行動医学研究
Online ISSN : 2188-0085
Print ISSN : 1341-6790
ISSN-L : 1341-6790
17 巻 , 1 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
総説
  • 坪井 宏仁, 近藤 克則, 金子 宏, 山本 纊子
    2011 年 17 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2011年
    公開日: 2014/07/03
    ジャーナル フリー
    心疾患は、本邦では悪性新生物に次ぐ死因の第2位を占め、その多くが「冠動脈疾患(coronary heart disease, CHD)」である。CHDのリスクファクターとして、高血圧・高脂血症・糖尿病など生活習慣に基づくものが一般に知られているが、心理的・社会的・経済的因子も無視できない。多くの欧米諸国では長年にわたり心疾患が死因の第1位であるため、その原因と予防に関する研究も多く、CHDと心理的社会的因子や社会経済的因子に関する研究結果が多く得られている。わが国でもライフスタイルの変化により動脈硬化病変がさらに増加し、CHD罹患率やそれによる死亡率の上昇することが予測される。その予防において、個人の生活習慣以外にCHDの重要なリスクファクターである社会経済的要因を把握することも重要であろう。わが国は、高度成長時代を経て平等と言われる社会を築いてきたが、1990年代後半以降は個人間の社会経済的格差が広がっている。その変化の長短は視点によって異なるところであろうが、社会経済的格差が健康に影響を及ぼすのであれば、格差の変革が疾病予防にもつながるはずである。そこで本稿では、CHDと社会経済的状況(socioeconomic status, SES)の関係について、まず両者の関係を述べ、次に両者をつなぐメカニズムを主に心理社会的側面から触れ、最後にCHD予防の可能性を社会的側面から考察した。CHDは、冠動脈壁に経年的に形成される内膜の肥厚病変とその破裂により発生し、原因は酸化・炎症や交感神経系の亢進などである。一方、SESは収入・教育歴・職業(職の有無、職場での立場も含む)などから成り、さまざまな経路でCHDに影響すると考えられる。健康行動はSESによって差があり、高SES層ほど健康によい行動を取る傾向にある。その差が、健康増進資源・医療へのアクセスの違いにつながり、CHDの発症および予後に影響する。次に、心理社会的経路であるが、この経路では、心理的・社会的特性の差異が自律神経・内分泌・免疫系を介してCHDの成因に影響する。低SES層には、慢性ストレスやライフイベントが多く、抑うつ傾向・怒り・攻撃性・社会的孤立などが認められる一方、高SES層ではコントロール感や自己実現感が高い。このような差違が、視床下部-下垂体-副腎皮質(hypothalamic-pituitary-adrenal, HPA)系または交感神経-副腎髄質(sympathetic-adrenal-medullar, SAM)系を介し、炎症・酸化・血糖の上昇・交感神経系の亢進に影響し、長年の間にCHDイベントのリスクが高まる。また、両親および幼少期のSESが、HPA系およびSAM系の反応を脆弱にしたり、成人後の行動的・心理社会的リスクファクター(喫煙・運動不足・攻撃性・職場での緊張・不健康な心理状態など)に影響を与え、CHDに影響を及ぼす可能性も示唆されている。さて、CHDの予防は、生活習慣予防として特定健康診査・特定保健指導により個人および職場レベルで2008年より行われている。しかしSESとCHDの関連性を考慮すると、社会レベルでの予防策も必要であろう。WHOは、健康を決定する社会的要因として「社会経済環境」「物理環境」「個人の特性と行動」を挙げている。このうち、社会経済環境を整備することがCHD予防につがなる可能性を示した。教育による介入、社会保障制度の整備、人生の節目でのサポートなどが有効であろうことが海外の研究で示されている。SESを改善しCHDを予防する戦略には、エビデンスに基づいた社会疫学的研究が必要であろう。
