【目的】ポジティブな心理的因子や社会的要因が、生活習慣病のリスク低下と関連することが明らかになっている。「感謝」はポジティブ心理の中心であり、社会的関与とも密接に関連するが、感謝と生活習慣病との関連について検討した研究はほとんどない。そこで本研究では、日本人地域住民を対象に、「感謝の頻度」と生活習慣病との関連を検討する。
【方法】JAGES2019年度調査に参加した要介護を受けていない65歳以上の地域在住高齢者23,554人のうち、生活習慣病に関する情報を得られた22,400人を解析対象とした。
感謝の頻度は「日常生活の中で周囲の人に“ありがとう”という機会はどのくらいありますか」という質問への回答(1日に数回、1日に1回、1週間に数回、ほとんどない)の4カテゴリとした。生活習慣病は、自己記入式質問票により、高血圧、糖尿病、脂質異常、うつ、脳卒中、心臓病、がん、認知症、呼吸器疾患、消化器疾患の治療中または後遺症のある既往を把握した。感謝の頻度が「1日に数回」の人に比較して頻度の低い群の生活習慣病の性・年齢調整オッズ比および多変量調整オッズ比(95%信頼区間)をロジスティック回帰分析にて算出した。同様の解析を男女別、人に会う頻度別に実施した。共変量は、性、年齢、BMI、飲酒、喫煙習慣、身体活動であった。
【結果】感謝の頻度が「1日数回」の人は全体の32%であった。その人と比較して、「ほとんどない」人では生活習慣病の有病割合が高く、多変量調整オッズ比(95%信頼区間)(傾向性のp値)は、高血圧1.07(1.00-1.15)(p=0.04)、糖尿病1.10(1.00-1.22)(p=0.08)、うつ2.49(1.65-3.77)(p<0.01)、認知症1.65(1.02-2.66)(p<0.01)、呼吸器疾患1.16(1.00-1.36)(p=0.16)、消化器疾患1.24(1.06-1.44)(p<0.01)であった。がんは有病割合が低かった0.75(0.63-0.90)(p<0.01)。男女別では、男性でうつ、認知症、呼吸器、消化器疾患のオッズ比が高く、女性では糖尿病とうつが高かった。さらに、「人に頻繁に会う群」では、特に感謝の頻度が低いほど高血圧、うつ、認知症などの有病割合が高く、がんは低かった。
【結論】感謝の頻度が低い人ほど生活習慣病の有病割合が高いことを初めて明らかにした。これらの関連は、男性および人と会う頻度の高い人でより顕著であった。今後は、縦断研究や介入研究によって、さらに詳細に検討する必要がある。
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