地域理学療法学
Online ISSN : 2758-0318
4 巻, 2 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
講座
原著
  • 仲村渠 亮, 高取 克彦, 松本 大輔
    原稿種別: 原著
    2025 年 4 巻 2 号 p. 79-87
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】地域在住高齢者において日常的な銭湯利用が個人レベルのソーシャル・キャピタル(以下,SC)と関連しているか調査し,介護予防に資する通いの場としての役割の可能性を検討すること.【方法】大阪市西成区の銭湯利用者に利用頻度,目的,健康やSCに関するアンケート調査,体組成の測定を実施した.利用頻度による健康関連指標の比較と日常的な銭湯利用がSC強度への関連因子となるか検討した.【結果】銭湯の利用頻度による群間比較では,利用頻度が高い群は低い群に比較して,地域への信頼度,近隣住民との交流,SC強度が有意に高かった.ロジスティック回帰分析の結果,銭湯利用頻度は地域への信頼(オッズ比4.9,95%信頼区間 1.57-15.83,p<0.01),近隣住民との交流(オッズ比3.4,95%信頼区間 1.37-8.42,p<0.01)と独立して関連していた.【結論】日常的な銭湯利用は地域のSC醸成にポジティブな影響を与え,介護予防に資する通いの場としての役割を有している可能性がある.

  • 只石 朋仁, 長谷川 純子, 鈴木 英樹
    原稿種別: 原著
    2025 年 4 巻 2 号 p. 88-98
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】農村地域で暮らす高齢者を対象に,手段的日常生活活動(Instrumental Activities of Daily Living, IADL)の実施状況と客観的身体活動量の性別および骨格筋量低下者の特性について明らかにする.【方法】65歳以上の高齢者55名を対象とし,AWGS(Asian Working Group for Sarcopenia)2019の基準をもとに骨格筋量低下者を選別した.IADLは改訂版FAI(Frenchay Activites Index),身体活動量は3軸加速度センサー付き活動計を使用し,計測は非積雪期に実施した.男女および骨格筋量で区分した2群での比較を実施した.【結果】女性は男性と比べ屋内家事の実行状況や低強度の活動量(Light-Intensity Physical Activity, LPA)が多く,LPAの中でもより強度の強いHLPA(High Light-Intensity Physical Activity)が有意に多かった.骨格筋量が維持できている高齢者の特徴として男性ではFAIの仕事,10分以上持続する中高強度身体活動量(Moderate to Vigorous Physical Activity, MVPA)の実施時間,回数が多く,女性ではFAIの屋外家事,10分未満の細切れで実施するLPAの実施回数が多かった.【結論】高齢者の健康的な生活を支援するにあたり,性別による生活行動や活動強度別の身体活動の違いを考慮する必要がある.

  • 松藤 直子, 松藤 勝太, 芦田 征丈, 西村 眞理
    原稿種別: 原著
    2025 年 4 巻 2 号 p. 99-105
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】本研究の目的は,介護老人保健施設入所者におけるトイレ動作の介助量と膝伸展筋力が関連するかを検証し,トイレ動作が一部介助で行える膝伸展筋力を明らかにすることである.【方法】デザインは横断研究で,対象は介護老人保健施設に入所中の利用者とした.その対象者を,Barthel Indexのトイレ動作の介助量により一部介助群と全介助群に群分けした.トイレ動作の介助量に膝伸展筋力が関連するのか,およびトイレ動作が一部介助で可能な膝伸展筋力のカットオフ値をロジスティック回帰分析で検証した.【結果】解析対象は117人(一部介助群82人,全介助群35人)であった.トイレ動作を一部介助で可能な膝伸展筋力のカットオフ値は 0.16 kgf/kgであった.多変量ロジスティック回帰分析では,膝伸展筋力のカットオフ値は年齢や性別とは独立してトイレ動作の介助量と有意に関連していた.【結論】介護老人保健施設入所者のトイレ動作の介助量と膝伸展筋力は関連しており,一部介助で可能な膝伸展筋力のカットオフ値は 0.16 kgf/kgであった.このカットオフ値を目標に膝伸展筋力を強化することで,トイレ動作の介助量を軽減できる可能性が示唆された.

  • ―横断的研究―
    横山 広樹, 玉置 昌孝
    原稿種別: 原著
    2025 年 4 巻 2 号 p. 106-113
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】地域に在住している要支援,要介護者の屋外歩行能力差の特性を調査した.【方法】当院通所リハビリテーションを利用している,Functional Ambulation Classification of the Hospital at Saguntoで3以上の屋外歩行が可能な48名を解析対象とした.近隣歩行群,地域内歩行群に群分けし,屋外歩行能力差の特性を比較した.評価項目は快適歩行速度(m/s),Timed Up & Go test(以下,TUG),Quality of Community Integration Questionnaire(以下,QCIQ)の社会統合項目,Walk scoreを用いた.【結果】近隣歩行群は29名,地域内歩行群は19名となり,快適歩行速度,TUG,QCIQの社会統合項目の下位項目である買い物の頻度,金銭管理で両群間に有意差を認めた.【結論】屋外歩行能力差に歩行速度やTUG,家庭外の活動で違いがあることが示唆された.

