行動医学研究
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12 巻, 1 号
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原著
  • 荒井 弘和, 平井 啓, 所 昭宏, 中 宣敬
    2006 年 12 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2006年
    公開日: 2014/07/03
    ジャーナル フリー
    本研究では、外来化学療法に関する意思決定のバランス尺度を作成した。さらに、外来化学療法に関する意思決定のバランスと外来化学療法移行の変容段階との関連が検討された。本研究では、入院または外来通院によって化学療法加療中の肺がん患者105名を対象とした。外来化学療法に関する意思決定尺度を作成する目的で、外来化学療法に関する恩恵に関する質問19項目、および負担に関する質問19項目の合計38項目を用意した。探索的因子分析および分散分析によって、外来化学療法に関する意思決定のバランス尺度は、各10項目を含む2因子構造(恩恵因子と負担因子)であることが明らかにされた。外来化学療法に関する意思決定のバランス尺度は、内容的妥当性、構造的妥当性、因子的妥当性、および信頼性を持つことが確かめられた。さらに、熟考期、準備期、および実行期の3つの変容段階における恩恵標準得点と負担標準得点を布置したところ、準備期の周辺において、恩恵と負担の評価が交差していた。結論として、外来化学療法に関する意思決定のバランス尺度は、がん患者が外来で化学療法を受けるよう支援するために有効な評価指標になるだけでなく、退院支援のための患者教育の資料としても役立つことが予想される。
  • 村田 伸, 津田 彰
    2006 年 12 巻 1 号 p. 8-14
    発行日: 2006年
    公開日: 2014/07/03
    ジャーナル フリー
    本研究は、在宅障害後期高齢者女性58名(平均年齢83.3歳)を対象に、家庭での役割の有無とQuality of Life(QOL)を評価し、その関連性について検討した。家庭内役割有り群35名と無し群23名の比較において、Barthel Index(BI)得点、老研式活動能力指標、主観的健康感の3項目に有意差が認められ、いずれも家庭内役割有り群が無し群より有意に高かった。一方、生活満足度と生きがい感については有意差は認められなかった。また、家庭内役割の有無を目的変数としたロジスティック回帰分析の結果、老研式活動能力指標と主観的健康感のオッズ比に有意差を認めた。すなわち、在宅障害後期高齢者の家庭内役割と関連するQOLの因子として、生活行動とくに老研式活動能力指標の高さと主観的健康感の自覚が明らかとなった。これらの知見は、後期高齢者が身体障害を有したとしても、可能な限り家庭内役割を持つことの重要性を示し、障害高齢者本人のみならず家族を含めた生活指導の必要性が示唆された。
  • —1回の個別化介入による降圧および生活習慣改善—
    山津 幸司, 足達 淑子, 羽山 順子, 伊藤 桜子
    2006 年 12 巻 1 号 p. 15-24
    発行日: 2006年
    公開日: 2014/07/03
    ジャーナル フリー
    本研究の主な目的は、高血圧予防プログラムの参加者のうち、初回の個別助言を受け取ったがその後の質問には回答せず2回目の個別助言を受け取らなかった者〔1回参加者〕での血圧と習慣の変化を評価することであった。用いたプログラムは、質問票への回答から個別助言をコンピュータで自動出力する通信教育〔健康達人高血圧予防編〕であった。本プログラムは、1ヵ月間に2回の紙媒体の郵送による双方向性の通信で、質問票の回答に基づき自動出力した個別助言を提供するもので、2回の質問票に回答した終了者では、10ヵ月後も家庭血圧値の低下と習慣改善が維持されていることをすでに報告した。しかし、参加者の2/3を占める1回参加者での変化は不明であったため、追跡調査によって、その診療所血圧と習慣の変化を終了群と比較しながら観察した。1回参加者がプログラム上で確実に行ったことは、小冊子による情報の獲得と質問票上での習慣の自己評価であり、それに対する個別助言を受け取っていた。終了者は、それに加えて目標行動の設定と血圧と行動のセルフモニタリングを行い、2回目の個別助言を受け取っていた。2002年1〜3月までにプログラムに参加し、診療所血圧の記載のあった693名に、10ヵ月後に郵送による追跡調査を行った。