行動分析学研究
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33 巻, 2 号
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研究報告
  • 松田 壮一郎, 山本 淳一
    2019 年 33 巻 2 号 p. 92-101
    発行日: 2019/02/10
    公開日: 2020/02/10
    ジャーナル フリー

    研究の目的 広汎性発達障害(PDD)児のポジティブな社会的行動へユーモアを含んだ介入パッケージが及ぼす効果を検証した。研究計画 ベースライン期と介入期のABAB反転デザイン法を用いた。場面 大学内プレイルームでの自由遊びを対象に実験が行われた。参加児 特定不能の広汎性発達障害(PDD-NOS)男児(5歳5ヶ月) 1名が参加した。介入 (a)触覚ユーモア、(b)聴覚ユーモア、(c)視覚ユーモア、(d)からかいユーモア、(e)強化の遅延、(f)拡張随伴模倣、によって構成される介入パッケージを導入した。行動の指標 参加児のアイコンタクト、笑顔、及びアイコンタクト+笑顔の生起率を部分インターバル法により記録した。結果 介入パッケージを導入している間、アイコンタクト、笑顔、及びアイコンタクト+笑顔、全ての生起頻度がベースラインに比べて増加した。結論 ユーモアを含んだ介入パッケージは遊び場面におけるASD児のポジティブな社会的行動の頻度増加に効果があった。

  • 河村 優詞
    2019 年 33 巻 2 号 p. 102-109
    発行日: 2019/02/10
    公開日: 2020/02/10
    ジャーナル フリー

    研究の目的 知的障害特別支援学級在籍児童において、漢字学習への選好に及ぼす要因を検討することを目的とした。研究Ⅰでは低選好課題の後に高選好課題を行う場合の選好傾向を、研究Ⅱでは低選好課題の後に課題の選択機会がある場合の選好傾向を検討した。研究計画 学習課題間の選好査定を実施した。研究Ⅰでは低選好課題のみを行うプリントと低選好課題の後に高選好課題を行うプリントを児童に選ばせた。研究Ⅱでは低選好課題の後に課題の選択機会のあるプリントと選択機会の無いプリントを児童に選ばせた。場面 小学校の教室で実施した。参加児 特別支援学級に在籍する4名の児童であった。独立変数の操作 高選好課題の有無(研究Ⅰ)および選択機会の有無(研究Ⅱ)であった。行動の指標 各プリントに対する参加児の選択を指標とした。結果 研究Ⅰでは低選好課題の学習量が多くても、高選好課題を含むプリントが選好された。研究Ⅱにおいて一部の参加児では、低選好課題の学習量が多くても選択機会のあるプリントが選好された。結論 課題選択の傾向から高選好課題や選択機会が強化子として機能した可能性のあるケースが存在した。しかし、厳密に強化子として機能したか否かは検証できておらず、今後の課題として残された。

テクニカルノート
  • 吉岡 昌子, 藤 健一
    2019 年 33 巻 2 号 p. 110-117
    発行日: 2019/02/10
    公開日: 2020/02/10
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は、大学生の手書きによるノートテイクを教室場面で測定するための安価で移動の容易な小型装置を開発することであった。装置はボールペンにワイヤレス・マウスの左ボタンの回路と接続した小型スイッチを挿入し、マウスのレシーバを介して、スイッチの信号をコンピュータに送信する仕組みとした。記録はVisual Basic for Application®を用いた。計64名の大学生を対象として3回の性能試験を行った。参加者は1つの条件につき10字からなる文を6回筆記した。字の1画を1反応とみなし、スイッチが検出した筆記反応数、および、1秒あたりの筆記画数(処理速度)を分析の指標とした。第1次試験では3種の小型スイッチを比較し、常時閉回路をもつプランジャ型スイッチが筆記反応の検出に最も適することが分かった。このスイッチによる測定精度を高めるため、スイッチの押し込み量の減少による、反応検出の所要時間の短縮や、筆圧がスイッチの動作値以上に保たれるよう、書き手に検出状況を知らせるためのボールペンへのLEDの装着などを行った。これらの改良により、第3次試験では楷書の場合、総画数に占める筆記反応数の割合の平均が98.5%となり、大学生の手書き行動の測定に実用可能な精度が得られた。また、機械的振動を用いて装置の追従限界周波数を調べた結果、手書き反応を充分に追従できることを確認した。

