行動医学研究
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2 巻, 1 号
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巻頭言
総説
  • 池見 酉次郎
    1995 年 2 巻 1 号 p. 2-5
    発行日: 1995年
    公開日: 2014/07/03
    ジャーナル フリー
  • ―回顧と展望―
    内山 喜久雄
    1995 年 2 巻 1 号 p. 6-11
    発行日: 1995年
    公開日: 2014/07/03
    ジャーナル フリー
    行動医学は1977年、イェール大学で開催されたイェール会議で命名され、正式な定義を与えられたが、実質的にはそれよりはるか以前から発生していた。
    Weiss (1992) によれば、既に前世紀において、Osler, W (1849-1919) は攻撃的行動と冠動脈疾患との関連を認めており、Mesmer, F.A. (1733-1815)、Freud, S. (1856-1939) らも身体への精神の影響について記載している。Cannon, W.B. (1871-1945) は“闘争か逃走か”反応の概念を確立させて、環境刺激と生理的反応の関係を解明したが、他方、Alexander (1950) は長期にわたる自律系の興奮によって引き起こされた葛藤は関連器官に疾患を生起させるとの見解を定着させ、また、Dunbar (1947) の著作“心とからだ : 心身医学”は“心身医学”なる語を普及させる上で大いに役立った。Weiss (1992) によれば、心身医学は1950年代から1960年代初期にかけて、生物医学領域から多大の注目を集めたが、1960年代後期以後失速し、生物医学の主流からの関心も薄れた。以下、行動医学の展開を推進した、また、するであろうと思われる諸要因について考察してみよう。まず、行動原理ないし学習理論にその基盤を置き、各種の精神的、身体的障害の治療や査定に貢献してきた行動療法は行動医学の発展に重要な役割を果してきた。また、最近、心臓病、がん、糖尿病などの慢性疾患が注目されるようになり (Table 1)、その結果、ヘルスケアシステム、ライフスタイルの改善、社会的支援、セルフケア、セルフヘルプ、自己制御、等の新しいアプローチの役割が注目されるようになった。これは従来、自然科学的思考に比較的多くみられた原因A→結果Bという直線型の認知様式でなく、種々の原因と結果が相互に円環的に影響し合う認知様式に基づいており、行動医学に要請される一特性とも言える。また、人権、プライヴァシー、インフォームドコンセント等の最近のトレンドも行動医学の発展にとって追い風となっている。同様に、バイオフィードバック研究の発展や健康関連諸経費の増大防止への要望なども行動医学の振興にとって強力な推進力となることであろう。
    行動医学の健全な発展のためには、Weiss (1979) も述べているように、生物医学研究者も行動科学研究者も共に相手の学問領域や内容について互いにもっとよく知るようになるべきである。実際問題として、両者の間に立ちはだかる種々の障壁を完全に除去することは不可能であるとしても、これらを減殺することは行動医学、ひいては健康の推進に寄与するところ大なるものがあるであろう。
  • ―国際行動医学会の流れより―
    荒記 俊一
    1995 年 2 巻 1 号 p. 12-19
    発行日: 1995年
    公開日: 2014/07/03
    ジャーナル フリー
    日本行動医学会 (JSBM) は、1990年の国際行動医学会 (ISBM) の設立に続いて、1992年6月に創立された。ISBMの創立後、筆者はISBMの国際・組織間連絡委員長の1人としてJSBMの設立とISBMのその後の流れに関与してきた。本稿では、行動医学の定義、方法論および今後の展望について簡単に述べた後、JSBMの創立とその後の経過をまとめた。内容は (1) ISBMの創立、(2) 第12回東大国際シンポジウム、(3) JSBMの創立、(4) JSBMのISBMへの加盟、および (5) JSBMの初期の活動 (第1回学術総会、国際行動医学会誌の発行、ニューズレターの発行、編集委員会の新設、および第1回教育研修会) である。
  • 宗像 恒次
    1995 年 2 巻 1 号 p. 20-28
    発行日: 1995年
    公開日: 2014/07/03
    ジャーナル フリー
    疾病はさまざまな要因の複合的相互作用から生まれる。社会文化的要因と身体的、心理的ストレス、またそれらの影響を余儀なくされた個人のパーソナリティーとの相互作用、そしてその個人がそれらの要因の相互作用の中でうまく適応できないところがあることによって疾病が生まれる。日本人はこれまで自分の意見や気持ちの表現を抑え、まわりに認められるために自己犠牲的な努力をしやすいところがあった。人々は職場、学校、地域での脅しを含むピラミッダルな関係の中で社会化され、管理されてきた。概してその世界に適応してきたが、他方ではストレス病につながるような生活を送ってきた。後期産業社会になると消費者の必要とする生産物やサービスを単に提供するだけでは不十分である。消費者の心を充たすものを提供することが不可欠である。経営者や従業員は顧客の心を捉える感性をもち、その心を充たしうる生産物やサービスを創り出す必要がある。すなわち、彼らはひとの心に共感でき、自らの心を表現できることが必要になる。単に上司に対し自分を抑制し、その指示に自己犠牲的に従うだけでは十分ではない。ところで、ストレス病の苦しみはそうなった自己への嫌悪感や抑うつ気分に強めている。が、翻ってその苦しみをバネにして、まわりに認められるために自己抑制するのではなく、他の人への共感的感情をもって自らの心を表現することである。それこそが後期産業文化に適応できうることでもある。
    しかし、保健医療従事者はストレス病に対して対症療法におわれており、それを生み出す行動特性の変容までには心がいっていない。後期産業社会の医療文化はかつての脅しを含むピラミッダルな関係を反映したパターナリズムから保健医療サービスの提供者と利用者が相互に尊敬し合える社会関係をつくることが必要である。しかも利用者は行動変容のための自己決定や自己成長が効果的なカウンセリングによって支えられる必要がある。
  • ―行動医学との関連から―
    根建 金男, 市井 雅哉
    1995 年 2 巻 1 号 p. 29-36
    発行日: 1995年
    公開日: 2014/07/03
    ジャーナル フリー
    認知行動療法は、行動療法と認知的アプローチを統合するもので、そこにはさまざまなアプローチが含まれる。近年、この認知行動療法が台頭してきた。この論文では、(1) 認知行動療法について概観し、(2) この治療体系の意義と課題を、行動医学との関連から考察した。
    (1) に関しては、筆者らはまず認知行動療法とは何であるのかについて検討を加えた。そこでは、この体系が大きな広がりをもつことが強調された。この検討の後に、筆者らは、認知行動療法の代表的アプローチである、論理情動行動療法、認知療法、ストレス免疫訓練をとりあげ、説明した。特に、それぞれのアプローチの基本的な考え方や方法、技法に焦点を当てて述べた。
    (2) に関しては、認知行動療法は、有効性が高く、行動医学とめざす共通点があるために、行動医学に大いに貢献できる可能性がある、ということが示された。
    ただ、認知行動療法の最近の動向は、この体系がこれまで同様、これからも変化していく必要がある、ということを示唆している。「発達認知療法」が主張するような、構成主義 (コンストラクティヴィズム) や人間の成長の視点を考慮にいれて、認知行動療法について再考するのは、大いに見込みのあることにちがいない。しかし、認知行動療法を、行動療法の発展型ととらえる限りは、行動療法で用いられている科学的な方法論を認知行動療法も堅持することが必要である。
    このように認知行動療法を再考し、それを更に発展させていくことは容易ではないだろうが、それによって、認知行動療法は行動医学に貢献できる可能性を一層高めることができるだろう。
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