生物教育
Online ISSN : 2434-1916
Print ISSN : 0287-119X
38 巻, 2 号
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研究論文
  • ―高校生物教育における自然環境調査の教材として―
    橋本 健一
    1998 年 38 巻 2 号 p. 50-57
    発行日: 1998年
    公開日: 2022/04/16
    ジャーナル フリー

    本研究は,田中(1988)により提案された,ある地区の蝶類群集の環境階級存在比(ER:existence ratio of environmental stage)を求めることにより,その地区の自然環境評価を行う方法(ER法)が高等学校総合理科や生物IIでの課題研究「自然環境についての調査」の教材として有効であるかを,検討するために行われた.

    自然環境評価を行うための調査は,都市的環境にある東京都渋谷区笹塚(以下笹塚と略記),都市郊外の住宅地に位置する同小金井市東京学芸大学構内(以下小金井と略記),自然環境が比較的残されている同八王子市長沼(以下長沼と略記)の3地区を選び,1994年および1995年の春から夏にかけて,各地区で2回または3回実施された.1回の調査に要した時間は30~65分であった.その結果から,笹塚と小金井はERに基づいた自然環境の類別(田中 1988)の農村段階に相当し,長沼は原始段階に相当すると評価された.この評価は小金井と長沼については,それぞれの地区の景観から受ける印象にほぼ対応していた.

    本研究により,ER法は授業時間内での実施が可能であり,調査回数をそれほど多くしなくても,該当地域の自然環境を評価できる方法であることが明らかとなった.さらに,ER法の利点として,昆虫の中では分類が比較的容易な蝶類を指標としていること,調査路が比較的自由に設定できることなどがあげられるので,高校生物教育への導入が可能であると考えられる.

  • 中山 生欧, 前川 洋
    1998 年 38 巻 2 号 p. 58-62
    発行日: 1998年
    公開日: 2022/04/16
    ジャーナル フリー

    ハードコンタクトレンズ用洗浄保存液を界面活性剤として用いて,高等学校の生徒が50分の授業の中で動物・植物両方の組織からDNAを抽出する簡易な方法を検討した.

    1.SDSなどの界面活性剤の代わりにハードコンタクトレンズ用洗浄保存液(メニコンO2ケア,主成分:陰イオン系界面活性剤・非イオン系界面活性剤)を用いて,マダラ(Gadus macrocephalus Tilesius)の精巣及びブロッコリー(Brassica oleracea L. var. italica Plenck.)のつぼみから粗DNAを抽出することができた.

    2.マダラの精巣及びプロッコリーのつぼみから抽出された粗DNAをシッフの試薬につけたところ,赤紫色に染まったので,抽出された粗DNAにDNAが含まれていることがわかった.

    3.教育現場で容易に調製できない緩衝液や遠心機の使用を省く簡易な抽出方法を用いて,粗DNAを抽出することができた.

    4.植物組織の凍結・粉砕方法においては,液体窒素の代わりに,手に入りやすいドライアイスを用いた.植物材料をチャック付きポリ袋に入れドライアイスで冷凍し,袋ごとハンマーでたたき組織を粉砕した.この粉砕方法でも粗DNAを抽出できることがわかった.

    5.生徒自らが,動物組織と植物組織から同じ方法で並行してDNA抽出を行うことができ,しかもそれが50分授業内に収まることがわかった.

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