地域理学療法学
Online ISSN : 2758-0318
4 巻, 1 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
原著
  • 長澤 康弘, 石井 香織, 柴田 愛, 岡 浩一朗
    原稿種別: 原著
    2024 年 4 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 2024/09/30
    公開日: 2024/10/15
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】慢性疼痛を有する高齢者の座位行動および中高強度身体活動(moderate-intensity to vigorous-intensity physical activity:以下,MVPA)に関連する要因として,疼痛強度,疼痛回避,身体機能低下,生活障害との関係について検討した.【方法】対象は腰痛や膝痛によって通院する高齢者120名とした.調査内容は座位行動,MVPA,疼痛強度,疼痛回避,生活障害,身体機能,疼痛関連および社会人口学的変数であった.解析は各要因の相関関係と先行研究を基に作成した仮説モデルを共分散構造分析によって検証した.【結果】仮説モデルでは疼痛強度が座位行動とMVPAに関連すると予測したが,修正モデルにおいて疼痛強度は疼痛回避と生活障害に関連した後,身体機能低下を介して座位行動とMVPAに関連した.【結論】長時間の座位行動や身体不活動には疼痛強度と疼痛回避が根本の原因になることが分かった.

  • 加藤 剛平, 新井 智之, 森田 泰裕, 井上 優, 平上 尚吾, 藤田 博曉
    原稿種別: Original Articles
    2024 年 4 巻 1 号 p. 10-17
    発行日: 2024/09/30
    公開日: 2024/10/15
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】地域在住高齢者の社会関連性の多寡に外出頻度,建造環境因子が関連するのか検討した.【方法】2008年~2011年に地域在住特定高齢者23名とシルバー人材センター登録者50名を対象とし,無効回答者を除いた72名を分析対象者とした.自記式質問票を用いて性別,年齢,社会関連性(社会関連性指標),外出頻度,構造環境(Home And Community Environment 日本語版)の情報を得た.市区町村レベルの可住地面積 1 km2 当たり人口をデータに加えた.社会関連性指標の合計点を従属変数,外出頻度およびその他変数を1次レベル,可住地面積 1 km2 当たり人口を2次レベルの独立変数として多変量マルチレベル重回帰モデルを構築して分析した.【結果】平均年齢(標準偏差)は71.7(5.35)歳であった.社会関連性指標に外出頻度(β=0.75,p=0.016)と近隣に安全な公園や散歩道があることが正の関連を示した(β=1.69,p=0.003).【結論】外出頻度,近隣の安全な公園や散歩道は地域在住高齢者の社会関連性の多寡に関連することが示唆された.

  • 大森 圭貢, 箱山 瞳, 植田 拓也, 山上 徹也, 安齋紗保理 , 柴 喜崇
    原稿種別: Original Articles
    2024 年 4 巻 1 号 p. 18-26
    発行日: 2024/09/30
    公開日: 2024/10/15
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】加齢関連認知機能低下者の日中の眠気の特徴は,地域生活を継続する際の支援情報として活用できる.本研究目的は,地域在住高齢加齢関連認知機能低下者における夜間睡眠と日中の眠気の特徴を明らかにすることである.【方法】認知症予防プログラムに参加した65歳以上の者を対象とした.夜間の睡眠と日中の眠気は,Pittsburgh Sleep Quality Index日本語版(PSQI-J)とEpworth Sleepiness Scale日本語版(JESS)で評価した.認知機能はファイブコグで評価し,認知症が疑われる者,非加齢関連認知機能低下者(非低下者),加齢関連認知機能低下者(低下者)に分類した.【結果】認知症が疑われる者,睡眠薬服用者,抑うつ傾向またはうつ病の者を除いた45名を分析した.JESSスコアの中央値は非低下者で6.0点,低下者で4.0点であり,低下者で有意に低かった.平均PSQI-Jスコアは両者間に有意差はなかった.【結論】地域在住高齢加齢関連認知機能低下者の日中の眠気は,非低下者よりも低く,日中の活動への問題は少ない.

  • ―予備的調査―
    上月 渉, 上田 哲也, 村上 達典, 玄 安季, 樋口 由美
    原稿種別: 原著
    2024 年 4 巻 1 号 p. 27-34
    発行日: 2024/09/30
    公開日: 2024/10/15
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】入院中の患者家族に対する,介助不安感(身体介助への不安感)評価の信頼性および妥当性を検証することを目的とした.【方法】対象は回復期リハビリテーション病院に入院した患者家族36名とした.介助不安感は,Functional Independence Measure (以下,FIM) 運動項目に基づく患者のactivities of daily living (以下,ADL) に対する介助への不安感を評価した.信頼性の検証には検者内信頼性と内的整合性を確認し,妥当性の検証には介助不安感と家族の心身機能,患者のADL評価との関連性を調査した.【結果】介助不安感の評価票は高い検者内信頼性(級内相関係数(1,2)=0.898)と内的整合性(α=0.959)を有することが確認された.妥当性の検証では,介助不安感は家族の不安(r=0.378),身体的Quality of Life (以下,QOL) (r=-0.335)と有意な弱い相関を示し,患者のFIM運動項目(r=-0.460),FIM認知項目(r=-0.531)と有意な中等度の相関関係を認めた.【結論】入院中の患者家族に対する介助不安感評価は良好な信頼性を有し,家族の不安やQOL,患者の生活機能との妥当性が確認された.

