答した。介入フェイズでは、ウェブアンケートに加え、パーセンタイルスケジュールが実施された。その日摂取した野菜の種類が直前1週間の野菜摂取を基に算出した基準値より少なかった場合、それを称賛するメッセージが電子メールで送信された。行動の指標 野菜摂取行動に関する異反応数を行動変動性の指標として用いた。またDIHAL.2 (Diagnostic Inventory of Health and Life Habit)と言語報告を食習慣の改善の指標として用いた。結果 一部の参加者において、介入フェイズで異反応数が増大し、食習慣の改善が見られた。結論 野菜摂取行動の拡大においてパーセンタイルスケジュールは明確な効果を示さなかったが一部の参加者に対しては有効であった。

実践報告
  • 仁藤 二郎, 奥田 健次
    2016 年 31 巻 1 号 p. 40-47
    発行日: 2016/08/25
    公開日: 2017/08/25
    ジャーナル フリー

    研究の目的 本研究では、「人前でうまく話せない」と訴えて精神科クリニックを受診したクライエントに対して、日常場面における生活上の行動アセスメントを行い、アセスメントに基づく支援を検討することを目的とした。場面 精神科クリニックの面接室にて心理面接を実施し、行動アセスメントとしてホームワークをクライエントの自宅にて実施した。対象者 クライエントは過去に痙攣性発声障害と診断された24歳の男性であった。介入 クライエントがホームワークとして地域の店に電話をして、あらかじめ決めておいた質問をすること、およびその様子をICレコーダーに録音するという内容の行動アセスメントを実施した。行動の指標 クライエントが電話で質問をすることができるか、その質問に対する答えが得られるかどうかを正反応の基準として、一週間ごとの正反応率を指標とした。結果 行動アセスメントを実施した結果、すべてのフェイズにおいて100%の正反応率を示した。クライエントは「実際にはできている(話せている)」と発言するようになり、それまでは避けていた種類の仕事に就くことができた。結論 精神科外来においてはクライエントの日常における客観的な測定が困難とされているが、本研究においてはそれが可能であり、かつクライエントの主訴を解消することができた。

  • 杉本 任士
    2016 年 31 巻 1 号 p. 48-54
    発行日: 2016/08/25
    公開日: 2017/08/25
    ジャーナル フリー

    研究の目的 相互依存型集団随伴性にトークンエコノミーシステムを組み合わせた介入によって、給食準備行動のパフォーマンスが向上し、小学校1年生の給食準備時間が短縮するか検討した。研究計画 基準変更デザインであった。場面 公立小学校の通常学級1年生1クラスでの給食準備の場面であった。参加者 通常学級に在籍する小学校1年生の児童26名(男子16名、女子10名)であった。行動の指標 給食準備に要する時間であった。独立変数による操作 トークン強化子とバックアップ強化子を用いた相互依存型集団随伴性による操作であった。トークンエコノミーシステムは、トークン強化子が5つ貯まったらバックアップ強化子と交換される手続きであった。結果 学級全体における給食準備のパフォーマンスが向上し、給食準備時間が短縮された。結論 相互依存型集団随伴性にトークンエコノミーシステムを組み合わせた介入は有効であった。手続きなどの社会的妥当性が示された。

  • 庭山 和貴, 松見 淳子
    2016 年 31 巻 1 号 p. 55-62
    発行日: 2016/08/25
    公開日: 2017/08/25
    ジャーナル フリー

    研究の目的 小型機器を用いたプロンプトとフィードバックによって、自閉症スペクトラム障害のある児童に対する教師の注目が増加するか検討し、さらにこれが通常学級における対象児の離席行動と授業参加行動に及ぼす効果を検証した。研究計画 ABABデザインを用いた。場面 小学1年生の通常学級教室で行った。対象者 小学1年生の担任教師と、自閉症スペクトラム障害のある小学1年生女児。行動の指標 教師の対象児への注目 (言語賞賛または個別指示)、対象児の離席行動、授業参加行動を標的とした。介入 対象児の機能的アセスメントを介入前に行った結果、対象児の離席行動は教師の注目によって強化されていることが推定された。そこで対象児の着席行動に対する教師の注目を増やすために、小型機器による5分間隔の振動をプロンプトとして教師に導入した。さらに、着席中の対象児への注目が増えていることについて、フィードバックも行った。教師には、対象児が離席し不適切な行動をしているときには、授業進行に支障がない限り注目しないよう教示した。結果 介入期では、教師の着席中の対象児への注目が増加し、これとともに対象児の離席率が減少し、授業参加率は増加した。結論 プロンプトとフィードバックによって、機能的アセスメントに基づく対象児への支援 (着席中の注目) を教師が行う回数が増え、さらにこれによって対象児の離席行動は減少し、授業参加行動は増加することが示された。

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