中国の習近平国家主席が2013年にカザフスタンとインドネシアで「一帯一路」構想を表明してから今年(2024年)で11年目となった.本稿では「一帯一路」を,中国の外交戦略としての側面と,その旗のもとで実際にどのようなプロジェクトが進められてきたかという側面から概観し,改めて「一帯一路」構想とは何であるかを考察する.「一帯一路」の推進によって,相手国と中国との貿易関係が強まったり,鉄道や港湾の建設によって物流が活発化したりといった効果はたしかに存在する.ただ,中国政府が「一帯一路」について国際標準に基づいた情報提供をしないため,いまだに「一帯一路」に対する不透明感を払拭できない.
一帯一路構想は,初期の頃の新興国・途上国にインフラ整備のために巨額の資金を貸し付け,国内における余剰資源のはけ口とする,というものから,地球環境へのコミットメントやイノベーションの支援といったよりソフト重視で持続可能な対外経済協力策へと,その方向性を徐々に変化させてきた.一方で,中国の経済低迷を受け,国内の過剰な生産能力のはけ口として新しい一帯一路を位置づけていこうとする声も根強く存在する.本稿では,このような状況を踏まえ,これまでの一帯一路の歩みを,1.初期における旺盛な対外資本輸出拡大とその背景,2.初期の一帯一路が途上国・新興国にもたらした影響,3.新エネルギー産業の生産能力過剰問題解決のための新しい一帯一路(一帯一路2.0)の提起,という観点から整理したうえで,今後の一帯一路の行方について,中国が国内に抱える課題との関連を踏まえながら考えたい.
「中欧班列」は,中国・欧州間をコンテナ鉄道列車で結ぶ輸送プロジェクトであり,その主要部分がカザフスタン・ロシア・ベラルーシ領を通過する.路線の拡充や輸送量の増加から,中国の習近平政権による一帯一路政策の成功例とされることが多い.しかし,2022年2月にロシアがウクライナへの全面軍事侵攻を開始すると,中欧班列の総輸送量は依然伸びているものの,中国・欧州連合間の貨物をカザフスタン・ロシア・ベラルーシの鉄道がトランジット輸送するオペレーションは下火となり,中国・ロシア間の貨物の急増がそれを補う形となっている.他方で,イスラム過激組織フーシ派による攻撃で,2023年末から東西間の大動脈である紅海・スエズ運河の通航が困難になると,中欧班列のトランジット輸送が再び盛り返す現象が見られた.今後も国際環境の変化で経済的なメリットが確保されれば,中欧班列への一定の需要は維持されると考えられる.
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