バイオフィードバック研究
Online ISSN : 2432-3888
Print ISSN : 0386-1856
44 巻, 2 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
国際セッション
  • 廣田 昭久
    2017 年 44 巻 2 号 p. 55-59
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/10/31
    ジャーナル フリー

     1973年10月, 日本でのバイオフィードバック研究の第1回会合が開催され, ハーバード大学のDavid Shapiro博士が日本に来て, ヒトの血圧の自己制御に関するプレゼンテーションを行いました. 会議の後, 会員数は急速に増加し, 1981年に日本バイオフィードバック学会 (JSBR) が結成されました. 医学, 工学, 心理学の3つの分野のメンバーが集まってこの学会を形成し, この学際的なコラボレーションがJSBRのユニークな特徴となっている. 多くの実験的・臨床的研究が実施されてきました. JSBRは, 1988年にバイオフィードバック技能師の認証制度を作りました. JSBRの約30人のメンバーは, これまでバイオフィードバック技能師として認定されています.

     日本では, 早期から心拍変動 (HRV) に関する研究が行われてきた. 梅沢と鈴木は, 1975年の第3回年次総会で, 呼吸数がHRVに影響を与え, 心拍数の変化はほとんどないことを示した. 1986年に稲森は 「心拍率水準および心拍率変動性に及ぼす呼吸の影響」 という論文を 「バイオフィードバック研究」 第13巻に発表した. 心拍変動に関する他の多くの研究が1980年代から行われた. 2002年の第30回JSBR年次総会では, 心拍変動バイオフィードバック (HRV-BF) が初めて紹介された. ロバート・ウッド・ジョンソン・メディカルスクールのPaul Lehrer博士がこの会議に出席し, HRV-BFについて講演しました. 講演後, 日本の研究者や臨床医はHRV-BFに関心を持ち始めました. Lehrerは2013年に第41回JSBRの年次総会に招かれ, HRV-BFに関する特別ワークショップで講演を行い, HRV-BFシンポジウムでプレゼンテーションを行いました. HRV-BFに関する基礎的メカニズムと理論の発展についてのさらなる研究が期待される.

  • 浦谷 裕樹, 大須賀 美恵子
    2017 年 44 巻 2 号 p. 61-62
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/10/31
    ジャーナル フリー

     自然災害や事件・事故の後に心的外傷後ストレス障害 (PTSD) を発症する子どもが一定の割合で生じる. 数多ある治療法の中で, 呼吸法はPTSDを改善する手法として効果が高く, 習得が容易であるといわれている. そこで, 子どもの呼吸法習得を支援するバイオフィードバックを用いた呼吸誘導ぬいぐるみを開発した. この呼吸誘導ぬいぐるみに内蔵されたセンサにより呼吸計測が, 呼吸誘導装置の動きにより呼吸誘導ができるかを調べたところ, 共に可能であった. また, 呼吸誘導ぬいぐるみによる呼吸誘導は子どもたちをゆっくりとした呼吸へと導き, 呼吸誘導をした方が単にハグしているよりもリラクセーション効果が大きいことが示された. 今後, PTSD患者の症状緩和に応用することが期待される.

  • Su in Park
    2017 年 44 巻 2 号 p. 63-68
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/10/31
    ジャーナル フリー

