行動医学研究
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16 巻, 1 号
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原著
  • 鈴木 智草, 宇津木 成介
    2010 年 16 巻 1 号 p. 1-11
    発行日: 2010年
    公開日: 2014/07/03
    ジャーナル フリー
    本研究では、公共閉所空間としてエレベーター室内を想定し、そこにおける音楽の有無と男子同乗者の有無が女子実験参加者の主観的不安と心拍数および居心地感に与える影響を測定した。実験1では、実験参加者の意思で自由にエレベーターから出られる状況を設定した(高自由度条件)。その結果、音楽の影響は見られなかったが、居心地感に対する同乗者の影響が見られた。実験2では、5分間エレベーターに入っていなければならないという、低自由度条件で実験を行ったところ、音楽によって心拍数の増大が抑制された。実験3では同乗者条件、音楽条件に加えて、状況の自由度の条件を設定した。その結果、高自由条件では、音楽が実験参加者の不安を低減させ、同乗者の存在は居心地を低下させた。低自由度条件では、同乗者の存在によって実験参加者の居心地は上昇し、また音楽は心拍数の増大を抑制した。これらの結果から、BGMには女性搭乗者の不安や居心地を改善する作用のあることが認められたが、その作用は同乗者の存在および状況の自由度によって異なっていた。
  • 堀内 聡, 津田 彰, 金 ウィ淵, 洪 光植, プロチャスカ ジャニス・M
    2010 年 16 巻 1 号 p. 12-20
    発行日: 2010年
    公開日: 2014/07/03
    ジャーナル フリー
    本研究は2つの目的を達成するために行われた。第1の目的は、Pro-Change’s self-efficacy measure for stress management behavior(PSSM)韓国語版を開発することであった。第2の目的は、韓国の大学生において、ストレスマネジメント行動の変容ステージとセルフエフィカシーとの関連性を検討することであった。本研究ではストレスマネジメント行動を定期的にリラクセーションする、運動する、他者と話をする、あるいは社会的活動に参加するなど、ストレスを緩和するための活動を1日に少なくとも20分間行うことと定義した。参加者は228名の男子大学生と517名の女子大学生である。参加者はストレスマネジメント行動の変容ステージとセルフエフィカシー、および抑うつに関連する質問紙に回答した。セルフエフィカシーに関しては2週間後にも回答した。因子分析の結果、9項目からなり、受容可能な信頼性を有するPSSM韓国語版が開発された。自己効力感は抑うつと負の相関を示したことから、PSSM韓国版の妥当性が一部支持された。ストレスマネジメント行動のセルフエフィカシーは、その他の変容ステージに属する者と比較して、維持期に属する者で高く、多理論統合モデルをストレスマネジメント行動に適用できる可能性が支持された。
  • 羽山 順子, 足達 淑子, 津田 彰
    2010 年 16 巻 1 号 p. 21-30
    発行日: 2010年
    公開日: 2014/07/03
    ジャーナル フリー
    [研究背景]寝渋り、夜泣きのような乳幼児の睡眠問題は、母親の睡眠と健康に悪影響を及ぼす。児の睡眠問題は、就床時および夜間覚醒時の児に対する適切な対応を親に教育することで予防できるとの報告がある。先行研究において、筆者らは生後4ヵ月の乳児を持つ母親を対象に児の睡眠問題予防を目的とした教育介入を実施した。しかし教育の効果は限定的であり、4ヵ月より早い月齢である新生児の親に対する教育が、児の睡眠問題の予防にはより有用であると考えられた。 [目的]先行研究の結果を踏まえ、本研究は、新生児の母親に対して行った児の睡眠問題予防教育が、母親の養育行動と児の睡眠問題予防に及ぼす効果を、その後の4ヵ月児健康診査で比較して検討した。 [方法]対象は教育群46名と教育をしなかった比較群30名であった。教育では、乳幼児の睡眠問題予防のため望ましい養育行動について説明した小冊子を、地域の新生児訪問時に助産師が母親に配布した。評価した行動は1)児の睡眠に関連した親の養育行動(望ましい養育行動13項目、望ましくない養育行動3項目)、2)児の睡眠と睡眠問題、3)母親の睡眠と健康問題であった。 [結果]教育の結果、教育群の母親は、児の夜間覚醒時に「すぐには触らず様子をみる」という望ましい養育行動が比較群より高率に見られた(教育群:比較群=48.9%:23.3%,p<0.05)。さらに望ましい養育行動の合計数は比較群よりも多く(教育群:比較群=4.4:3.3,p<0.01)、望ましくない養育行動の合計数は少なかった(教育群:比較群=1.3:1.7,p<0.05)。また、教育群の母子は就床時刻が規則正しい者の割合が高く、母親は頭痛を感じる者の割合が低かった(教育群:比較群=2.3%:20.0%,p<0.05)。 [考察]以上の結果から、小冊子を用いて児の就床覚醒時刻を規則正しくするための養育行動を教育したことは、教育群の児における就床時刻の規則性促進に影響したと考えた。また、児の就床時刻が規則正しいことは教育群の母親における就床時刻の規則性を促し、母親の頭痛の減少につながった可能性があると考えた。 一方、児の睡眠問題では群間差が見られず、新生児の母親への教育介入が、4ヵ月児の母親への教育よりも児の睡眠問題の予防に有用とした本研究の仮説は支持されなかった。この理由として、①予防効果の検証時期が生後4ヶ月では早過ぎた可能性、②今回用いたような簡素な介入の効果検証にはサンプル数(76名)が小さ過ぎた可能性、③本研究における教育法が、必ずしも児の睡眠に問題意識を有してはいない母親には不十分であった可能性が考えられた。従って、新生児の母親に対しては、本研究の教育方法では不十分で、情報の提供の仕方などに一段の工夫の余地があると考えた。 他地域も含めたより多数の対象者における比較試験を行うこと、睡眠日誌などで睡眠指標の精度を高める必要がある。 [結論]4ヵ月より早い月齢での親教育が児の睡眠問題の予防にはより有用であるとの仮説は支持されなかった。しかし、本研究における教育介入の結果、限定的ではあるが児の睡眠に関連する養育行動および母子の睡眠習慣に効果が認められた。また、母子の睡眠習慣の改善は、母親の健康問題の改善に貢献する可能性があることが示された。
  • 堀内 聡, 津田 彰, 岡村 尚昌, 矢島 潤平, ステプトー アンドリュー
    2010 年 16 巻 1 号 p. 31-39
    発行日: 2010年
    公開日: 2014/07/03
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は、異なる一過性のメンタルストレステストが、脳に由来するノルアドレナリンの代謝産物である唾液中3-methoxy-4-hydroxyphenylglycol(MHPG)の異なる反応を喚起するか否かを検討することであった。参加者は健常な成人男性10名であり、異なる日にストループ語彙−葛藤課題と暗算課題(内田クレぺリン課題)をこなした。課題の順番は参加者間でカウンターバランスされた。唾液はベースライン、課題直後、そして課題10分後に採取した。両課題は同程度の主観的ストレス反応を喚起した。しかし、唾液中MHPGは語彙−葛藤課題に対してのみ上昇し、暗算課題には変化しなかった。これらの結果は、MHPGの放出を促し、中枢ノルアドレナリン神経系を活性化させるメンタルストレステストの要素が存在することを示唆している。
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