認知行動療法研究
Online ISSN : 2433-9040
Print ISSN : 2433-9075
最新号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
巻頭言
宣言
  • 清水 栄司, 中川 彰子, 嶋田 洋徳, 戸ヶ﨑 泰子
    2024 年 50 巻 2 号 p. 45-47
    発行日: 2024/05/31
    公開日: 2024/11/10
    ジャーナル フリー

    日本認知・行動療法学会は、2021年10月10日開催の第47回大会において、ダイバーシティ&インクルージョン推進千葉宣言を、当時の理事長、ダイバーシティ推進委員会委員長、大会会長の名義で発出した。性別、世代、国籍、身体的・精神的個性(疾患・障害)、性的指向、職種やキャリアなどの多様性を尊重し、具体的には、多様な人材の役員・委員会委員等への登用、全ての会員の学会参加・交流の機会提供の促進など、全ての会員がそれぞれの個性と能力を発揮しながら学会活動に参加・活躍できる学会運営を目指す。また、日本認知・行動療法学会の社会的責任を果たすために、心理的支援を必要とする方やその関係者等への心理的支援や情報の提供にあたっては、ダイバーシティの精神に則った共感的態度による分かりやすい説明と、エビデンスに基づいた最善の心理的支援の提供に努めるとともに、心理的支援に関する理解啓発活動を推進する。

  • 戸ヶ﨑 泰子, 熊野 宏昭
    2024 年 50 巻 2 号 p. 49-53
    発行日: 2024/05/31
    公開日: 2024/11/10
    ジャーナル フリー

    日本認知・行動療法学会ダイバーシティ&インクルージョン宮崎行動宣言が、第48回大会において、理事長、ダイバーシティ推進委員会委員長、大会会長により宣言された。同時に、アクションプランと実行計画も発表された。この行動宣言では、性別、世代、国籍、身体的・精神的個性(疾患・障害)、性的指向、職種やキャリアなどの多様性を尊重し、「認め合う」「活かす」「育てる」という3つの観点に基づいて行動することを宣言している。また、行動宣言に則った活動に取り組み、その達成状況をモニタリングし、5年ごとに行動宣言を見直すことも明言している。今後はアクションプランと実行計画に基づいて、本学会会員が安心して学会活動に参加・活躍できる学会運営に取り組むとともに、心理支援を必要とする方々の多様性を尊重して、エビデンスに基づいた認知行動療法の提供と啓発活動などに取り組み、その達成状況を確認していくことが求められる。

展望
  • 大井 瞳, 大島 郁葉, 稲田 尚子, 熊谷 晋一郎
    2024 年 50 巻 2 号 p. 55-65
    発行日: 2024/05/31
    公開日: 2024/11/10
    [早期公開] 公開日: 2024/06/25
    ジャーナル フリー

    ダイバーシティの推進が叫ばれるなか、取り組みが不十分であるのが現状である。ダイバーシティ推進のために障壁となりうるものがスティグマやステレオタイプである。本稿では、ダイバーシティ推進のために、認知行動療法論的アプローチがどのように寄与できるかについて述べる。具体的には、ダイバーシティの視点を取り入れた認知行動療法、認知行動療法を通したスティグマへのアプローチ、接触仮説に基づくスティグマ低減、について自閉スペクトラム症の研究報告を通じて展望する。これらを踏まえ、社会モデルインフォームドな認知行動療法のためにアカデミアおよび支援者が社会の認知・行動変容に向けて取り組む必要性についても論じた。

  • 池田 浩之, 千田 若菜, 戸ヶ﨑 泰子
    2024 年 50 巻 2 号 p. 67-76
    発行日: 2024/05/31
    公開日: 2024/11/10
    [早期公開] 公開日: 2024/05/20
    ジャーナル フリー

    本稿では、思春期以降の知的障害や精神障害のある者を対象としたキャリア教育、移行支援、職場定着支援の現状を整理し、認知行動理論や諸技法がどのように活用されているかについて論じた。そして、この分野で認知行動療法が貢献・発展していくためには、どのような課題があり、どのような視点からの実践や研究が必要かを展望した。その結果、職業的自立を目的とした教育課程における介入や移行期における合理的配慮申請に必要な具体的なアセスメントにおいて認知行動理論や諸技法が寄与することが明らかにされた。また、職場定着支援において、職場環境内における随伴性マネジメントやセルフモニタリングが有用であることが示された。最後に、今後の展望として、キャリア教育や就労支援における認知行動療法的介入をより発展させてエビデンスを蓄積すること、神経発達の多様性に対応した認知行動療法的介入の検討・開発を行っていく必要性が述べられた。

