生物教育
Online ISSN : 2434-1916
Print ISSN : 0287-119X
54 巻, 3-4 号
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研究論文
  • ―器官の解剖切開面からの距離,重量および見た経験との関係の解析―
    高橋 哲也, 渡辺 雄貴, 田中 ゆりこ, 岩澤 淳, 水谷内 香里, 廣渡 洋史, 池田 雅志, 大島 和幸, 村田 晶子, 村田 公一
    2014 年 54 巻 3-4 号 p. 120-129
    発行日: 2014年
    公開日: 2019/09/28
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    本研究は,解剖において対象とする器官を見つけて観察できた学生の割合(発見率)が,切開面から器官までの距離(器官の深さ),器官の重量および解剖前にそれぞれの器官を見たことがあった経験と関係するかとうかを明らかにするために行なった.医療系の短期大学と専門学校で実施したニワトリの解剖において,器官の発見率は,器官の深さとの間に直線的な相関関係は認められなかった(P>0.05)が,器官の重量との間には直線的な相関関係が認められた(P<0.05).この相関関係は,器官の重量が約6gまでの範囲に限定すると高くなった(P<0.01).それよりも,器官の発見率と解剖実習の前に器官を見たことがあった者の割合との間の直線的相関はさらに高かった(P<0.001).また,解剖実習の前に器官を見たことがあった者の割合が50%のときの器官の発見率は,「静止画」で見たことがある者よりも,「動画」で見たことがある者の方が低く,さらに「実物」で見たことがある者の方が低かった.これらのことから,ニワトリの解剖観察においてできるだけ多くの器官を観察できるようにするためには,「実物」,「動画」および「静止画」の順に見たことがない器官を注意し,約6g以下の器官ではより重量の小さい器官を注意して解剖を行なうよう指導すると効果が期待できるものと思われる.

  • -フクロウのペリット分析と骨格図作成-
    千賀 しほ, 大鹿 聖公
    2014 年 54 巻 3-4 号 p. 130-139
    発行日: 2014年
    公開日: 2019/09/28
    ジャーナル フリー

    ペリットとは,食肉性の鳥類がのみ込んだ食物の中の未消化物を固まりにして吐き出したもので,一般に猛禽類の食性を調べる方法として用いられている.日本においても,先行研究でアメリカから輸入されたフクロウのペリット教材を使った授業実践が行われ,教材としての有効性が示されている.しかし,日本ではアメリカ産のフクロウが身近ではなく,また1個のペリットから採取できる動物が統一できないなどといった教材としての課題かおる.現行の学習指導要領では,生徒の実感を伴った理解を図るために,地域資源や社会教育施設の活用が強調されるようになった.そこで本研究では,フクロウを飼育している動物園に着目し,地域の素材を生かした身近で体験的な教材の開発を目的として,動物園のペリットを活用した教材開発を行った.

    ペリットの教材としての価値を探るため,国内の動物園から入手できるペリットを解剖し,エサと採取できる骨との関係を比較検討した.その結果,食べているものによってペリットの色が違い,それぞれに利点や欠点があることが明らかとなった.しかし,採取できる骨に差はあるものの,ペリットを解剖することで捕食された小動物の骨格や毛などを取り出すことができるため,ペリットの解剖作業を通して,フクロウが動物を食べているという体験を伴った理解が容易になると考えられる.このようなペリットの利点を生かし,フクロウのエサ及びペリットの解剖結果をもとに,マウスとヒヨコのペリット教材用の骨格図を開発した.開発した教材は,中学校理科第2学年「動物の生活と生物の変遷」や第3学年「自然と人間」の単元で活用できるとともに,動物園での教育活動としても活用できると考えられる.

研究資料
  • 藤本 順子, 紅露 瑞代, 米澤 義彦
    2014 年 54 巻 3-4 号 p. 140-147
    発行日: 2014年
    公開日: 2019/09/28
    ジャーナル フリー

    中学校理科第2分野における「花粉の発芽と花粉管の伸長」に関する実験材料,発芽用基材および培地組成について再検討を行った.実験材料としては,従来から使用されているホウセンカやインパチェンスげフリカホウセンカ)に加えて,①花粉が置床後10分以内に発芽すること,②花期が長いこと,③花粉粒内で雄原細胞の分裂が行われており,減数分裂によって染色体数が半減したことが確認できること,などの理由から,ヒガンバナ科のミドリアマナも有効であることがわかった.また,発芽用基材としては,教科書等に記載されている「寒天培地」よりも,市販の「普通セロハン」(吸水性のセロハン)にスクロース液をしみこませた「スクロース―セロハン培地」が簡便で有効であることがわかった.さらに, 10%スクロース液に100 ppmのホウ酸と300 ppmの硝酸カルシウムを加えると,花粉粒の破裂を防ぐことができることができ,観察できる確率が高くなることが示された.

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