行動医学研究
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21 巻 , 2 号
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巻頭言
第21回日本行動医学会総会シンポジウム企画
総説
  • 平井 啓
    2015 年 21 巻 2 号 p. 57-62
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/19
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    日本の乳がん検診の受診率は極めて低く、さらに系統的ながん検診受診率対策が十分に行われていなかった。そこで、乳がん検診(マンモグラフィー検査)に関して、トランスセオレティカルモデル・計画的行動理論などの行動変容の理論と方法を用いて、行動変容モデルを作成し、モデル内の変数を用いた対象者セグメンテーションを行い、さらに異なるセグメント毎に心理的特性を考慮したメッセージを作成し、それらを送り分けるテイラード介入を実施し、コントロール群との実際の受診率の違いを無作為化比較試験によって検討した。641名の女性に対する調査の結果、目標意図・実行意図・がん脅威などの心理的変数からなる行動変容モデルが開発された。このモデルに基づいた対象者セグメンテーションが行われ、その妥当性が示された。3つのセグメント毎に開発されたメッセージを送り分けるテイラード介入を1,859名の女性を対象とした地域介入研究において実施した。その結果、テイラード介入群(19.9%)とコントロール群(5.8%、Odds ratio 95%信頼区間: 2.67–6.06)、さらにコントロール群と3つのセグメントの間で受診率に有意な違いがあることが明らかとなった。これらの研究から、行動変容モデルに従って対象者をセグメントに分け、そのセグメントがどのような心理的特性を持った人たちによって構成されているかを精緻に調べ、それに対応したメッセージとデザインを開発するという一連の方法は、効果的な行動変容を実現するためにはとても有効な方法であるのではないかと思われる。
  • ―体重管理における誘惑場面の対策に関する基礎と実践的研究―
    赤松 利恵
    2015 年 21 巻 2 号 p. 63-68
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/19
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    望ましい食生活の実践には、「食物や栄養」に関する知識も必要である。しかし、「食物や栄養」に関する知識だけがあっても、「わかっているけれどできない」人を増やすだけである。食生活の実践には、「食行動」の知識も必要である。しかしながら、「食行動」視点の研究が少ないため、栄養教育に活用できる「食行動」視点のアドバイスが少ないのが現状である。そこで、栄養教育に活用できる「食行動」研究として、体重管理における誘惑場面の対策に関する研究を行った。まず、体重管理の対策の種類を整理するために、質的研究と尺度開発研究を行った。これらの研究によって、「行動置換」「食べ方」「刺激統制」「ソーシャルサポート」「認知的対処」の5つの対策が抽出された。その後、ある企業に協力いただき、体重管理の誘惑場面における対策のアドバイスを中心とした体重管理プログラムを行った。その結果、体重管理の行動変容段階の実行・維持期の者は増え、BMI(body mass index)25 kg/m2の人は減った。この実践的研究は、対策を中心としたプログラムの実施可能性を示した。さらに、体重管理における誘惑場面の対策を用いたカード教材を開発し、保健医療従事者および健康教室に参加した成人を対象に実施可能性を検討した結果、カード教材による学習を「楽しかった」と回答する人が多かった。一方で改良点も提案され、これらを参考に教材を改良した。本稿で紹介したような研究結果が、「食行動」視点のアドバイスには必要である。「栄養」を中心とした教育から、「食行動」視点を加えた栄養教育の実践のために、今後さらに「食行動」学の研究が実施されることを期待する。
  • ―ストレスの過小評価に着目して―
    中村 菜々子, 井澤 修平, 山田 クリス孝介
    2015 年 21 巻 2 号 p. 69-75
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/19
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    わが国の労働者の健康に対してストレスの悪影響は大きいため、国や事業場は様々な対策を講じている。事業場は、ストレスレベルのチェックやストレス理解を促す研修会を実施しており、現在多くの労働者がストレスレベルのチェックや研修会へ参加するようになっている。しかし、彼らがストレスチェックや研修会へ参加することが、その後のセルフケアの実施に結びついていないことが問題である。この理由として、筆者らは、労働者各個人の「ストレスの捉え方の傾向」の個人差が影響していると仮説を立てた。すなわち、ストレスレベルの自己評価は、ストレス対処行動を生じさせるために必要な最初の段階である。体験しているストレスのレベルやストレス・マネジメントの重要性を過小評価しやすい態度を持っている者は、十分なストレス対策を実施しないであろうと考えられる。本稿では、現在までの研究のうち、ストレス性疾患である急性心筋梗塞患者を対象としたストレスの捉え方の質的研究、労働者を対象とした量的研究をそれぞれ紹介する。一連の研究結果を応用し、本人の「ストレスを過小評価する傾向」の要因を追加することで、ストレスチェックやメンタルヘルス研修の効果をより高めることが期待される。
  • ―膝痛高齢者への痛み対処スキルトレーニングの応用―
    岡 浩一朗
    2015 年 21 巻 2 号 p. 76-82
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/19
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    心理的要因(たとえば、痛み対処方略)が高齢者における運動器疼痛管理に重要な役割を果たすというエビデンスは増加している。それ故に、運動器疼痛管理のために認知行動療法(たとえば、痛み対処スキルトレーニング)を利用することへの興味・関心が高まっている。本稿では、まず初めに運動器疼痛管理における認知行動療法の必要性に関する背景について概観した。次に、痛み対処スキルトレーニングで使用される5つの主な技法(認知再構成、リラクセーション、ディストラクション、快活動の計画、活動ペース配分)に焦点を当てて解説した。さらに、日本人の膝痛高齢者に対する痛み対処スキルトレーニングおよび運動療法に活用するために新しく開発した2つの印刷教材を紹介した。最後に、この領域における研究の今後の方向性について議論した。本総説より、運動器疼痛管理に認知行動療法(痛み対処スキルトレーニング)を応用することの重要性が示された。