回答した1回群248名(回収率56.1%)と終了群220名(回収率87.6%)のうち、薬剤変更がなかった1回群126名と終了群110名の計236名で診療所血圧と習慣行動の変化を観察した。診療所血圧は質問票に測定日時とともに記載された値を採用した。習慣変化は食事11項目と運動6項目、飲酒、睡眠等4項目を、同一の質問で4段階評価をさせるとともに、食事7項目と運動1項目についての主観的改善の有無を自己評価させた。前者を客観評価、後者を主観評価としそれぞれの改善数と血圧変化との関係を検討した。また、介入前の特性を1回群と終了群で比較するとともに、両群で、追跡調査への回答者と非回答者の特性を比較し、選択バイアスを検討した。その結果、終了群が1回群より自己測定血圧の記録率が高く、両群の回答者で年齢が高く、有職率と喫煙率は非回答者で高かった。介入前から10ヵ月後にかけて診療所血圧値は両群とも有意に低下し、1回群では147.0/87.6 mmHgから141.6/83.4 mmHgへと–5.5/–4.2 mmHg、終了群では148.1/88.5 mmHgから139.4/82.1 mmHgへと–8.8/–6.5 mmHg低下し、終了群の拡張期血圧値の低下は1回群より大きい傾向が認められた。生活習慣の改善については、全体として終了群が1回群より優れていた。客観的習慣改善数と両群の降圧とに、また、主観的習慣改善数と1回群の降圧とに関係が認められ、本研究の降圧効果は生活習慣改善によるものである可能性が示唆された。個々の血圧測定条件のばらつき、群間の回収率の差、意欲やコンプライアンスの差など研究上の制約はあるが、以上の結果から、血圧コントロールの教育において、方法によっては1回のみの指導介入でも長期の習慣改善と降圧効果を達成できる可能性があると考えられた。今後、無作為介入試験の実施、指導ツールとしての効果的な適用法の検討などが課題である。
  • —睡眠セミナー参加者と健診受診者との比較ー
    羽山 順子, 足達 淑子
    2006 年 12 巻 1 号 p. 25-35
    発行日: 2006年
    公開日: 2014/07/03
    ジャーナル フリー
    不眠者の行動観察から、いくつか仮説が提起されている。それは「不眠者は、不眠を補おうとして不眠を悪化させるような行動をとる、睡眠に対し過度の期待や思い込みのような不適応的な認知を持つ」というものであるが、日本ではまだこの仮説を検証した研究は少ない。また、生活習慣と不眠の関連は一定した結果が得られていない。本研究は以上の仮説と、生活習慣と不眠の関連を検証することを目的とした。保健所主催の睡眠改善セミナー参加者(以下不眠群)16名の睡眠に関連する生活習慣と睡眠に関する認知を、セミナー参加者と同じ地域の住民(以下一般群)73名と比較した。また、地域住民の中でも睡眠の良否で違いがあるかどうか確認するため、一般群について睡眠効率を基準に睡眠不良群18名と睡眠良好群55名に分け、生活習慣と睡眠に関する認知を比較した。不眠群と一般群を比較したところ、不眠群は一般群よりも入眠潜時は16.3分、要起床時間は50.4分長く、これは睡眠不足を補うための行動ではないかと考えた。睡眠に関連する生活習慣は、全体得点では傾向差がありやや不良であることがうかがわれたが、その内容を詳細に観察すると睡眠薬使用と寝室の環境以外は差が認められず、必ずしも不眠群の生活習慣が不良であるとはいえなかった。不適応的認知の保有数に差はなく、下位項目ごとに比較をしても、不眠群で「不安やイライラは不眠のせい」が多く見られたのみで、「不眠で身体や神経がまいる」はむしろ一般群の方が多い傾向にあった。その他の8下位項目に差はなかった。さらに睡眠不良群と睡眠良好群の比較では、睡眠不良群は睡眠良好群よりも、入眠潜時は58.4分、要起床時間は45.5分長く、睡眠効率は19.8%低いという不眠群同様の特徴が認められた。生活習慣は運動と就寝直前の活用の2項目で睡眠良好群よりも良好であり、不適応的認知については全ての項目において差がなかった。以上より、不眠を補う行動と睡眠効率についての仮説は不眠群も睡眠不良群もあてはまっていると考えられたが、生活習慣と不適応的認知に関しては、一概に不眠と関係があるということはできなかった。睡眠改善の指導はその人一人一人に適した指導が必要であると考えられた。また、睡眠の良否と生活習慣、睡眠に関する不適応的認知に関連がなかったことは、睡眠に関する一般的な知識が浸透していないためとも考えられ、睡眠に関する健康教育は、不眠者ばかりでなく、睡眠に問題がない者にも必要であると考えられた。
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