     第45回日本バイオフィードバック学会学術総会における国際セッションの発表 “定量的脳波査定と臨床例” にもとづき, 本稿は定量的脳波, 臨床例, そして治療進展の評価を含むニューロバック治療の三つの側面について述べた. はじめに, 定量的脳波の臨床的な解釈について示した. ここでは患者が注意, 不安, 記憶について問題を示す場合に, それぞれ注意ネットワーク, 不安ネットワーク, 記憶ネットワークの問題として仮定する. 治療プロトコルは脳機能テストと臨床的な査定にもとづいて決定される. 次に, さまざまな臨床例が提示された. ニューロフィードバックは自己制御トレーニングであり, 直接的に脳に対して適用されたバイオフィードバックである. 自己制御トレーニングは脳のシステムをよりよく機能するように働きかけるものである. わたしたちが耳を傾ける頭部の情報 (周波数や特定部位) は扱おうとする条件に固有であり, 個人に特有のものである. ニューロフィードバックは脳機能の障害を扱うものであるが, 一方で, てんかん発作, 自閉症スペクトラム, 脳性麻痺など器質性の問題にも有用である. 最後に, 治療の進展の評価について述べた. 先行研究は週に2~3回のセッションが最適であるとしている. それ以上にセッションが多い場合には脳の統合に十分な時間を与えることができない. 私は小休憩をとりながら5分の訓練を6回行っているがそれは訓練の中での切り替えの区切りとなっている. 訓練には40~60セッションが必要となる. 訓練セッションを通して, クライエントが好ましい行動変化を報告したり, 何らかの変化を見せたならばそれはプロトコルを替えるときである. 心拍数や呼吸などのバイオフィードバックを考慮することも重要である. 末梢の測度のモニタリングによって何らかの末梢のポジティブな変化を捉えることができるため, それはプロトコルの切り替えや治療終結のタイミングについての疑問に答える助けとなる.

シンポジウム
  • 辻下 守弘
    2017 年 44 巻 2 号 p. 69-75
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/10/31
    ジャーナル フリー

     リハビリテーション医療では, 脳卒中などによる脳損傷や交通事故などによる四肢欠損など, 神経系や運動器系が異常な形態や運動制御システムの破綻に陥った中で, 患者は日常生活に必要な動作 (ADL) や運動スキルを獲得することを強いられる. バイオフィードバックは, 脳卒中片麻痺のような複雑な運動障害に対するリハビリテーション医療において有利な点が多く, 今後の応用可能性が高いと考えられる. そこで, 本論文では, リハ医療におけるバイオフィードバックの応用可能性について, 主に脳卒中片麻痺の運動障害に関するバイオフィードバックの応用事例を手がかりにして考察した.

  • 蓮尾 英明
    2017 年 44 巻 2 号 p. 77-82
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/10/31
    ジャーナル フリー

     がん患者の痛みに対する心理社会的アプローチについては, 自己対処の習得を目指した行動療法的な技法が推奨されている. 自己対処可能な病態による症状を, がんによる症状から切り離すことで, 不安が軽減することがある. これは, 患者の健全な部分を引き出し生きる力を再生する (リジェネレーション) アプローチでもある. 痛みを訴えている進行がん患者の約30%に筋筋膜性疼痛が存在しており, 心理的要因との関連性が示唆されている. しかし, 難治性疼痛で余裕のないがん患者が納得できる病態を共有することは容易ではない. 当院では, 患者が心身の気づきを得られやすいような工夫をすることで, その認識が短期間で変化することを目指している. たとえば, 筋筋膜性疼痛では, 超音波を用いた視覚的気づき, 催眠を用いた体験的気づきを用いている.

  • 成瀬 九美
    2017 年 44 巻 2 号 p. 83-90
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/10/31
    ジャーナル フリー

     身体接触や身体模倣が含まれる身体的コミュニケーションは, 話し手から聞き手へという一方向性や交替性が明確な言語的コミュニケーションとは異なり, 対人交流場面に起こる力動性が個人に気づきをもたらす. 医療や福祉の現場では治療や援助の媒体としてグループワークが取り入れられているが, そのプログラムのひとつにダンス/ムーヴメントセラピー (DMT) がある. DMTは個人の情緒的社会的認知的身体的統合を促進する一過程として身体的コミュニケーションとしてのダンス/ムーヴメントを用いるものである. DMTのセッションでは, 対象とする人の内的な感覚を外に表出できるからだの使い方が尊重され, その人の身体表現をより豊かに, からだづかいの選択肢が拡がるように, セラピストの身体を枠組みとして, 動きの強さ・空間 (方向) ・リズム・フォルムを使いながら動き合う. 他者とともに居て・ともに動く, DMセラピストのからだは, バイオフィードバックとして他者に機能しているといえるのではないだろうか. 二者の速度同調についての実験データを参照しながら, DMTにおけるセラピストとクライアントの関係性について考察する.

BF講座
学会総会
feedback
Top