生物教育
Print ISSN : 0287-119X
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研究論文
  • 猿舘 みのり, 白井 賢太朗, 秋田 薫, 馬場 健一郎, 渡邉 学, 中西 啓, 由比 進
    2020 年 62 巻 1 号 p. 2-11
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/04/21
    ジャーナル フリー

    トマトは自殖性植物であることから,市販のミニトマトF1品種「オレンジキャロル(サカタのタネ),アイコ(サカタのタネ),ティンカーベル(ナント種苗)」を栽培して収穫した果実から,自家受精(自殖)したF2種子を得た.このF2世代を径10.5 cmの小ポットでそれぞれ104個体,70個体,41個体栽培したところ,葉色および生育,果肉色,果皮色など,複数の形質について簡単に識別できる遺伝的分離が認められた.特に「オレンジキャロルF2」ではメンデルの優性の法則,分離の法則,独立の法則のすべてを観察することができた.このように,市販のミニトマトF1品種を普通に栽培して収穫した果実から種子を得れば,遺伝的分離を観察できるF2種子が交配操作なしで得られる上,多数個体を栽培して分離を観察することも比較的容易であることが明らかになった.この「オレンジキャロルF2」を利用した実験に高校生が取り組み,栽培に成功して遺伝的分離を観察することができた.また,実験後のアンケート結果から,遺伝への興味とメンデルの法則への理解が有意に向上していた.このように,市販のミニトマトF1品種を利用して遺伝法則を体験する方法は交配操作なしで容易に行える長所があり,「オレンジキャロルF2」についての葉色の遺伝的分離だけであれば播種後2~3週の短期間で観察することが可能である.一方で,遺伝観察の基本である両親系統を入手することができないことはこのような手法の問題点であり,限界でもある.

研究報告
  • 小松 裕幸, 伊東 浩司, 坪山 明子, 杉田 昌弥, 新井 美央, 佐々木 岩見, 伴 武彦, 園田 陽一, 湊 秋作
    2020 年 62 巻 1 号 p. 12-22
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/04/21
    ジャーナル フリー

    近年の生物多様性の保全の動向の高まりにより,企業は生物多様性の社員教育を推進することが明確に求められるようになった.企業は都市圏への集中が進んでいる.また,近年都市では企業が緑地を整備する事例が出てきており,生物への配慮など質にも配慮した緑地では,緑地認証を取得する事例が出てきた.こうした緑地は,企業にとって身近な場所に立地し,生物への配慮等が第三者によって評価された場所といえる.緑地認証の取得状況を調査した結果,三大都市圏の6都府県(東京都,埼玉県・千葉県・神奈川県,愛知県,大阪府)ではその取得事例が多く,事例数は増加傾向にあった.これは,これらの都府県はグローバル化に伴い,海外で認証が入居者募集等に利用されていることなどの影響を受けているためと考えられる.東京都心において,企業緑地での動植物の観察,建物の屋上での養蜂体験を試行した結果,いずれも参加者の9割前後が「大変よい」または「よい」と回答したが,観察できる生物が少ない可能性があるなどの課題も明らかになった.都市圏で質の点にも配慮された企業緑地が増加すれば,都市の生物多様性の向上に寄与する可能性があるほか,生物多様性の教育を実施できる場が増加し,企業による生物多様性の教育への活用につながる可能性がある.またこれによって,広く生物多様性の重要性が認識され,生物多様性に配慮した企業緑地が増加するといった,スパイラルアップの効果が期待される.

研究資料
  • 西川 洋史
    2020 年 62 巻 1 号 p. 23-28
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/04/21
    ジャーナル フリー

    研究用高純度グリセロールは透明骨格標本作製時において透明化や保存のために必要である.しかし,学校教育現場では高いコストとなる.本研究ではグリセロールの代わりに家庭用食器洗剤を用いて透明骨格標本の作製を試みた.ミナミメダカ(Oryzais latipes)を10%ホルマリンに入れて室温下一晩の固定を行った後,各濃度の水酸化カリウムを溶解した5種類の食器洗剤に移し,35°Cで2週間インキュベートした.その結果,水酸化カリウムの濃度に応じて透明化が促進され,数種類の洗剤では脊椎骨を明確に観察することができた.次に,ホルマリン固定後にアリザリンレッドSで一晩染色した標本を同様に洗剤に漬けたところ,界面活性剤濃度が高い洗剤において硬骨染色を保った状態での透明化を確認した.食器用洗剤はグリセロールに比べると安価であり,ゆえに学校教育現場での透明骨格標本の活用が促されると思われる.

  • 吉田 英史, 米澤 義彦
    2020 年 62 巻 1 号 p. 29-34
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/04/21
    ジャーナル フリー

    中学校理科第二分野における学習内容「種子をつくらない植物」の観察実験として,コケ植物の仮根は,「基物への付着」以外に「水分吸収」のはたらきも行っていることを確認する生徒実験を開発した.この実験は,自作の容器に0.05%リボフラビン(ビタミンB2)の水溶液を満たし,これに新しく伸長したコケ植物の仮根を浸した後,一定時間ごとに紫外線(352 nm)を照射してリボフラビンが発する蛍光を観察するという簡単なものである.その結果,用いた4種のコケ植物(セン類2種,タイ類2種)において,到達時間に差があるものの,いずれも茎や葉状体の先端までリボフラビンが到達したことが確認された.このことは仮根からリボフラビン水溶液が吸収されたことを示すものであり,これまで科学的に曖昧な事項とされていた内容について,生徒自らが行った実験結果をもとに科学的考察を行うことができる内容であり,より教科の目標に近づく観察実験であると考えられる.

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