Chlamydia pneumoniae感染と冠動脈硬化症 (CAD) との関連が注目されている。今回我々は、本邦における血清クラミジア抗体価とCADおよび心筋梗塞症 (MI) との関連につき検討した。
対象は、当院で冠動脈造影検査を施行し主要冠動脈に有意狭窄を有する671症例 (CAD群、平均年齢62.9歳) と、健常人385例 (Control群、平均年齢54-9歳) の計1,056例とした。さらにクラミジア感染とMIとの関連を検討するため、CAD群を急性心筋梗塞症群 (AMI群、174例) 、陳旧性心筋梗塞症群 (OMI群、174例) 、MIの既往の無い慢性冠動脈硬化症群 (CCHD群、323例) の三群に分割した。血清クラミジア抗体は、クラミジア属リボ多糖体抗原を用いたELISAキットによりIgAおよびIgG抗体を測定した。
CAD群は、Control群と比較しIgA抗体陽性率 (25.5vs.16.1%、p<0.0005) 、IgG抗体陽性率 (55.Ovs. 44.4%、P<0.001) とも有意に高率であった!AMI群 (IgA : 28.7%P<0.001, IgG : 60.9%P<0.0005) およびOMI群 (IgA : 33.3%p<0.00005, IgG : 62.1% p<0.0005) における両抗体陽性率は、Control群と比較し有意に高率であった。CCHD群における両抗体陽性率は、Control群と比較し有意差を認めなかった (IgA : 19.5%p=0.2, IgG : 46.8%p=0.5) 。さらに年齢、性別、bodymassindex、喫煙歴、高血圧、糖尿病、総コレステロール、HDLコレステロールを独立変数とする多重ロジスティック回帰分析を行った。CADに対するオッズ比は、IgA抗体陽性1.62 (95%confidence interval [CI] 1.02-2.58、P<0.05) 、IgG抗体陽性1.0l (95%CI0.70-1.45、P=0.6) であった。MIに対するオッズ比は、AMI群とControl群との比較では、IgA抗体陽性2.37 (95%CI 1.27-4.44、P<0.01) 、IgG抗体陽性1.40 (95%CI 0.82-2.38、p=0.2) であり、OMI群とControlとの比較では、IgA抗体陽性2.27 (95%CI 1.20-4.29、P<0.05) 、IgG抗体陽性1.46 (95%CI0.86-2.49、p=0.16) であった。
今回の検討から、本邦においても血清クラミジア抗体価とCADとの関連を認めた。しかしCAD群をMIの有無で分割し検討したところ、AMI群やOMI群とは関連を示したがMIの既往の無いCCHD群では関連を認めなかったことや、多変量解析では持続感染の指標とされるIgA抗体陽性がMIと関連を示したことから、クラミジア持続感染がMIの発症と関連する可能性が示唆された。
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