原著
  • 加賀田 聡子, 井上 彰臣, 窪田 和巳, 島津 明人
    2015 年 21 巻 2 号 p. 83-90
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/19
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    看護師を対象に、感情労働による心理学的影響を調べた近年の先行研究では、感情労働がバーンアウト/抑うつの悪化や職務満足感の向上に影響を与えることが着目されている。しかし、日本の看護師を対象に感情労働の心理学的側面に着目した先行研究は少なく、感情労働を要素別に分類し、ワーク・エンゲイジメントやストレス反応との関連を検証した研究は、我々の知る限り見当たらない。そこで本研究では、日本の看護師を対象に「看護師の感情労働測定尺度:ELIN」を用いて感情労働の要素を詳細に測定し、これらの各要素とワーク・エンゲイジメント、心理的ストレス反応および身体的ストレス反応との関連を検討することを目的とした。関東圏内の1つの総合病院に勤務する女性病棟看護師306名を対象に、感情労働(ELIN:「探索的理解」、「ケアの表現」、「深層適応」、「表層適応」、「表出抑制」の5下位尺度からなる)、ワーク・エンゲイジメント(The Japanese Short Version of the Utrecht Work Engagement Scale:UWES-J短縮版による)、心理的ストレス反応および身体的ストレス反応(職業性ストレス簡易調査票:BJSQによる)、個人属性(年齢、診療科、同居者の有無)に関する質問項目を含めた自記式質問紙を用いて調査を実施した(調査期間:2011年8~9月)。分析は、感情労働とワーク・エンゲイジメント、心理的ストレス反応および身体的ストレス反応との関連を検討するため、感情労働の各下位尺度を独立変数、ワーク・エンゲイジメント、心理的ストレス反応および身体的ストレス反応を従属変数、個人属性を調整因子とした重回帰分析を実施した。重回帰分析の結果、感情労働の構成要素の一つである「探索的理解」とワーク・エンゲイジメントとの間に正の関連が、「表出抑制」とワーク・エンゲイジメントとの間に負の関連が認められた。また、感情労働の構成要素の一つである「深層適応」と心理的ストレス反応および身体的ストレス反応との間に正の関連が認められた。これらの結果から、「探索的理解」を高め、「表出抑制」や「深層適応」を低減させるようなアプローチによって、看護師が自身の感情をコントロールしながらも、心身の健康を保持・増進するために有効な可能性が示唆された。
  • —関係フレーム理論からの検討—
    佐藤 友哉, 橋本 塁, 嶋田 洋徳, 大月 友
    2015 年 21 巻 2 号 p. 91-98
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/19
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    本研究の目的は、社交不安の2つのサブタイプ(全般性、非全般性)における、刺激関係の形成の流暢性と、スピーチ場面で生起する生理的反応の差異を検討することであった。54名の大学生を対象に、パフォーマンス場面に対する不安を測定するSocial Phobia Scale(以下、SPS)、対人交流場面に対する不安を測定するSocial Interaction Anxiety Scale(以下、SIAS)への回答を求め、関係ネットワーク間での刺激関係の形成の流暢性を測定するGo / No-go Association Taskを実施し、スピーチ課題中の精神性発汗を測定した。SPS、SIAS得点の平均値、標準偏差をもとに群分けを行い、基準を満たす30名が分析対象とされた。その結果、全般性の社交不安を示す者は、不安が低い者と比較してパフォーマンス場面をあらわす言語刺激群と、ネガティブな情動をあらわす言語刺激群の間の刺激関係を形成しやすいことが示された。また、不安が低い者は、スピーチ準備期と比較して実施期の精神性発汗の程度が高いことが示された。本研究の結果から、社交不安の2つのサブタイプを関係フレーム理論の観点から記述する有用性が示唆された。
  • 佐藤 友哉, 橋本 塁, 前田 駿太, 山下 歩, 嶋田 洋徳, 大月 友
    2015 年 21 巻 2 号 p. 99-108
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/19
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    Acceptance and Commitment Therapyにおいては、言語刺激が有する機能を変容するため、脱フュージョンという技法が用いられる。この脱フュージョンを目的として用いられる技法の1つとして、Word Repeating Technique(以下、WRT)がある。本研究の目的は、異なる言語刺激を用いたWRTと言語刺激に対する曝露が、言語刺激が有する機能や不安症状などの各種指標に及ぼす影響の差異を検討することであった。49名の大学生および大学院生を、中性的な言語刺激のみを用いるNeutral-Defusion群、苦痛度の高い言語刺激のみを用いるNegative-Defusion群、中性的な言語刺激と苦痛度の高い言語刺激の両方を用いるBoth-Defusion群、苦痛度の高い言語刺激に対する曝露を行うVerbal-Exposure群に無作為に割り当て、介入効果の差異を検証した。データ解析の結果、WRTは、言語刺激に対する曝露とは各種指標に及ぼす影響が異なることが示された。加えて、苦痛度の高い言語刺激を用いたWRTにおいては各種指標の改善に対する短期的な効果が認められる可能性が示唆された。また、中性的な言語刺激を用いたWRTが含まれる場合、言語刺激が有する回避機能の減弱や主観指標の改善に対する長期的効果が認められる可能性が示唆された。
第16回内山記念賞を受賞して
第16回荒記記念賞を受賞して
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