行動分析学研究
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一般論文
  • 島宗 理
    2024 年 38 巻 2 号 p. 86-98
    発行日: 2024/03/05
    公開日: 2025/03/05
    ジャーナル フリー

    研究の目的 企業が世帯に配達するダイレクトメール(DM)を消費者が実施する介入で低減させられるかどうか検討した。研究計画 世帯間の多層ベースライン法を用いた。場面と参加者 一般世帯から募った実験協力者5人の世帯に届いた不要なDMを対象とした。介入 協力者が郵便受けに「チラシの無断投函お断り」のステッカーを貼り、郵便で届いたDMは「受取拒絶」のラベルを貼って返送し、その他の方法で配送されたDMについては企業に対して個別に発送中止を依頼した。行動の指標 協力者が不要なDMを撮影し、配達方法と形態を分類して実験者に報告した。実験者は参加者ごとに週あたりのDM件数を集計した。結果 ベースライン期に比べて介入期ではすべての世帯でDMの配達件数が減少した。減少率は全体で65.2%だった。協力者からは介入の方法や効果に対して肯定的な評価が得られた。結論 消費者が実施する介入パッケージによって企業の行動を変容できることが示された。

研究報告
  • 平田 大智, 小林 千夏, 米山 直樹
    2024 年 38 巻 2 号 p. 99-109
    発行日: 2024/03/05
    公開日: 2025/03/05
    ジャーナル フリー

    研究の目的 アーチェリー競技を対象とした行動的コーチングにおいて、「点数」と「フォーム」の2種類のグラフフィードバックを使用し、どちらが有効であるか比較検討することを目的とした。また順序効果も考慮し、順番を参加者間で入れ替えて検討した。研究計画 ABCAデザインないしACBAデザインにて行った。参加者 大学体育会洋弓部に所属する女子選手4名であった。介入 4名の選手をフォームフィードバック条件先行群と点数フィードバック条件先行群に2名ずつ割当て、グラフフィードバックを行った。行動指標 5つの目標行動の達成率と競技点数であった。結果 フォームフィードバック条件先行群では、介入後、フォーム成績の上昇とともに1名において競技点数の上昇が認められ、点数フィードバック条件でも維持されていた。一方、点数フィードバック先行群では、介入後、フォーム成績と競技点数の上昇は認められず、フォームフィードバック条件に移行すると2名とも競技点数の低下が認められた。考察 フォームフィードバックのみで点数とフォーム成績が向上することが示唆された。一方、競技点数を先にフィードバックすることは、フォームフィードバックを行う上で抑制的に働く可能性があると考えられた。点数が下がった原因として自身の自己修正と標的行動の干渉が考えられる。また、アーチェリーのクローズドスキルスポーツという競技特性も結果に影響を与えた可能性がある。

実践報告
  • 西口 知宏, 米山 直樹
    2024 年 38 巻 2 号 p. 110-119
    発行日: 2024/03/05
    公開日: 2025/03/05
    ジャーナル フリー

    研究の目的 大学生3名に対して目標設定とグラフ・フィードバックを用いた介入を行い、スマートフォンの使用時間の減少とともに、睡眠の質が改善されるかを検討することであった。研究計画 参加者間多層ベースラインデザインと基準変更デザインの混合デザインを用いた。場面 オンラインを通じて介入を行った。参加者 3名の大学生であった。介入 ベースライン期の平均スマートフォン使用時間の90%を目標に毎日グラフ・フィードバックを行い、目標達成に応じて再度目標設定を行った。行動の指標 スマートフォン使用時間、入床時刻、睡眠尺度の得点を指標とした。結果 3名中2名の大学生はスマートフォン使用時間を減らすことができ、スマートフォン使用時間が減少した参加者は睡眠の質を改善することができた。また、そのうち1名は入床時刻が早まっていた。結論 目標設定とグラフ・フィードバックは、スマートフォン使用時間を減少させる手法である可能性やスマートフォン使用時間の減少に伴い代替行動が形成されることによって睡眠の質を向上させる可能性が示唆された。また本研究によりオンラインを通じた生活習慣に関する行動変容の可能性を示すことができた。

