行動療法研究
Online ISSN : 2424-2594
Print ISSN : 0910-6529
14 巻, 1 号
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  • 三原 博光
    原稿種別: 本文
    1988 年14 巻1 号 p. 1-11
    発行日: 1988/09/30
    公開日: 2019/04/06
    ジャーナル フリー
    過去,重度精神遅滞者は.彼らの知能障害が重いという理由から作業行動を学習することが出来ないと考えられてきた。ところが,今回,われわれは,そのような22歳男子の重度精神遅滞者に福祉工場で行なわれている自転車みがきの作業行動を学習させ,ある程度のみとおしを得た。手続きは以下のごとくであった。まず最初にこの重度精神遅滞者に4等分した後輪のうちの1つを充分にみがき上げるという課題を与えた。そして,この定められた箇所以外の場所をみがいたとき,言語的注意を与えた。また定められた箇所内ではあるが,すでにみがき終えている部分を何度もみがいたり,みがき残しがあったり,あるいはみがく順序を間違えたりしたときにも,言語的注意を与えた。そして,定められた箇所以外の場所で言語的注意を受けた回数,定められた箇所内で言語的注意を受けた回数,仕上げた時間をそれぞれ記録した。これらの3つの指標のベースライン期の平均値に基づいて,訓練試行終了後,正の強化子を与えた。その結果,訓練が進むにしたがい,言語的注意を受ける回数や仕上げた時間が減少し,みがき行動が形成された。訓練中,弁別行動や自己強化の行動も観察された。訓練終了後,約6ヵ月後の追跡調査は,充分にみがき行動が維持されていることを示した。訓練の結果は,作業行動の学習が不可能であると考えられていた重度精神遅滞者に自転車のみがき行動を学習させ得たことを示唆している。
  • 米村 あゆみ, 吉田 一誠
    原稿種別: 本文
    1988 年14 巻1 号 p. 12-20
    発行日: 1988/09/30
    公開日: 2019/04/06
    ジャーナル フリー
    本研究は2名の自閉症児の示す自己刺激行動と自律神経系にみられる覚醒水準との関連を検討するため,行動観察と心拍の測定を連続して数時間行なったものである。その結果以下の点が明らかになった。(1)2名の自閉症児は共に昼間覚醒時に健常者より高い心拍を示し,しかも,それは安静開眼時においても同様であった。(2)症例1では自己刺激行動が開始する前に心拍が上昇し,自己刺激行動が始まると,上昇した心拍が低下を示した。このことから,症例1にみられる自己刺激行動は自律神経系の高い覚醒水準の低減と関係していると考えられる。しかし,症例2においてはこのような関係は認められなかった。
  • 中野 敬子
    原稿種別: 本文
    1988 年14 巻1 号 p. 21-24
    発行日: 1988/09/30
    公開日: 2019/04/06
    ジャーナル フリー
    不眠症の治療に刺激統制および弛緩訓練が有効であると指摘されている。刺激統制と弛緩訓練を併用した治療が最も効果があるという仮説に基づき,多層ベースライン被験者間デザインを応用して,入眠困難症の治療効果に関する分析を行なった。多層ベースライン法を用いると,臨床経過に従って,治療効果に関する因果関係の分析が可能である。本研究の結果は刺激統制と弛緩訓練を併用した治療が入眠時間の短縮に最も効果があることを示した。対象者の入眠時間は1週間の平均が30分以内にまで短縮された。起床時の気分に関しては併用治療の効果が明らかでなかった。
  • 生月 誠, 原野 広太郎, 山口 正二
    原稿種別: 本文
    1988 年14 巻1 号 p. 25-30
    発行日: 1988/09/30
    公開日: 2019/04/06
    ジャーナル フリー
    何らかの心身症状を訴えたクライエント14名に対して,拮抗制止の訓練を行なった。拮抗反応として,右手を握るという身体運動反応を用い,さらに半睡暗示法によりこの身体運動に安静反応を結び付ける試みを行なった。その結果,1セッションの訓練で14名中9名は症状が軽減し,本訓練法の有効性が示唆された。また本訓練の過程においては,身体運動反応と安静反応の結び付きと症状の軽減とは,相互に促進的に作用するという示唆を得た。
  • 佐々木 和義
    原稿種別: 本文
    1988 年14 巻1 号 p. 31-37
    発行日: 1988/09/30
    公開日: 2019/04/06
    ジャーナル フリー
    系列行為には失敗するが,その要素的行動は十分に行える42歳の観念失行症患者に,9系列行為の要素的行動を撮った写真を提示し,それを継時的に配列することを学習させて,系列行為の正しい実行を生起させることを試みた。訓練変数は,正反応に随伴させた社会的刺激(うなつく,ほほえむ,「そうですね」と言う)と,誤反応と著しい反応停止とに随伴させた正配列の提示とであった。効果判定のために,行動間のマルチプルベースライン計画を用いた。その結果,訓練変数は配列の学習に有効であり,その学習は当該系列行為の実行に効果をもち,さらに訓練した行為の増加につれて,他の行為への般化も認められた。
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