行動医学研究
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22 巻, 2 号
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巻頭言
総説
  • 中尾 睦宏
    2016 年22 巻2 号 p. 55-56
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/06/23
    ジャーナル フリー
  • 松澤 大輔
    2016 年22 巻2 号 p. 57-64
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/06/23
    ジャーナル フリー
    遺伝子DNAが出生後も環境と生体との相互作用によるエピジェネティックな修飾を受けて発現調節されることが注目されている。DNAメチル化はその一つであり、脳内神経細胞のDNAメチル化も様々な外部刺激により後天的に変化がもたらされる。近年では精神疾患においてもその影響を示唆する研究が相次いでいるが、不安や恐怖の記憶が症状に関わるストレス関連精神疾患ではエピジェネティックな現象の関与について現在でも知見が少ない。本稿では、ストレス関連精神疾患で発症脆弱性や治療抵抗性を示す背景としてのDNAメチル化の関与を、筆者の教室で得られた結果を紹介しながら論じたい。精神疾患におけるエピジェネティックな機構は、ストレス応答の変化など獲得した行動の次世代への継承にも役割を果たしている可能性もあり、今後の研究結果の蓄積が待たれている。
  • 鹿野 理子
    2016 年22 巻2 号 p. 65-70
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/06/23
    ジャーナル フリー
    アレキシサイミア(失感情症)は、シフネオスが古典的心身症患者の臨床観察から、心身症患者にみられる性格特性として提唱した概念である。アレキシサイミア傾向者は、情動の認識や表現ができず、情動を介したコミュニケーションが不得手で、情動体験を言語などの象徴化機能を通じて表現できない。そのため、しばしば心理療法が成立せずに治療が難渋する。アレキシサイミアの問題は情動制御の困難さにあるとされ、心身症のみならず、様々な精神疾患、死亡率や心臓死率にも関連することが報告されたが、情動制御が身体症状に関連するメカニズムは十分に解明されてはいない。過敏性腸症候群は、器質的所見がないものの、便通異常に伴う腹痛を慢性的に示す症候群で、ストレスがその発症や症状の増悪に影響する。最もよく見られる典型的な心身症のひとつである。過敏性腸症候群においてもアレキシサイミア傾向との関連が報告されている。アレキシサイミアでは特に陰性感情を調整することができずに、陰性情動に伴う身体的過覚醒の状態、自律神経系、および神経内分泌反応が亢進し、それらが身体症状の発症、および増悪因子となると推測されている。これまでのアレキシサイミア研究では、疫学研究はアレキシサイミアと心身症を含む様々な疾患群との関連を示し、神経生理学的研究、および脳科学研究はアレキシサイミアの特徴をこの仮説を支持する形で提示している。しかしながら、特に多くの神経生理学的研究では臨床症状を呈さない健常者でのアレキシサイミア傾向が高いものを対象としており、情動が身体症状に影響するメカニズムを解明するにあたり、疾患群での検討が必要である。本総説では、これまでのアレキシサイミアと過敏性腸症候群の関連を検討した先行研究を総括し、自験例を示し、過敏性腸症候群の脳腸相関の病態へのアレキシサイミア傾向の影響を考察する。
  • 服部 朝美, 宗像 正徳
    2016 年22 巻2 号 p. 71-75
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/06/23
    ジャーナル フリー
    少子高齢化に伴い、日本では労働人口が減少していく。労働人口の維持は国の存立に関わる問題であり、国家を維持するために、国民はより長く働くことが求められるようになる。一方、加齢に伴い、心血管リスクは上昇することから、高齢労働者の健康を守るために、より綿密な心血管リスク管理が必要となる。高血圧は日本人の脳・心臓疾患発症に寄与する最も重要なリスク因子であり、2010年の国民・栄養調査によると、30歳以上の男性で60%、女性で45%が高血圧と考えられる。しかしながら、血圧のコントロール率は、過去30年間、改善傾向にあるものの、男性で30%、女性で40%程度に留まっているのが現状である(高血圧治療ガイドライン2014)。一方、職業性のストレスは健康障害と関連することが示されており、特に血圧の上昇に対する影響については多くのエビデンスが蓄積されてきた。これまでの報告から、職業性のストレスは特に職場血圧の上昇と強く関連し、この関連は女性よりも男性でみられること、さらには、脳・心臓疾患発症とも関連することがわかっている。長時間労働についても心血管リスクを上昇させるとの報告があるが、両者の関連は、仕事のやりがいや裁量権といった要因によって緩衝をうける可能性がある。加齢に伴い、ストレス等に対する血圧反応が亢進する可能性があり、高齢労働者の血圧管理を考慮するうえで、量的、質的労働ストレスの考慮は重要となろう。健康で長く働いてもらうためには、十分な心血管リスク管理とストレスマネジメントの両者に配慮する必要がある。
原著
  • 島田 恭子, 島津 明人, 川上 憲人
    2016 年22 巻2 号 p. 76-84
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/06/23
    ジャーナル フリー
    本研究では、未就学児を持つ日本人の共働き夫婦496組を対象に、ワーカホリズムとパートナーの精神的健康との関連における心理社会的メカニズムを検討した。ワーカホリズムがパートナーの精神的健康に影響を及ぼす心理社会的プロセスとしては、これまでに、パートナーのワーク・ライフ・バランスの悪化(家庭役割から仕事役割への葛藤の上昇)、パートナーへの社会的支援の低下、の2つのプロセスが明らかにされてきたが、本研究では、第3のプロセスとして、パートナーとのコミュニケーションに注目した。具体的には、自己のワーカホリズムが自己の心理的ストレス反応の上昇と職務満足感の低下を導き、パートナーとのネガティブなコミュニケーションを増加させることで、パートナーの心理的ストレス反応の上昇と家庭生活満足感の低下につながることを想定した。東京都某区の保育園に児を通わせる共働き夫婦を対象に自記式質問紙による調査を行った。想定した因果関係を共分散構造分析により分析し、モデル全体の妥当性を確認後、概念間の因果係数によりモデル各部の検証を行った。その結果、仮説モデルは男女ともに支持された。すなわち自己のワーカホリズムは、自己の心理的ストレス反応の上昇および職務満足感の低下を媒介して、パートナーへのネガティブなコミュニケーションの増加につながり、さらにパートナーの心理的ストレス反応の上昇とパートナーの生活満足感の低さにつながること、これらの関連は夫から妻、妻から夫のいずれの方向にも当てはまることが明らかになった。共働き夫婦のワーカホリズムに注目し、その影響が自己からパートナーへと至る心理社会的プロセスを大規模なカップルデータを用いて検討した本研究は、ワーカホリズムおよびワーク・ライフ・バランスに関する研究と実践に重要な示唆を与えるものと考えられる。
論文紹介
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