テクニカルノート
  • 平澤 紀子, 笹竹 佑太, 松下 光次郎
    2024 年 38 巻 2 号 p. 120-130
    発行日: 2024/03/05
    公開日: 2025/03/05
    ジャーナル フリー

    発達障害児が示す行動問題に対して、機能的アセスメントに基づく支援の有効性が蓄積されるに伴い、その研究知見を学校で実践するための研究が進められている。しかし、行動分析学の専門家ではない教師が機能的アセスメントに基づく行動支援計画を作成するためには、三項随伴性の情報と対応した行動支援計画の作成や実行評価による妥当化が課題となる。そこで本研究は、教師が行動支援計画を作成するために、対象児の行動情報をデジタル化し、教師の行動支援計画作成スキルをアシストするシステムを開発することを目的とした。アシストシステムはMicrosoft社製の表計算ソフトExcel2016を用いて作成し、教師が各自のデバイスで使用できる。対象児の行動情報を入力すると、場面毎に三項随伴性が表示され、その三項随伴性から行動問題の機能を選択すると、機能に基づく支援例が表示される。教師は表示された支援例を手がかりとして対象児に応じた行動支援計画を作成する。さらに、記録を入力するとグラフ化され、支援効果を検討できる。データは蓄積され、共有と引継ぎが可能である。特別支援教育コーディネーターと通常学級担任10ペアに対する対象児10名の行動支援計画の作成研修における試用評価から有効性と課題について考察した。

  • 大森 貴秀, 熊 仁美, 山本 淳一
    2024 年 38 巻 2 号 p. 131-140
    発行日: 2024/03/05
    公開日: 2025/03/05
    ジャーナル フリー

    応用行動分析学の知見は発達支援等の実践の場で広く用いられるようになってきたが、介入の技法としての利用が主であり、研究報告で見られるような介入効果の可視化や数量化が用いられることは少ない。そのことは、介入実践で得られた知見の基礎研究への活用も妨げている。その主な原因は、行動データを入力しグラフを作成し効果を定量化するなどの作業が、現場の支援者にとって労力的にも知識的にも敷居が高いことにある。本稿では、この敷居を下げることを目的に開発されたアプリケーションであるAI-PAC LAB.の概要を紹介し、そこで用いられる効果量指標の特性を概観することを目的とした。AI-PAC LAB.では、支援者が現場からWeb上でこのシステムにアクセスし、支援中に測定した従属変数の値を簡便な方法で入力すると、グラフと効果量指標が即時に表示される。それにより支援の現状が継続的にモニタリングされ、ベースラインから介入への移行、介入の終結、介入方法の修正といった現場の判断に活用できる。さらに、同一のアプリケーションを通すことで様々な介入の成果が同一の書式で蓄積され、研究への活用が容易となる。本稿では、仮想事例を用いて様々な介入結果を入力することで、そこで示される効果量指標がどのような変化を示すかを調べ、その特性と有効な利用方法を検討した。

ガイドライン
  • 一般社団法人日本行動分析学会 強度行動障害に関する支援ガイドライン作成委員会, 井上 雅彦, 大久保 賢一, 岡村 章司, 岡本 邦広, 倉 ...
    2024 年 38 巻 2 号 p. 141-147
    発行日: 2024/03/05
    公開日: 2025/03/05
    ジャーナル フリー

    目的 本ガイドラインは、強度行動障害に関する行動分析学に基づく支援を実施する上での基本的なルールを定め、支援者が適切な臨床活動を行うための指針となることを目的としている。概要 強度行動障害のある人への支援は、個人のQOLが向上することを目標に問題行動を最小化するよう個人の生活環境を再構築し、個人の行動レパートリーを拡大することが期待される。一方でこのような人たちは暴力や脅迫、身体拘束の乱用に晒されるリスクが高く、支援者は常にそのリスクについて予防することが重要である。加えて、適切な支援を行うために機能的アセスメントを実施し、強度行動障害が起こりにくい環境設定を行い、その人の望ましい行動レパートリーを拡大するような個別の行動支援計画を立案する必要がある。支援に際しては、標的行動の記録や評価、支援計画の修正を行うことで効果的な支援に取り組むことが重要である。強度行動障害の支援では家族支援を実施し、支援者の孤立を防ぎ、家族や支援者同士が自分の意見を自由に表明でき、尊重される支援体制を醸成することが求められる。

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