  • 木須 達哉, 松下 武矢, 永田 春輔, 西岡 心大, 松坂 誠應
    原稿種別: 原著
    2024 年 4 巻 1 号 p. 35-43
    発行日: 2024/09/30
    公開日: 2024/10/15
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】訪問リハビリテーション(以下,訪問リハ)利用者の低栄養とFunctional Independence Measure (以下,FIM) 利得および入院リスクとの関連を調査することを目的とした.【方法】対象をMini Nutritional Assessment -Short Form (以下,MNA-SF) によって低栄養群,低栄養リスク群,良好群に分類した.FIM利得と入院の有無に対する低栄養の影響を検討するためにロジスティック回帰分析を行った.【結果】対象241名(年齢中央値81歳,女性61%)のうち,74%が低栄養群もしくは低栄養リスク群であった.ロジスティック回帰分析でMNA-SFは,FIM利得との関連を認めなかったが,入院の有無には独立して関連を認めた(オッズ比=0.815,95%信頼区間=0.716-0.927).【結論】訪問リハを利用する低栄養者は入院リスクが高いことが示唆された.

  • ―通所リハビリテーション利用者における検討―
    佐藤 衛, 川口 徹
    原稿種別: 原著
    2024 年 4 巻 1 号 p. 44-51
    発行日: 2024/09/30
    公開日: 2024/10/15
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】在宅要支援・要介護高齢者(以下,要介護者)の生活空間が主介護者の介護負担に及ぼす影響を明らかにすること.【方法】要介護者および主介護者87組を対象とした.Zarit介護負担尺度の短縮版(以下,J-ZBI_8)を用いて,13点未満の低負担群と13点以上の高負担群に分類し,主介護者の年齢,性別で傾向スコアマッチングを行った計60組を分析対象とした.要介護者の認知機能,Barthel indexを評価した.生活空間はHome-based Life Space Assessmentを用い,活動状況(以下,Hb-CS)と補助具を使用した最大範囲(以下,Hb-E)を分析した.低負担を0,高負担を1の従属変数とし,Hb-CSを独立変数としたロジスティック回帰分析を行った.【結果】低負担群は高負担群に比べ,認知機能,Hb-CS,Hb-Eが有意に高かった.回帰分析の結果,Hb-CS(オッズ比:0.973,95%信頼区間:0.944-0.999)は介護負担の高低に有意に関連していた.【結論】主介護者の介護負担の重度化を予防するには,要介護者の生活空間を維持することが重要と考えられた.

  • 小林 雄斗, 村山 明彦, 臼田 滋
    原稿種別: 原著
    2024 年 4 巻 1 号 p. 52-61
    発行日: 2024/09/30
    公開日: 2024/10/15
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】従前より,美容師と理学療法士の協働の可能性が指摘されている.しかし,関連する先行研究は非常に少なく,参考となる知見が不足している.そこで,本研究では,具体的な協働内容につなげるための示唆を得ることを目的とした.【方法】群馬県下の美容師1,010名を対象に,高齢顧客に対する意識や現状に関する質問紙調査を実施した.そして,勤務する地域特性による回答結果の差異を確認したうえで,基本属性や回答結果を比較することとした.【結果】261名から回答があった(回収率25.8%).対象者の回答において,勤務する地域による差は認められなかったが,非高齢者群と高齢者群では回答に有意差が認められた.社会的資源の認知度や身体的介助・工夫の必要頻度については,高齢者群の方が高かった.一方,非高齢者群の方が,顧客の満足度に着目しているという結果が得られた.【結論】今回の結果から,群馬県下で美容師との協働を展開していく際には,地域特性よりも美容師の年齢に合わせたニーズに寄り添うことが奏功する可能性が示唆された.

症例・事例報告
  • 芝 寿実子, 岩原 和孝, 坂田 美由紀, 谷口 弘光, 辻本 洋平, 中前 昌也, 小池 有美, 勝田 将裕
    原稿種別: 症例・事例報告
    2024 年 4 巻 1 号 p. 62-69
    発行日: 2024/09/30
    公開日: 2024/10/15
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】コロナ禍を契機に歩行困難となった,両膝全人工膝関節置換術,高血圧,糖尿病,心不全による多疾患併存の高齢肥満症例を経験した.短時間滞在型の通所リハビリテーション(短時間リハ)で,積極的なサービスを提供した結果,単独での外出獲得に至ったため報告を行う.【症例】70代後半の女性.コロナ禍で外出機会が減少し,歩行困難が出現,転倒を繰り返したために短時間リハに通所となる.動作時息切れが顕著で,一本杖歩行は 3 m程度で疲労を訴えた.【治療介入】週2日,1回2時間で,6ヶ月間介入した.セラピストは各セッションで約20分間の個別対応を提供した.歩行獲得を目的として,減量,運動耐容能の向上,下肢筋力の増強,歩行練習,患者教育を提供した.【結果】6.7 kgの減量に成功し,屋内独歩を獲得,205 mまで歩行距離が延長し,一本杖で外出可能となった.【結論】利用者の個別性に合わせた短時間リハの介入は,複数の慢性疾患を有する予備能力の低い高齢者に対して,安全にADLの拡大に寄与することを示した.

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