中央と地方の間の財政関係について,ロシア,中国,インドというユーラシアの3大国の比較を行った.その結果として,ロシアでは最も中央集権的な財政構造となっているが,財政再分配機能は最も低いこと,中国では最も地方分権的な財政構造となっており,中央から地方への移転が最も大きな役割を果たしているが,地方財政の自立性が最も高いこと,インドでは地方の自主財源が少なく,地方の自立性が低いことなどを明らかにした.
本研究は,石油価格の上昇がもたらすマクロ経済への影響を,石油輸出国であるロシアと石油輸入国である中国とインドのユーラシア地域大国3カ国で定量的に比較した.ベクトル自己回帰(VAR)モデルを用いた分析結果によると,石油価格ショックと石油への投機的需要ショックの2つのケースで,中国とロシアで対照的な結果が得られた.すなわち,中国ではこれらのショックは物価を高めるのに対して,ロシアでは生産を拡大させる.また,世界景気のプラスのショックを意味する石油需要ショックは,中国においてもロシアにおいても生産を拡大させる.ロシアでは,それはさらに物価も高める.これに対して,インドでは石油ショックについて統計的に有意な結果が得られなかった.
世界の主要な鉄鋼生産国のうち,中国,日本,ロシアは貿易において鉄鋼に比較優位がある.本稿では中国とロシアの鉄鋼業に焦点を当てて,その貿易構造,産業組織,設備の状況を日本などとも比較することによって,なぜこの両国の鉄鋼業が比較優位を持っているのかを解明した.競争力の源泉はロシア鉄鋼業の場合は豊富な資源,中国鉄鋼業の場合は投資コストを抑制する民営鉄鋼メーカーの経営戦略にあることを明らかにした.
本研究は,タジキスタンにおける親の出稼ぎ労働移民が子供の教育投資に与える効果を,実証的に分析する.労働移民は所得向上を通して教育投資を促進しうる一方,教育投資を抑制する様々な副次的な効果も持ちうる.分析結果は,移民の内生性を考慮した上で,親の労働移民が女子の後期中等教育就学を抑制する一方,男子に対しては影響を持たないことを示した.このことは労働移民送出が教育の男女間格差を広げていることを示唆する.
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