行動医学研究
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22 巻, 1 号
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巻頭言
原著
  • 松原 耕平, 佐藤 寛, 髙橋 高人, 石川 信一, 佐藤 正二
    2016 年 22 巻 1 号 p. 3-8
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/06/23
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は、縦断調査を通じて小学校から中学校への移行期に起きる抑うつ症状の発達的変化を明らかにする ことであった。調査開始時点で小学6年生であった113名を対象とし、小学校6年生では6月(Time 1)、11月(Time 2)、翌年の2月(Time 3)に測定した。中学校進学後では7月(Time 4)に測定を実施した。質問紙に欠損のなかった88名が分析対象となった。分析の結果、対象者全体としては小学6年生から中学1年生にかけて抑うつ症状は増加するものの、小学6年生時のリスク状態によって抑うつ症状の発達的変化は異なる経過をたどることがわかった。リスクの低い子どもは一次関数的(直線的)に抑うつ症状が増加するのに対し、リスクが高い子どもは二次関数的(曲線的)に抑うつ症状が推移することが明らかにされた。これらの結果から、小学校から中学校への移行期における子どもの抑うつ症状の変化について議論された。
  • 竹内 恵美, 小川 祐子, 原 沙彩, 鈴木 伸一
    2016 年 22 巻 1 号 p. 9-17
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/06/23
    ジャーナル フリー
    【問題と目的】再発不安に関する研究の課題の1つとして、再発不安を構成する概念が定義されておらず、再発不安を抱える患者の臨床像が明らかになっていないことが挙げられる。そこで、本研究では、再発不安は再発の心配(情動および認知)と再発に関する対処行動(行動)によって構成されると定義し、不安および抑うつと関連のある再発不安の構成要因を明らかにすることを目的とした。 【方法】調査方法は、乳がん罹患経験者の患者会に登録する会員220名に対し、患者会の定期刊行物の送付物に調査票を同封して配布した。回答後は同封した返信用封筒を用いて無記名にて郵送にて返送して頂いた。調査内容は、フェイスデータ、再発についての心配尺度(Concerns about Recurrence scale Japanese version:CARS.J)本研究で概念の検討を行った再発に関する対処行動尺度、HADSであった。調査対象者は乳がんに罹患した20歳以上の女性で再発していない者と定めた。再発不安の構成概念の中で不安および抑うつとの関連がある要因を検討するため、個人属性、再発の心配(情動および認知)と対処行動を独立変数、不安および抑うつそれぞれを従属変数とした階層的重回帰分析を行った。 【結果】不安においては、診断からの経過年数、再発の心配の認知要因、生活時間の充実において関連が示された(診断からの経過期間:β=0.25、 p<0.05; 認知:β=0.41、p<0.01; 生活時間の充実:β=.0.44、p<0.01)。一方、抑うつにおいては、認知、生活時間の充実、再発リスクの回避に有意な関連が認められた(認知:β=0.28、p<0.05;生活時間の充実:β=.0.75、p<0.01;再発リスクの回避:β=0.32、p<0.05)。【考察】本研究の結果により、不安および抑うつと関連する再発不安の構成要因を明らかにし、再発不安を抱える患者の臨床像を明らかにした。乳がんサバイバーは10年以上経過した後も再発に関する様々な心配事を抱え、気晴らしになる時間を取り入れることができず不安が増悪している可能性が示された。さらに、再発のリスクを避ける行動を順守し続けて、日々の活動が制限され、抑うつ的になっている可能性も示唆された。
  • 今 法子, 藤本 修平, 中山 健夫
    2016 年 22 巻 1 号 p. 18-24
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/06/23
    ジャーナル フリー
    医療上の治療方針の決定やその評価の際に、患者の価値観への配慮は不可欠である。診療上で、患者の価値観を尊重して合意を形成する方法に、Informed Consent(IC)とShared decision making(SDM)がある。両者は患者と医療者のコミュニケーションに基づくという点で共通だが、SDMは意思決定過程を共有することが重視される。しかし、両者が混同され、SDMのもつ本来の意義が明確にされていない場合も少なくない。そこで、リハビリテーション分野の論文で、ICに対する言及とSDMの定義を比較することで、SDMの意義を明確にすることを目的に文献レビューを実施した。文献の検索には、7つのデータベース(MEDLINEのPubMed、 Cochrane database、 Web of Science、Physiotherapy Evidence Database(PEDro)、Occupational Therapy Systematic Evaluation of Evidence(OT seeker)、Cumulative Index to Nursing and Allied Health Literature(CINAHL)、医中誌Web(医中誌)を用いた。検索式は、ICをタイトルに含み、リハビリテーションの語を本文中に含む文献(英文・和文)とした。データ検索日は、2014年10月31日とし、その時点で各データベースの最新の文献までを対象とした。包含基準は、1)全文が入手可能であること、2)記載言語が英語または日本語であること、3)原著論文であることとした。除外基準は、1)総説、レビュー論文、症例報告、レター論文、会議録であること、2)ICについての記載がないこと、3)研究倫理についての内容であることとした。対象文献に記載されたICの定義にCharlesの示すSDMの必須4要素1)少なくとも医師と患者が参加する、2)医師と患者が情報を共有する、3)医師と患者が希望の治療について同意を形成するステップをふむ、4)医師と患者が実施する治療についての合意に達するが含まれているか否かを2名の評価者が独立に評価した。ICの定義にSDMのどの側面が含まれているかを検討するために、それぞれの項目が含まれる数とその割合、ならびにどの項目が含まれていたかを記述した。データベースの検索により、65件の文献が抽出された。そのうち、包含基準を満たした論文は54件であり、除外基準に従い選択をした結果、9件が選択されたこの中にSDMの言葉を含む文献はなかった。ICの定義にSDMの必須4要素のいずれかが含まれているか評価した結果、全ての文献で1)少なくとも医師と患者が参加すること、が含まれた。2)医師と患者が情報を共有すること、が含まれた文献は6件(67%)、3)両者が希望の治療について同意を形成するステップをふむこと、が含まれた文献は2件(22%)、4)実施する治療についての合意に達すること、が含まれた文献は2件(22%)であった。この9件のうち、4要素全てを含む論文は1件(11%)、3要素を含む論文は2件(22%)、2つを含む論文は3件(33%)、1つのみ含む論文は3件(33%)であった。ICを主題とし、SDMの言葉は含んでいないにもかかわらず、1/3の文献でSDMの必須4要素のうち3要素以上を含んでおり、両者の明確に使い分けられていないことが示唆された。
第17回内山記念賞を受賞して
第17回荒記記念賞を受賞して
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国際学会報告
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