目的 : 福岡県久山町の地域住民を対象とした断面調査において、食事性因子が血清低比重リポ蛋白コレステロール (LDLC) レベルに及ぼす影響について検討した。
方法 : 対象は、1988年の久山町住民健診において食事調査を受けた40-79歳の2,445名 (男性1,038名、女性1,407名) である。高LDLC血症 (LDLC≧140mg/dl) の有無で対象者を2群に分け、両群問で食事性因子を比較した。
結果 : 両群間で食事性因子を年齢調整して比べると、高LDLC血症群は、男性では脂質、カルシウム、リン、カリウム、ビタミンB
2、パン、菓子、油脂、淡色野菜、乳の摂取量が有意に多く、女性では動物性たん白質、脂質、動物性脂質、カルシウム、ビタミンB
2、パン、砂糖、乳の摂取量が有意に多く、ナトリウム、米の摂取量が有意に少なかった。年齢、bodymassindex、空腹時血糖値、飲酒、喫煙、運動習慣の非食事性因子を調整した多変量解析で高LDLC血症の関連因子を検討すると、男性では、脂質 (1標準偏差上昇のオッズ比1.21、95%信頼区間1.06-1.39) 、油脂 (1.22、1.06-1.39) 、女性では動物性たんぱく質 (1.15、1.02-1.29) 、ナトリウム (0.86、0.77-0.96), 乳 (1.18、1.05-1.34) 、砂糖 (1.13、1.01-1.27) 、米 (0.88、0.78-0.99) が有意な関連因子となった。年齢調整したエネルギー比率を比較すると、高LDLC血症群は正常群に比べて、男性ではたんぱく質エネルギー比と脂質エネルギー比が有意に高く、糖質エネルギー比および糖質/脂質比が有意に低かった。女性では動物性たんぱく質比が有意に高かった。また、高LDLC血症群では、男女で飽和脂肪酸 (S) と一価不飽和脂肪酸の摂取量が有意に多く、さらに、女性ではコレステロール、男性では多価不飽和脂肪酸 (P) の摂取量が有意に多かった。女性では高LDLC血症群でP/S比が有意に低かった。
結論 : 男性では脂質の摂取量が、女性では脂質の量とともに脂肪酸組成や食事性コレステロールなど脂質の質が血清LDLCレベルの上昇に影響を及ぼしていることが示唆された。
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