行動医学研究
Online ISSN : 2188-0085
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19 巻, 1 号
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原著
  • 西郷 達雄, 中島 俊, 小川 さやか, 田山 淳
    2013 年 19 巻 1 号 p. 3-10
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/07/03
    ジャーナル フリー
    本研究では、東日本大震災における災害医療支援者の派遣後約1.5ヶ月時点でのPTSD有症状者の把握、および侵入的想起症状に対するコントロール可能性と外傷後ストレス症状との関連について検討することを目的とした。本研究の仮説は、侵入的想起症状に対するコントロール可能性が高い者は外傷後ストレス症状が低く、逆にコントロール可能性が低い者は外傷後ストレス症状が高いとした。東日本大震災に伴い長崎大学から各県に派遣された災害派遣医療チーム(Disaster Medical Assistance Team: DMAT)、救援物資輸送支援、被ばく医療支援、地域医療支援に従事した災害医療支援者54名に対して、フェイスシートを含む、外傷後ストレス症状、および侵入的想起症状に対するコントロール可能性の測定を実施した。派遣後約1.5ヵ月時点でのPTSD有症状者は0名であった。侵入的想起症状に対するコントロール可能性と外傷後ストレス症状との相関分析の結果、コントロール可能性と外傷後ストレス症状を測定するIES-R-J合計得点、およびIES-R-Jの下位因子である侵入的想起症状得点、過覚醒症状得点との間に有意な負の相関が認められた。侵入的想起症状に対するコントロール可能性の高低による外傷後ストレス症状の差を検討したところ、コントロール可能性低群では、コントロール可能性高群と比べてIES-R-J合計得点および、侵入的想起症状得点、過覚醒症状得点が有意に高かった。本研究の結果から、侵入的想起症状に対するコントロール可能性が外傷性ストレス症状に対して抑制的に働くことが示唆された。
症例報告
  • 金 ウィ淵, 津田 彰, 村田 伸, 堀内 聡
    2013 年 19 巻 1 号 p. 11-16
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/07/03
    ジャーナル フリー
    本研究は、睡眠の問題で悩んでいる中高齢者を対象に、静功活命法が不眠と抑うつ及び主観的健康感に及ぼす効果について検討した。対象者は静功活命法群9名(年齢の中央値:49.5歳)と対照群13名(年齢の中央値:58歳)であった。静功活命法を週1回(60分)、4週間行い、介入前後の主観的睡眠評価(PSQI)、抑うつ、主観的健康感の変化を検討した。静功活命法群は対照群と比較し、介入前の不眠と抑うつは有意に高く、主観的健康感は有意に低かった。介入後、静功活命法群の主観的睡眠評価(PSQI)の総合得点は有意に減少されたが、抑うつと主観的健康感には有意な変化は認められなかった。静功活命法により、中高齢者の不眠を改善する可能性が示唆された。今後、より多くの被験者を募り、無作為に振り分けた介入研究を行う必要がある。。
資料
  • 原田 和弘, 平井 啓, 荒井 弘和, 所 昭宏
    2013 年 19 巻 1 号 p. 17-24
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/07/03
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は、入院で化学療法を施行中の進行肺がん患者を対象として、身体活動に対する自律性とセルフ・エフィカシーが、実際の身体活動と心理的適応の関連要因であるかどうか検討すること、および、これらの変数の相互関係が、全身活動状態の程度によって異なるか検討することであった。書面同意が得られた、化学療法を施行中の進行肺がん患者(合計9名)を対象に、7日間、調査を実施した。加速度計(ライフコーダEX)を用いて、7日間の歩数を測定した。また、調査開始時と、調査開始後7日後に、心理的適応(不安・抑うつ)、身体活動に対する自律性、身体活動に対するセルフ・エフィカシーについて質問紙調査を実施した。質問紙調査と平行して、対象者の全身活動状態について、研究者3名による評価を行った。全身活動状態が7日間で悪化した患者群(n=4)においては、身体活動に対する自律性と不安との間に有意な相関関係が(r=0.97, p<0.05)、また、身体活動に対するセルフ・エフィカシーと抑うつとの間に相関傾向が認められた(r=0.93, p<0.10)。一方、全身活動状態が7日間で変化しなかった患者群(n=5)においては、これらの相関関係は認められなかった。また、自律性およびセルフ・エフィカシーと身体活動量との関連は、両患者群において明らかとはならなかった。以上の結果から、全身活動状態が悪化した患者においては、身体活動に対する自律性やセルフ・エフィカシーが高いほど、心理的適応が良好である可能性が示された。
  • ~大学生を対象とした探索的研究~
    安達 圭一郎, 上野 徳美
    2013 年 19 巻 1 号 p. 25-31
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/07/03
    ジャーナル フリー
    近年、うつ病などの気分障害患者は増加傾向にある。また、こうした気分障害と境界性パーソナリティ障害との併存率の高さを指摘する研究は数多くなされてきた。しかしながら、気分障害と境界性パーソナリティ障害との関連性について、診断学的に因果関係があるのかどうかについては十分なコンセンサスを得ていない。そこで、本研究は、探索的研究として、大学生を対象に、抑うつ傾向と境界例心性との関連性について、回避を媒介変数としたパスモデルを作成し、共分散構造分析で検討した。その結果、抑うつ傾向は回避を媒介として境界例心性に影響をもつということ、さらに、抑うつ傾向は直接的に境界例心性に影響することが確認された。一方、回避を媒介としないものの、境界例心性から抑うつ傾向への逆向きのパスモデルも適合度指標が高かった。以上の結果から、今後は、臨床群を対象にしたモデルの再検討の必要性が示唆された。
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