解説
  • 平澤 紀子
    2019 年 33 巻 2 号 p. 118-127
    発行日: 2019/02/10
    公開日: 2020/02/10
    ジャーナル フリー

    行動分析学は、ポジティブ行動支援(positive behavior support, PBS)に代表されるように、個人のQOLを向上し、それによって望ましくない行動を最小化する教育的方法を開発してきた。一方、有効な教育的方法があっても、それを当該の生活環境における支援者が実行できなければ、期待される成果をあげられない。そこで、支援者が実行するためのサポートが課題となる。このサポートについて、ポジティブ行動支援が障害児教育制度に位置づけられている米国を中心として、学校におけるポジティブ行動支援(スクールワイドPBS)の中で進展がみられる。そこで本稿では、支援者の実行を支えるサポートについて、スクールワイドPBSから検討した。その結果、支援者の行動随伴性を支えるシステムを構築すること、そのためのサポート体制を構築すること、それをデータに基づいて推進していくことの重要性を指摘し、わが国におけるサポートの在り方について検討した。

  • 高砂 美樹
    2019 年 33 巻 2 号 p. 128-134
    発行日: 2019/02/10
    公開日: 2020/02/10
    ジャーナル フリー

    John B. Watsonの条件性情動反応の研究(Watson & Rayner, 1920)に出てくるAlbert B.として知られるLittle Albertは本当は誰だったのだろうか。この9か月齢の子どものことは心理学史ではよく知られてきたが、Albertは実験の後に生後ずっと暮らしていた大学病院から連れていかれ、その後どうなったかについては何の手掛かりもなかった。近年になって、Beck et al. (2009)は、Little Albertは実際にはDouglas Merritteという名前の子どもで、1922年に水頭症を患い、1925年に亡くなっていると主張した。さらに2012年の研究でBeckのグループはAlbertの神経学的障害の徴候を見落としていたと報告し、もしそれが事実であったならばWatsonがこの子どもを虐待していたことになることを示唆した。しかしながら、2014年になると、もう一つのグループの心理学者らがAlbert Bargerという別の子どもをより適切なAlbert B.の候補として同定した。本論ではLittle Albertを探す一連の論争について概観する。

  • 藤 健一
    2019 年 33 巻 2 号 p. 135-153
    発行日: 2019/02/10
    公開日: 2020/02/10
    ジャーナル フリー

    第二次大戦後の1951年頃、ハーバード大学のスキナー研究室からラット用とハト用のスキナー箱2組が、日本の東京大学(ラット用)と慶應義塾大学(ハト用)に発送された。本論文は、これらのHarvard製スキナー箱が日本に発送された経緯と、到着後のスキナー箱が当時の日本の動物行動実験におけるインストルメンテーションに与えた影響について考察した。主要な結果は、以下のとおりである。Harvard製スキナー箱の購入の手続きは、日本が連合国軍の占領下にあった1949年、当時の文部省の輸入機械購入費申請から開始された。機械の購入予算は、GHQのイロア資金によるアメリカ合衆国の予算であった。同装置の1台あたりの1950年度(昭和25年度)予算申請額は$500であったが、実際の執行額は$716であった。船便で横浜港に到着したのは1951年と推定されるが、直接的な文書での記録は見出せなかった。原型のHarvard製スキナー箱は、日本の研究者達にとっては余り使い勝手がよくなかったようで、日本に到着してから数年の間に、ラット用もハト用もいくつかの改造が加えられた。さらに、竹井機器は、Harvard製スキナー箱を原型とした数種類のスキナー箱を、1950年代半ば以降に製作販売した。占領期末期に日本に輸入されたHarvard製スキナー箱の意義は、むしろ日本における国産スキナー箱の設計製作と製品化の契機を作り出したことにある。

《小特集》日本のオペラント条件づけ研究事始め――スキナーから送られた2組の実験装置――
  • 伊藤 正人
    2019 年 33 巻 2 号 p. 154-155
    発行日: 2019/02/10
    公開日: 2020/02/10
    ジャーナル フリー

