本稿の目的は,中東欧・旧ソ連諸国における企業所有構造の集中化と経営成果との関係を分析した研究成果のメタ分析を試みることにより,移行経済研究は,この問題領域において,総体として,如何なる結論に到達しているのかを検証することにある.先行研究64点から抽出した1,376推定結果のメタ統合は,有意に正な所有集中効果の存在を示唆した.但し,その統合効果サイズは,微弱といえる水準に過ぎない.その背景要因を特定すべく行ったメタ回帰分析は,研究対象産業,推定期間,所有変数の設計,実証データの情報源,推定量,並びに制御変数の選択に顕れた差異が,先行研究の実証結果に,体系的かつ重大な影響を及ぼしたことを明らかにした.更に,筆者らは,当該研究分野においては,公表バイアスの疑いが非常に強く,恐らくはこの問題の深刻さ故に,既存研究の中に,所有集中効果に関する正真正銘の証拠が存在しないことを確認した.真の効果の特定を目指して,更なる実証研究の蓄積が望まれる.
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