本稿は,この米中金融デカップリングの可能性という問題を背景に置きつつ,中国とロシアとの金融的接近は,どの程度,どのような形式で進展しうるのかを検討しようとするものである.いま,中国とロシアとには国際金融に関し,利害の一致が見られる.では,中国資本のロシアへの流入,中ロの金融的接近は進展しているのか.マクロのデータを見る限り,中央銀行の金・外貨準備の領域以外では,そのような動きはまだ見られない.
自由貿易空間の形成は,人の移動の自由を拡大させてきたが,Brexitに見られるように,現在,自由貿易空間において擁護されてきた人の移動の自由が,危機に瀕している.本稿は,多国間自由貿易空間としてのEU,EAEU,WTOに着目し,人の移動の自由を支える統治性,移動主体,管理の観点から,それぞれの自由貿易空間のあり方を検討し,新自由主義的統治性が支える人の移動の自由の課題を明らかにする.
本稿は,米中摩擦がどのような争点をめぐって進展したのかを,WTO体制の枠組みを軸に考察する.オバマ政権は,WTO提訴などの「場内規律づけ」を試みたが,提訴理由の稚拙さがあり機能しなかった.しかし,中国の逸脱行為の規律づけは可能であった.トランプ政権の「場外乱闘」で,崩壊しかかった多国間自由貿易体制の再構築に取り組む際に,中国の逸脱部分に対しては,体制への正しい理解をもとに適切な対応が必要である.
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