規定の音楽を用いて「音楽」「身体」「考え・感情・気分」の3カ所に注意を向ける知覚練習を繰り返す調整的音楽療法(Regulative Music Therapy)は、大学生を対象とした実践研究や学生相談室での事例研究は多く行われているものの、その奏功プロセスの詳細は明らかではない。本研究では、大学生25名を対象に、Regulative Music Therapyと共通性が見られるマインドフルネスに基づき、Regulative Music Therapyの実践によるプロセス変数の変化およびそのプロセス変数を経て得られる抑うつ・不安への影響を検討した。3週間のRegulative Music Therapyの介入を実施し、同様の効果が示されると考えられる他の心理療法で用いられているプロセス変数に関する質問紙と行動指標を介入前後で測定した。その結果、行動指標については効果がみられなかったものの、直接介入対象とする注意制御や気づきに介入効果があり、認知行動プロセスのひとつであるネガティブな反すうのコントロール不可能性の改善を介して、不安の改善に効果が及ぶことが示唆された。
本研究は、ドメスティック・バイオレンス(DV)およびIntimate Partner Violence(IPV)の加害者の攻撃行動の低減に対するアクセプタンス&コミットメント・セラピーの有効性を検討することを目的として、従来実施されてきた心理学的介入プログラムとの比較を行っている研究を対象に、メタアナリシスを用いて検討を行った。論文検索にはPsycINFO、PubMed、Web of Scienceを使用し(2023年3月時点)、抽出された35件を対象に適格基準の検討を行った結果、4報の論文が対象となった。メタアナリシスの結果、アクセプタンス&コミットメント・セラピーは、従来型のプログラムと比較して、DVおよびIPVの加害者の再発数を減少させる可能性が示唆された。今後は脱落率を減少させることが課題であり、また質の高い研究を実施し、効果の有無に関わらず研究成果を数多く報告していくことが期待される。