認知行動療法研究
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特集:ダイバーシティ
展望
  • 石丸 径一郎, 此下 千晶, 宮山 未来乃, 森田 真梨子
    2024 年 50 巻 3 号 p. 137-145
    発行日: 2024/09/30
    公開日: 2025/01/25
    [早期公開] 公開日: 2024/11/25
    ジャーナル フリー

    北米の認知行動療法学会が過去に同性愛者を異性愛者に変えようとした試みを謝罪したことからわかるように、現代の認知行動療法にはジェンダー・セクシュアリティに敏感であることが求められている。本論文では、女性やLGBTに対する認知行動療法の研究をまとめた。女性向けの認知行動療法では、女性特有の問題に焦点を当て、ジェンダーニュートラルなアプローチやアルコール、乳がんのテーマが取り入れられている。トランスジェンダーやノンバイナリーの人々には、トランスフォビアやミスジェンダリングなどのストレスに焦点を当てた認知行動療法が提供されている。同(両)性愛者に対する療法では、セラピスト側の偏見や信念を認識することが大切とされた。日本社会でもジェンダーやセクシュアリティに関する取り組みが増えつつあり、認知行動療法がその分野で有効な支援を提供できる可能性がある。

原著
  • 村上 元, 大島 郁葉, 森元 隆文, 池田 望
    2024 年 50 巻 3 号 p. 147-155
    発行日: 2024/09/30
    公開日: 2025/01/25
    [早期公開] 公開日: 2024/11/13
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は、成人期の自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorders: ASD)者の被害妄想的観念に対する影響要因を検討することである。本調査には、ASD者50名と一般集団51名が参加し、被害妄想的観念に影響を与える要因として、心配、ネガティブなスキーマ、解離、回避行動、いじめ被害経験を想定した。その結果、仮説どおり、ASD者は一般集団よりも被害妄想的観念を有していた。さらに、ASD者と一般集団の被害妄想的観念に影響を与える要因は異なり、また、ASD者の被害妄想的観念の頻度には解離と他者へのネガティブなスキーマが、確信度には解離が、苦痛度には解離と心配が影響を与えていた。本研究の結果から、ASD者の被害妄想的観念に介入をする場合、一般集団と異なり、解離などの異常体験への介入がより効果的である可能性が示された。

  • 首藤 祐介, 山本 竜也
    2024 年 50 巻 3 号 p. 157-168
    発行日: 2024/09/30
    公開日: 2025/01/25
    [早期公開] 公開日: 2024/11/19
    ジャーナル フリー

    行動活性化療法はポジティブ心理学的介入と共通点があり、健康な人のさらなるwell-being向上に役立つ可能性がある。本研究は単純活性化を中心としたオンライン行動活性化プログラムが心理的well-beingに与える効果をランダム化比較試験により検討し、臨床的意義のある変化を確認することを目的とした。参加者は大学生36名で、プログラム実施群(18名)と非実施群(18名)に割り付けた。その結果、プログラム実施前の実施群におけるPsychological Well-Being Scale短縮版合計は85.56だったが、実施後99.56、4週間のフォローアップ後95.17であった。実施群の38.9%で臨床的意義のある変化が認められ、27.8%ではフォローアップまで変化を維持していた。この結果から、行動活性化療法は、心理的well-beingのメカニズム解明のみならず、心理的健康増進手続きの発展に寄与する可能性があるといえる。

資料
  • 中村 有里, 宮崎 哲治, 岩永 誠
    2024 年 50 巻 3 号 p. 169-179
    発行日: 2024/09/30
    公開日: 2025/01/25
    [早期公開] 公開日: 2024/11/15
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は、心の中の行為尺度を作成し、その信頼性と妥当性を検討することであった。予備的検討では、強迫症患者11名を対象とした面接を行い、心の中の行為を測定する項目を抽出した。本調査では、大学生640名を対象として、心の中の行為尺度の信頼性と妥当性の検討を行った。基準関連妥当性を検討するため、汚染に関する強迫観念項目、洗浄強迫行為項目、Obsessive–Compulsive Inventory(OCI)日本語版を用いた。因子分析の結果、心の中の行為尺度は5因子が抽出され、その内的整合性も高く、信頼性が確認された。また、これら5因子の内容は先行研究の報告と類似したことから構成概念妥当性が確認され、OCI日本語版を用いた基準関連妥当性も確認された。本尺度は、オバート強迫行為の評価と併せて用いることにより、オバート強迫行為として顕在化しない強迫症状の理解に寄与するものと期待できる。

  • 松本 菜々子, 梅田 亜友美, 大月 友, 石津 憲一郎
    2024 年 50 巻 3 号 p. 181-192
    発行日: 2024/09/30
    公開日: 2025/01/25
    [早期公開] 公開日: 2024/11/14
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は、Self-Compassion Scale for Youth日本語版を作成し、その信頼性と妥当性を検討することであった。中学生903名を対象とした調査において因子構造、内的整合性、構成概念妥当性を検討し、中学生146名を対象とした調査において再検査信頼性を検討した。その結果、Self-Compassion Scale for Youth日本語版は17項目4因子構造が示され、概ね十分な妥当性を有することが確認された。信頼性においては改善の余地があり、今後の検討課題であると考えられる。

実践研究
  • 金山 裕望, 佐藤 美幸, 佐藤 寛
    2024 年 50 巻 3 号 p. 193-203
    発行日: 2024/09/30
    公開日: 2025/01/25
    [早期公開] 公開日: 2024/11/13
    ジャーナル フリー

    近年、情報通信技術を活用した遠隔心理支援が注目されているが、発達障害児や父子家庭を対象とした報告事例は少ない。そこで本研究は遠隔親子相互交流療法(Internet-delivered parent-child interaction therapy: I-PCIT)を父子家庭親子に適用した事例を報告し、その効果と有用性を考察した。対象は父子家庭の30代の父親と5歳の自閉スペクトラム症児であった。主訴として、A児の破壊的行動への困り感が挙げられた。ビデオ会議システムを使用したI-PCITをX年10月−X+1年5月までの約8か月間、週1回程度の頻度で実施した結果、父親の養育スキルが向上し、子どもの破壊的行動の減少および父親の育児ストレスの低下が示された。また父親の言語報告においてI-PCITの有用性が報告された。

  • 米田 健一郎, 三田村 仰, 杉浦 義典
    2024 年 50 巻 3 号 p. 205-215
    発行日: 2024/09/30
    公開日: 2025/01/25
    [早期公開] 公開日: 2024/11/22
    ジャーナル フリー

    本研究では、情報端末の使用と模擬嘔吐を含む嘔吐恐怖症に対する段階的エクスポージャープログラムをパニック症が併存した嘔吐恐怖症の30代女性に適用し奏功した一症例を報告する。本症例では、自身や他者の嘔吐に対する強い恐怖を訴えるクライエントへ1回原則50分、計11回(約10カ月間)のセッションが実施された。段階的エクスポージャープログラムでは、心理教育、PCを用いた嘔吐関連画像、動画、音へのエクスポージャー、内受容感覚エクスポージャーを含む模擬嘔吐を実施した。嘔吐恐怖評価尺度の平均点が63.3点から33.6点に低減するなど、嘔吐恐怖症の症状が改善した。本症例は情報端末の使用と模擬嘔吐を含む段階的エクスポージャープログラムの有効性を示唆している。併存していたパニック症に関しては、パニック症の心理教育の後、嘔吐恐怖症への介入と並行してセッション外でエクスポージャーが行われ、症状の改善が示唆された。

コロキウム報告
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