原著
  • 宗澤 岳史, 山本 隆一郎, 根建 金男, 野村 忍
    2011 年 17 巻 1 号 p. 8-15
    発行日: 2011年
    公開日: 2014/07/03
    ジャーナル フリー
    本研究は、入眠障害と入眠時の対処行動の関連を検討したものである。研究1では、入眠時の対処行動を因子分析によって分類した。分類された因子は第1因子“認知活動抑制”、第2因子“非入眠行動”、第3因子“認知活動活性”と解釈された。研究2では大学生355名を対象に、対処行動と入眠時認知活動、入眠障害の程度の関連を検討した。その結果、全て対処行動は入眠時認知活動と入眠障害の程度と正の相関を示した。また、パス解析の結果、入眠障害に至る2つの経路が示された。一つは、認知的対処が入眠時認知活動と有意な関連を示す間接的なパスであり、もう一つは、行動的対処が入眠障害の程度と有意な関連を示す直接的なパスであった。本研究結果から、入眠時の不適切な対処行動は入眠障害に対して不適切な影響を有することが確認された。今後は、不適切な対処行動の除去と代わりとなる対処方略の導入を用いた入眠障害に対する認知行動療法の開発が期待される。
  • 長谷川 晃, 金築 優, 井合 真海子, 根建 金男
    2011 年 17 巻 1 号 p. 16-24
    発行日: 2011年
    公開日: 2014/07/03
    ジャーナル フリー
    本研究では,抑うつ的反すうに関するネガティブな信念の確信度を測定する尺度を作成し,また,この信念の確信度が抑うつ傾向と関連するという仮説を検討することを目的とした。研究1では,大学生465名に対して,抑うつ的反すうに関するネガティブな信念の内容を反映していると考えられる項目群からなる質問紙を実施した。得られた回答に対する因子分析の結果を踏まえて,1因子構造からなる「抑うつ的反すうに関するネガティブな信念尺度(NBDRQ)」を作成した。研究2では,大学生129名に対して,NBDRQと心配に関する信念の確信度を測定する尺度を実施した。変数間の相関関係から,NBDRQの十分な構成概念妥当性が確認された。それに加え,研究2では,大学生107名に対して,NBDRQを4週間の間隔をあけて2度実施した。2度実施したNBDRQの得点間の相関係数から,尺度の再検査信頼性が確認された。研究3では,大学生196名に対して,NBDRQと抑うつ的反すう傾向,および抑うつ傾向を測定する尺度を実施した。その結果,抑うつ的反すう傾向の影響を統制した上でも,NBDRQ得点と抑うつ傾向との関連性が示され,抑うつ的反すうに関するネガティブな信念の確信度が抑うつ傾向と関連するという仮説が支持された。抑うつ的反すうに関するネガティブな信念を変容することにより,抑うつ傾向を効果的に低減できる可能性が示唆された。
  • 安達 圭一郎, 武井 麗子, 北村 俊則, 上野 徳美
    2011 年 17 巻 1 号 p. 25-32
    発行日: 2011年
    公開日: 2014/07/03
    ジャーナル フリー
    本研究では、がん告知などの危機的情報に対する患者の特性的対処方略に着目したMBSS(Miller Behavioral Style Scale)日本語版の信頼性、及び妥当性を調べるために、以下の3点について検討を加えた。1)MBSS日本語版の基礎統計量、2)MBSS日本語版と日本語版TCI-125項目版の関連性、3)現在の気分状態(POMS短縮版)に影響するMBSS日本語版の効果。376名(男子110名、女子266名;18.9±1.3歳)の大学生を対象に、MBSS日本語版、日本語版TCI-125項目版、POMS短縮版を質問紙にまとめ、集合調査法で実施した。その結果、MBSS日本語版は、MBSS原版のもつ諸特性と類似の尺度であることが確認されたが、特に、ブランティング尺度で信頼性、妥当性に問題が残った。以上の結果から、今後医療場面への適用に向けて、MBSS日本語版の再標準化の必要性が示唆された。
feedback
Top