生物教育
Online ISSN : 2434-1916
Print ISSN : 0287-119X
51 巻, 1-2 号
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研究論文
  • 大鹿 聖公, 水上 典美, 木村 直人
    2010 年 51 巻 1-2 号 p. 1-8
    発行日: 2010年
    公開日: 2019/09/28
    ジャーナル フリー

    中学校理科第2分野「自然と人間」における食物連鎖の教材として,フクロウが未消化物を胃の中で固めて口から吐き出すペリットを用いた授業実践を行った.実践の結果,生徒は実際の動物の未消化物から動物の骨格を取り出すという活動を行うことによって,食物連鎖を,イメージや概念としてではなく,実際の体験として学習・理解することが出来るようになった.また,この体験を通して,生徒は食物連鎖の学習だけでなく,フクロウの形態や食性,生態についても学習し,授業前後においてそれらの変容がみられることが分かった.しかしながら,授業によって,フクロウが″糞″をしないと考える生徒の割合が増加するなど,いくつか課題もみられることがわかった.今後,それらを改善することでよりよいこの分野における実験観察教材として利用が可能である.

  • ―トマトの例―
    由比 進, 片岡 園, 本城 正憲
    2010 年 51 巻 1-2 号 p. 9-20
    発行日: 2010年
    公開日: 2019/09/28
    ジャーナル フリー

    トマトは世界各地で生産消費されている重要な栽培植物であり,自殖性で交雑操作も容易であることから,遺伝や品種改良の教材に適すると考えられる.そこで本報告では,トマトを含む9種類の栽培植物を取り上げ,生殖様式(自殖性か他殖性か),不和合性など,合計9特性に着目して,遺伝や品種改良の教材に用いる場合の適性を比較検討したところ,トマトは教材としての適性が非常に高いと判断された.次に,果実の大きさや色の異なるトマト品種を実際に栽培し,これらの間で交雑を行って雑種植物を育て,後代の遺伝分離を観察する実験を行った.その結果,F2世代において果肉色(黄色と赤色)や果皮色(無色と榿色)などに,一見してわかる質的な遺伝分離が観察され,メンデル遺伝の具体例を示すことができた.同時に,果実の大きさや形においては連続変異を示す量的な遺伝が観察された.以上のように,トマトは栽培しやすい身近な植物である上,交雑が容易で,識別しやすいメンデル遺伝形質を持つことなどから,遺伝や品種改良を学習するための優れた教材であることが明らかになった.

研究資料
  • 高橋 哲也, 中山 広之, 下田 祥子, 岩澤 淳, 水谷内 香里, 村田 晶子, 兵藤 博行, 村田 公一
    2010 年 51 巻 1-2 号 p. 21-29
    発行日: 2010年
    公開日: 2019/09/28
    ジャーナル フリー

    ホルモンの作用を観察する実験として,卵管の卵殻腺部に卵を持ったニワトリに脳下垂体後葉の抽出液を静脈内投与して産卵を誘起する実験の方法を検討した.屠殺直後のニワトリから脳下垂体後葉抽出液を得てニワトリに投与すると,投与量に依存して産卵が誘起された.ニワトリ1羽に対して脳下垂体後葉の1個分もしくはその1/8量の抽出液を投与すると投与後およそ3分ですべてのニワトリにおいて産卵が誘起された.産卵鶏を断頭屠殺して頭部を4℃での冷蔵庫内で保存し,脳下垂体後葉に含まれるバソトシンの量をラジオイムノアッセイで測定したところ,保存1日目でバソトシン量は屠殺直後の約半分の量に減少したが,その後保存4日目まではバソトシン量の減少は認められなかった.また鶏肉店で購入した冷凍のニワトリ頭部の脳下垂体後葉に含まれるバソトシン量は屠殺直後のニワトリに比べおよそ1/100であり,アフリカツメガエルではおよそ1/50であった.缶詰めのニワトリ頭部ではほとんどバソトシンは含まれていなかった.冷凍のニワトリ頭部では8個分の脳下垂体後葉抽出液で,またアフリカツメガエルでは3個分の脳下垂体抽出液でほぼすべてのニワトリにおいて産卵を誘起することができることが明らかとなった.以上のことから,本研究における産卵鶏を用いた産卵誘起実験は実際の教育現場で十分利用可能であることが示唆される.

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