  • ―予備的研究―
    木村 大輔, 岸本 智也, 中谷 亮誠, 兵藤 史武
    原稿種別: 原著
    2025 年 4 巻 2 号 p. 114-121
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】本研究は,人工股関節,膝関節置換術後の外来患者99名を対象に,遠隔リハビリテーション(以下,遠隔リハ)の介入効果を予備的に検証するものである.【方法】傾向スコアマッチングにより,遠隔リハ介入群(19名)とコントロール群(19名)を選出し比較分析を実施した.【結果】遠隔リハ介入群はコントロール群と比較し,6分間歩行テスト(6MWT)で有意な改善を示した.また前後比較において遠隔リハ介入群では,Pain Self-Efficacy Questionnaire(PSEQ)とWestern Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis Index(WOMAC)の機能および疼痛項目においても有意な改善が観察された.【結論】遠隔リハは身体機能の向上だけではなく,心理的要因であるPSEQにもポジティブな影響を与え,退院後の患者のサポート手段として有効である可能性が示唆された.

  • 成田 亜希, 安井 稚子, 坂口 史紘, 山川 智之
    原稿種別: 原著
    2025 年 4 巻 2 号 p. 122-127
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】インクルーシブ教育の推進に伴い,理学療法士を中心にリハビリテーション専門職が外部専門家として,どの程度,地域の公立小・中学校へ巡回訪問しているのか,その内容も含め調査したので報告する.【方法】大阪府下の教育委員会を対象に地域校への理学療法士等巡回訪問事業実施の有無と内容を調査した.【結果】理学療法士巡回訪問事業を実施しているのは29.3%であり,勤務形態は83.3%が非常勤職員であった.対象児は主として肢体不自由児であり,発達障がい児を対象としている市町村は33.3%であった.内容は,自立活動の時間を利用して,医療行為,生活指導,教員や介助員への指導,相談業務を行っていた.【考察】理学療法士が教育委員会直下で活動することには,予算の問題や必要性の認識の不足があることが窺えた.また,理学療法士による発達障がい児への関わりも広く知らせていく必要性が鑑みられた.

  • 末永 拓也, 髙塚 梨沙, 宮副 孝茂, 松本 雄次, 松永 成美, 釜﨑 大志郎, 峰松 宏弥, 大田尾 浩
    原稿種別: 原著
    2025 年 4 巻 2 号 p. 128-133
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】地域包括ケア病棟患者の退院時の日常生活活動(Activities of daily living: ADL)に影響する因子を検討すること.【方法】地域包括ケア病棟患者86名(平均年齢84±9歳,男性43%)を対象とした.ADLはBarthel Index(BI)を評価した.退院時BIを従属変数,握力,膝伸展筋力,Short Physical Performance Battery(SPPB),改訂長谷川式認知症スケール(Hasegawa Dementia rating Scale-Revised: HDS-R)を独立変数とした重回帰分析で検討した.【結果】退院時BIには,SPPB[標準化偏回帰係数:0.32(95%CI: 0.31-3.53),p=0.02],HDS-R[0.36(95%CI: 0.34-1.77),p<0.01]が影響することがわかった.【結論】地域包括ケア病棟患者の退院時BIには,入院時の下肢機能,認知機能が影響する.

  • 福尾 実人
    原稿種別: 原著
    2025 年 4 巻 2 号 p. 134-142
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】本研究では,女性高齢患者のフレイルとサルコペニアおよび身体各部位筋量との関連性を明らかにすることを目的とした.【方法】対象は65歳以上の地域包括ケア病棟を退院する運動器疾患女性高齢患者54名である.フレイルの評価には基本チェックリストを用い,その総合点から7点以下を非フレイル群,8点以上をフレイル群に分類した.身体4部位の筋厚に加え,サルコペニアの評価としてSARC-Fおよび握力とBarthel Index(BI)を測定した.統計解析は基本チェックリスト総合点とサルコペニアおよび身体各部位筋量との関連する因子を明らかにするためStepwise法による重回帰分析を行なった.【結果】フレイル群は非フレイル群よりも手段的・社会的生活活動,身体機能,口腔機能,閉じこもり,認知機能,抑うつ気分の得点が高かった.また,基本チェックリスト総合点とSARC-F,下腿後部の筋量は有意な関連を認めた.【結論】女性フレイル高齢患者群においてはサルコペニアの可能性および下腿後部の筋量低下が関連することが示唆された.

症例・事例報告
  • ~在宅サービス利用に抵抗感を示した一事例の振り返り~
    古川 博章, 石垣 智也, 知花 朝恒, 廣安 暁, 池田 耕二
    原稿種別: 症例・事例報告
    2025 年 4 巻 2 号 p. 143-150
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】在宅サービスの利用を促すも家族(主介護者)の抵抗感から導入が遅れ,結果的に介護負担感の増加とQOLが低下した事例の振り返りから,在宅介護の継続に求められる介護者支援の在り方を再考すること.【事例紹介】事例はALSを発症した70歳代女性(A氏)の主介護者だった夫である.介護負担感を減らすためにサービス利用量を増やすことを提案したが,主介護者は利用を拒否していた.【経過】介護方法の指導などの介入に加え,主介護者の介護に対する想いを傾聴し言語化を促した.経過とともに主介護者から介護負担感の増悪を示唆する発言が増え,徐々に在宅サービスを導入するようになるも,他者の出入りに対するストレスが増えた.主介護者の介護負担感が限界を迎え在宅療養継続が困難となり,医療機関での療養となり介入は終了した.【結論】傾聴は介護負担感の軽減に一定の効果を有するが,全てではないため,事前に本人・家族(主介護者)と生活の変化に対する計画を整備しておく必要があると考えられた.

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