    日本におけるオペラント条件づけ研究の端緒は、1950年代初期にハーバード大学スキナー(Skinner, B. F.)研究室から送り出された実験装置(実験箱と累積記録器)にある。穀物強化子を呈示するハト用実験装置は慶應義塾大学に、水強化子を呈示するラット用実験装置は東京大学に届けられたが、これらの実験装置を何時、誰がスキナーへ要請したのか、どのような経緯で日本に届けられたのか等は不明である。こうした実験装置導入の経緯やその後のオペラント条件づけ研究の進展に果たした役割を明らかにすることは、心理学史の視点のみならず、科学技術史や日米の科学技術交流という視点からも興味深い問題であろう。

    こうした問題を明らかにすることは、現在までに60年以上経過し、2組の実験装置に関わった関係者の多くは物故しているため、容易ではなかったが、何人かの関係者から聞き取り調査を行い、その他の関連事項とともに年表にまとめた。こうして作成された年表を基礎資料として記載された事項と、事項間の関連などを解明することを目指した。

    本小特集は、年表に記載された事項の解説(伊藤,2019)から始まり、この年表に挙げられた「平沢秀雄氏」へのインタビュー記録(河嶋,2019a)、ハーバード大学製ハト用実験箱のその後の進展(河嶋、2019b)、東京大学関係者によるコメント(大山,2019)、戦前戦後の日本におけるオペラント条件づけ研究の実験装置に関する文献リストの解説(浅野,2019)からなる。なお、関連論文として、藤(2019)によるハーバード大学製実験装置輸入の経緯とその後の日本製実験箱の変遷についての解説が本特集とは別に本号に掲載されている。

    こうした一連の論文を通読することで、なお不明な点もあるものの、2組の実験装置導入の経緯やその後の発展の足跡の一端が明らかになり、オペラント条件づけ研究の日本における発展の姿を浮かび上がらせることになろう。

  • 伊藤 正人
    2019 年 33 巻 2 号 p. 156-161
    発行日: 2019/02/10
    公開日: 2020/02/10
    ジャーナル フリー

    本特集は、2016年に開催された日本行動分析学会第34回年次大会(大阪市立大学)の公募企画シンポジウム「オペラント条件づけ研究事始め:スキナー研究室から送られた2組の実験装置」(企画 河嶋 孝・伊藤正人)に基づいている。このシンポジウムでは、2組の実験装置導入の経緯や実験装置をめぐる日米交流の一端を明らかにすることを目的としていた。このための基本資料として、当時の慶應義塾大学と東京大学の状況を知る関係者の方々から聞き取り調査を行い、関連年表を作成した。ここでは、関連年表(付表)の内容について紹介し、問題点を整理することにしたい。なお、年表作成にあたり、吉田俊郎、大山 正、大日向達子、故二木宏明の諸先生方から貴重な証言をいただいた。記して感謝申し上げる。

    年表は、慶應義塾大学と東京帝国大学および東京大学の文学部心理学研究室に関わる事項を中心に、国内外の出来事も記載してある。記載した事項は、戦前(1940年代)から現在(2010年代)までの両大学におけるオペラント条件づけ研究に関与した方々の活動や、オペラント条件づけ研究のインスツルメンテーションを総括する目的で行われた「実験的行動分析京都セミナー」(2012年~2015年)の開催などの活動にも広げてある。また、2組の実験装置の内、現存している慶應義塾大学のハト用実験装置、特に累積記録器についての考証と動作復元の試みが浅野ら(Asano & Lattal, 2012)によって行われており、実験箱についても坂上ら(Sakagami & Lattal, 2016)による論考が公刊されているので、これらについても記載してある。

  • 河嶋 孝
    2019 年 33 巻 2 号 p. 162-163
    発行日: 2019/02/10
    公開日: 2020/02/10
    ジャーナル フリー
  • 河嶋 孝
    2019 年 33 巻 2 号 p. 164-167
    発行日: 2019/02/10
    公開日: 2020/02/10
    ジャーナル フリー
  • 大山 正
    2019 年 33 巻 2 号 p. 168-169
    発行日: 2019/02/10
    公開日: 2020/02/10
    ジャーナル フリー
  • 浅野 俊夫
    2019 年 33 巻 2 号 p. 170-174
    発行日: 2019/02/10
    公開日: 2020/02/10
    ジャーナル フリー
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