理科において育成すべき資質・能力のひとつとして「観察・実験の結果を分析・解釈する力」がある.このことについて,高等学校「生物基礎」を例に,表やグラフが教科書本文にどのように引用されているかを調査し,教科書のグラフ等が,理科の学習において,どのように利用されているかを明らかにすることを目的に本研究を行った.
「生物基礎」の教科書に掲載されている図表は1社あたり296個掲載され,グラフ等は36個だった.本文に掲載されているもののみだと,グラフ等は全図表の16%であった.これらのグラフ等の教科書本文での引用状況は,「本文の記述内容の参考資料として掲載」している場合が6%,「本文の記述のまとめとして掲載」と「グラフ等の読取りについての説明がある」がともに12%,「本文の記述内容の根拠として記載」が最も高く71%であった.さらに,「本文の記述内容の根拠として記載」と「グラフ等の読取りについての説明がある」に区分したグラフ等の参照状態を調査すると,「表やグラフの値を参照」が10%,「表やグラフの値を比較した結果を参照」が52%,「表やグラフから読取れる規則性や関係性を参照」が24%,「表やグラフを比較し,規則性や関係性の違いを参照する」が14%であった.つまり,グラフ等の活用によって,「比較する」という理科の考え方を働かせる活動を行う場面が多いことが分かった.このような活動ができるグラフ等は,「生物の体内環境の維持」の単元に多く掲載されていた.
生物の学習は暗記が中心と揶揄されることもあるが,グラフ等を活用することで理科の考え方を働かせる活動となり,授業改善のひとつの方向を示すと考えられる.また,本調査でこのような活動のためのグラフ等の掲載状況を明らかにできたので,授業計画の一助として活用されることを期待している.
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