応用教育心理学研究
Online ISSN : 2436-6129
Print ISSN : 0910-8955
39 巻, 1 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 龍 祐吉, 小川内 哲生, 高瀬 加容子
    2022 年 39 巻 1 号 p. 3-17
    発行日: 2022/08/31
    公開日: 2022/10/03
    ジャーナル フリー
    これまでの研究においては,学業的延引行動と学業的不正との関係について他の関連要因を交えて詳細な検討が行われていなかった。本研究の目的は大学生の学業的不正に与える自尊感情,内発的動機づけ,学業的延引行動,試験準備の遅延,及び学年の影響について検討することであった。307名の女子大学生(平均年齢20.3歳, 標準偏差1.06歳) に質問紙法による調査を実施した。パス解析の結果,第1 に学年が上がるにつれて学業的不正は減少する。第2に内発的動機づけの低下は直接的及び間接的に学業的延引行動を促し,引き続いて試験準備を遅らせることを通じて学業的不正を助長すること,最後に自尊感情は学業的不正に直接的に影響を与えないが,学業的延引行動そして引き続いて試験準備を遅らせることによって学業的不正を促す可能性があることの結果が見出された。先行研究との比較に基づいて本研究の結果に関する解釈を行い,今後の課題についても言及した。
  • 永井 毅, 溝邊 和成
    2022 年 39 巻 1 号 p. 19-35
    発行日: 2022/08/31
    公開日: 2022/10/03
    ジャーナル フリー
    本研究は,保育内容「環境」授業において講義・演習連動型を特徴とする授業実践を試み,その受講学生の意識分析を行うことを目的とした。2018 年5 月,受講学生にも馴染み深い「泥団子」を教材として授業を実施し,直後に学生への意識調査を行った。  そこで得られた40 名のデータは,質的分析によって検討された。その分析結果と考察から,学生自身は幼少期の経験を思い出しつつ「泥団子作り」体験に取り組んでいたり,受講学生同士が体験を共有したりして,体験の楽しさを感じることができていたことが示された。また,授業で得られた知識と体験が将来の保育者としての実践意欲につながっていることが明らかになった。
  • 伊藤 弥生, 山口 祐子
    2022 年 39 巻 1 号 p. 37-47
    発行日: 2022/08/31
    公開日: 2022/10/03
    ジャーナル フリー
    本研究は,ウェクスラー式児童用知能検査について,院生が現場に出る前に,検査施行から結果の伝え方まで実践的かつ相互研鑽しやすい形で学べるプログラムの開発を目指し,第一段階としてプログラムを設計の上,試行した。プログラムの振り返りと参加者アンケートの分析の結果,以下のことが明らかとなった。①本プログラムの種々の工夫が活かされ,院生がWISC- Ⅳを実践的で相互研鑽しやすい形で学べたようであった。②長時間の複雑な学習にも関わらず,アクティブラーニングが集中しやすさを高めたようだった。③グループ活動に,リラックスした環境を作り,学習目標の達成を容易にする機能がみられた。④本プログラム独自の検査施行ロールプレイは,院生の自尊心の傷つき防止や,受検者となる児童の身になって考える機会としても役立つことがうかがわれた。今後は,プログラムを,WISC- Ⅳの理論面の理解の向上や参加者の疲労への留意といった点を中心に改善し,指示も明確で具体的になるように工夫の上,調査を,実践的で相互研鑽しやすいという狙いを精査できるデザインに改善し,効果研究も展開することが期待される。
  • 福原 史子
    2022 年 39 巻 1 号 p. 49-65
    発行日: 2022/08/31
    公開日: 2022/10/03
    ジャーナル フリー
    幼児期に獲得される,社会情動的スキルの重要性が指摘されている。本研究では,このうち,粘り強さ,挑戦力,情緒安定,意思表現力の獲得に影響を与える要因を検討するため,幼稚園の保護者に質問紙調査を実施し,158 名の回答を精査・分析した。具体的には,幼児要因として年齢,性別,兄弟姉妹の人数,自宅で夢中になっていることの有無とその内容,保護者要因として待つ姿勢及び自己選択の尊重,園の教育への関心度,母親の育児関与の割合を検討した。その結果,保護者の待つ姿勢,特に「身支度の際」に待つという姿勢が,粘り強さ,挑戦力,情緒安定との間に有意な正の相関を示し,粘り強さ及び情緒安定に関しては順序ロジスティック回帰分析でも有意な正の影響を与えていた。また,「片付けの際」に待つ姿勢は挑戦力及び家族への意思表現力に,「何かに失敗した際」に待つ姿勢も家族への意思表現力に有意な正の影響を与えることが認められた。さらに,記述式回答からは,待つことが難しい具体的な状況も明らかとなった。これらの結果から,待つことの重要性を踏まえた保護者教育や支援の必要性が示唆された。
  • 秀 真一郎, 横松 友義, 西山 修
    2022 年 39 巻 1 号 p. 67-80
    発行日: 2022/08/31
    公開日: 2022/10/03
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,保育者による受容に関わる効力感を捉える新たな尺度を開発し,その構造を明示することである。具体的には,まず予備調査を踏まえ,保育者による受容に関わる52 項目を精選した。次に,現職保育者334 名,保育者志望学生227 名を対象に,大規模な質問紙調査を実施した。分析の結果,「子どもの自我を尊重する」「子どもの理解者として存在する」「保護者の理解者として存在する」「個の多様さを認める」の4因子20 項目が抽出され,明確な多次元構造が確認された。また,十分な信頼性,妥当性を有することも確認された。最後に,本尺度の実践的な活用可能性と研究の展開について若干論じた。
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