高次脳機能障害によって移乗動作が障害された事例への行動療法の効果を検討するためメタ分析を行った。オンラインデータベースを用いた検索を行い、シングルケース実験デザインの7研究が抽出された。対象者は30代から90代で、男性2名、女性5名、診断名は脳梗塞が多かった。介入技法としては課題分析やプロンプト・フェイディング等が用いられていた。各研究についてTau-UとHedgesのgの二つの効果量を算出し、結果を統合した。Tau-Uが0.27から1.00で中央値0.82、Hedgesのgが0.61から7.11で中央値が2.37だった。二つの効果量から行動療法の有効性が示されたが、対象研究には研究の質が低いものが含まれており、また異質性もみられた。さらに出版バイアスの影響も懸念された。確実性の高い結果を得るためにリハビリテーション領域における行動療法の実践の積み重ねが必要である。
本稿では、ケミカルコーピングが疑われた血液がん患者に対して認知行動療法を行った事例を報告した。本事例はレスキュー薬の使用に先行して不安が生起しており、疼痛を緩和するためだけではなく、不安を軽減するためにもレスキュー薬を使用していると考えられた。そのため、臨床心理士が面接の中で入院生活の不安について話す行動を強化する介入を行うことで、不安が軽減され、ケミカルコーピングが消失したと思われた。本事例は介入を開始したタイミングに先行して化学療法が導入されたため、認知行動療法の効果のみでケミカルコーピングが消失したと説明するには限界がある。しかしながら、ケミカルコーピングのような新しい概念であっても、ケース・フォーミュレーションを行い、患者がもともと持ち合わせているスキルに注目し強化するという形で認知行動療法を適応することが可能であると示唆された。
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