原著
  • 二瓶 穂香, 小口 真奈, 富田 望, 熊野 宏昭
    2024 年 50 巻 2 号 p. 77-88
    発行日: 2024/05/31
    公開日: 2024/11/10
    [早期公開] 公開日: 2024/05/24
    ジャーナル フリー

    規定の音楽を用いて「音楽」「身体」「考え・感情・気分」の3カ所に注意を向ける知覚練習を繰り返す調整的音楽療法(Regulative Music Therapy)は、大学生を対象とした実践研究や学生相談室での事例研究は多く行われているものの、その奏功プロセスの詳細は明らかではない。本研究では、大学生25名を対象に、Regulative Music Therapyと共通性が見られるマインドフルネスに基づき、Regulative Music Therapyの実践によるプロセス変数の変化およびそのプロセス変数を経て得られる抑うつ・不安への影響を検討した。3週間のRegulative Music Therapyの介入を実施し、同様の効果が示されると考えられる他の心理療法で用いられているプロセス変数に関する質問紙と行動指標を介入前後で測定した。その結果、行動指標については効果がみられなかったものの、直接介入対象とする注意制御や気づきに介入効果があり、認知行動プロセスのひとつであるネガティブな反すうのコントロール不可能性の改善を介して、不安の改善に効果が及ぶことが示唆された。

  • 五十嵐 里奈, 野村 和孝, 市倉 加奈子, 村瀬 華子
    2024 年 50 巻 2 号 p. 89-100
    発行日: 2024/05/31
    公開日: 2024/11/10
    [早期公開] 公開日: 2024/05/23
    ジャーナル フリー

    本研究は、ドメスティック・バイオレンス(DV)およびIntimate Partner Violence(IPV)の加害者の攻撃行動の低減に対するアクセプタンス&コミットメント・セラピーの有効性を検討することを目的として、従来実施されてきた心理学的介入プログラムとの比較を行っている研究を対象に、メタアナリシスを用いて検討を行った。論文検索にはPsycINFO、PubMed、Web of Scienceを使用し(2023年3月時点)、抽出された35件を対象に適格基準の検討を行った結果、4報の論文が対象となった。メタアナリシスの結果、アクセプタンス&コミットメント・セラピーは、従来型のプログラムと比較して、DVおよびIPVの加害者の再発数を減少させる可能性が示唆された。今後は脱落率を減少させることが課題であり、また質の高い研究を実施し、効果の有無に関わらず研究成果を数多く報告していくことが期待される。

資料
  • 舩津 萌実, 嶋 大樹, 武藤 崇
    2024 年 50 巻 2 号 p. 101-109
    発行日: 2024/05/31
    公開日: 2024/11/10
    [早期公開] 公開日: 2024/05/27
    ジャーナル フリー

    本研究では、月経前症候群(PMS)の社会的症状の有無と心理的柔軟性との関連を検討した。参加者は20歳から39歳の女性で、PMSが疑われる者をスクリーニングするための尺度と心理的柔軟性に関する4つの尺度に回答した。回答から、PMSの社会的症状がある支障あり群、症状がありながらも社会的症状はみられない支障なし群、症状がみられない対照群を抽出した。PMSの身体・心理的症状の交絡を排除するため、支障あり群と支障なし群の心理的柔軟性の得点差について共分散分析を実施した。また、支障なし群と対照群の得点差についてt検定を実施した。その結果、アクセプタンス&コミットメント・セラピーのコアプロセスのうち、脱フュージョンがPMSの社会的症状に対する介入として効果をもつ可能性が示唆された。

実践研究
  • 佐藤 亮太朗, 藤井 七瀬, 熊谷 恵子
    2024 年 50 巻 2 号 p. 111-122
    発行日: 2024/05/31
    公開日: 2024/11/10
    [早期公開] 公開日: 2024/05/10
    ジャーナル フリー

    本研究では、学校欠席リスク・スクリーニングテスト(STeRA)をアセスメントの一部に活用して登校しぶり児への支援を実施した。アセスメントの結果、対象児の登校しぶりは学校におけるコミュニケーション場面やまぶしさ、家を出る際の不定愁訴に対する母親の対応により維持していると推測された。そこでコミュニケーションスキルの獲得と、対象児が家を出る際の不定愁訴と登校行動の分化強化、カラーレンズの装用を試みた。コミュニケーションスキルへの介入で学校活動への参加が増加し、欠席や遅刻、早退日数が減少した。その後、登校行動の分化強化を試みたところ、欠席や早退がなくなった。カラーレンズの装用後、より多くの学校活動へ参加できるようになったが、遅刻を完全になくすことはできなかった。本研究では、STeRAの実践的利便性を示唆したが、課題として標的行動が強化されない場合の対処スキルの獲得も加味した支援の必要性を挙げた。

feedback
Top