生物教育
Print ISSN : 0287-119X
57 巻 , 1 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
研究論文
  • 日髙 翼, 丹沢 哲郎
    2016 年 57 巻 1 号 p. 2-12
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/10/29
    ジャーナル フリー

    本研究では19世紀アメリカのハイスクール教科「生理学」の学習内容の変遷を歴史的に吟味した.当時用いられていた教科書や各種史料を用いて研究を行った結果,教科としての「生理学」は学習内容やねらい,アプローチ等の特徴によって3つの時代に区分できた.19世紀を通して,「生理学」教科書で扱われる対象が動物界全体からヒトのみへ,実験主義思想の芽生え,実生活との関連の扱いの変化,タバコやアルコールの害に関する扱いの変化,宗教的・道徳的側面の衰退等が確認された.また,これらの変化は,人々の劣悪な生活環境,temperance思想の大衆化,教育行政の影響等の要因によって解釈された.今後の課題として,19世紀末から20世紀初頭に生物学関連の各種教科が生物学へと収斂する過程を明らかにすることの必要性があげられた.

  • 重野 奈津妃, 神山 貴達, 谷 友和, 小川 茂
    2016 年 57 巻 1 号 p. 13-19
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/10/29
    ジャーナル フリー

    花粉は被子植物の生殖において重要な役割を果たす.柱頭上で発芽した花粉は,花柱内に花粉管を伸ばす.花粉管を通じて二つの精細胞が胚嚢の助細胞に届けられ,重複受精が行われる.雄性配偶子である精細胞とその元となる雄原細胞は,無色透明であることが多く,通常は何らかの染色液を用いなければ,花粉管内でそれらの存在と動きを観察することはできない.ところが,ユリ科,ヒガンバナ科,およびアヤメ科に属するいくつかの植物では,有色の雄原細胞が見られることが知られている.本研究では,これらの科に属する20種の身近な植物を材料とし,通常の光学顕微鏡を用いた観察によって,雄原細胞の有色性と雄原細胞が花粉管内に出現するまでの時間を調べた.その結果,20種中9種において,雄原細胞が有色であることを確認し,そのうちナツズイセン,ヒガンバナ,キショウブ,ヒメヒオウギズイセンの4種において,雄原細胞の有色性が今回初めて明らかとなった.特に,アヤメ科のキショウブでは,花粉を寒天培地に散布してから1時間以内に,紡錘形で黄褐色をした雄原細胞が花粉管内に出現した.また,花粉管内での雄原細胞の動きを光学顕微鏡を用いて容易に観察可能であった.キショウブが身近な場所で比較的容易に入手可能な種であることも加味すると,本種は,被子植物の重複受精における花粉の役割を理解するための学習教材として優れていると考えられる.高等学校生物の「生殖と発生」の単元における,キショウブの花粉を教材として用いた授業の展開について考察する.

研究報告
  • 荻原 彰, 北川 奈々, 小西 伴尚
    2016 年 57 巻 1 号 p. 20-26
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/10/29
    ジャーナル フリー

    近年,発癌などの紫外線のリスクが注目され,教育現場においても紫外線防御の必要性は認識されるようになってきているが,理科教育においては教材開発や実践はまだ乏しい.そこで本研究では中学校理科における紫外線の性質と防御に関する基礎知識を啓発する理科教材の開発と実践を試みた.教育内容としては①紫外線の実体と性質,②紫外線による障害,③紫外線の適切な防御の3つを設定した.「紫外線の実体と性質の内容」においては,太陽光中の紫外線の存在,紫外線の種別,紫外線の起こす化学変化,太陽高度・日向と日陰・反射面の性質などの条件による紫外線量の違いを扱い,紫外線量測定実験,紫外線の作用を受けた紙の観察等を行なった.「紫外線による障害」では紫外線による皮膚ガンなどの病気,アントシアニンやメラニンなどの色素による紫外線防御,紫外線防御の人種による違いを扱い,色素による紫外線遮蔽の実験等を行なった.「紫外線の適切な防御」では帽子や日焼け止めなどの紫外線防御の必要性,UVインデックスを扱い,帽子・日焼止めによる紫外線低減の実験等を行なった.授業評価は授業前・授業後のコンセプトマップの比較により行なった.概念ラベル,リンク数は授業後は授業前に比べ,有意に上昇し,①紫外線の実体と性質,②紫外線のリスク③生物の紫外線防御④条件による紫外線の違い⑤紫外線防御の方法の5つのカテゴリーすべてにおいても有意に上昇した.Segarasらの開発した複雑性指標も顕著な上昇を示した.以上のことから,本教材を使用することにより紫外線に対する生徒の認識を向上させることができ,本教材は紫外線の性質や防御の啓発に有効な教材であったと考える.

  • 佐藤 寛之, 松森 靖夫, 森田 浩一
    2016 年 57 巻 1 号 p. 27-33
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/10/29
    ジャーナル フリー

    本研究では,小学校教員志望学生を対象に,小学校理科教科書に掲載されている微小生物の体長に関する認識調査を行った.具体的には,メダカの全長及び微小生物(ミジンコ・ゾウリムシ)の相対的な大きさについて問い,微小生物の体長に対する学生の認識状態を分析した.本調査から得られた主な知見は,(1)2種類の微小生物の体長(絶対的な大きさ)に対する学生の認識状態は,微小生物の相対的な大きさに対する認識状態より低くなること,及び(2)微小生物の体長に対する学生のプリコンセプションの存在が明らかになったことである.

    これらの知見を踏まえ,学生が多様な微小生物を顕微鏡で観察する学習活動を通して,微小生物の大きさを比較することによって,微小生物に対するプリコンセプションを変容・再構成するとともに,科学的認識の向上を図る必要がある.

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