老年臨床心理学研究
Online ISSN : 2436-4568
最新号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 黒川 由紀子
    2026 年7 巻 p. 2-3
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/03/31
    ジャーナル オープンアクセス
  • Well-beingとの関連に注目して
    馬場 絢子
    2026 年7 巻 p. 4-14
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/03/31
    ジャーナル オープンアクセス
    全国的に介護者支援の取り組みが展開してきているが,実際にどの程度活用されているかは不明である。本研究ではWell-beingとの関連に注目して介護者支援の現状と課題を明らかにすることを目指した。家族介護者を対象にWeb調査を行い,介護中の悩みや困難,援助要請先,支援内容に関する複数選択式の設問と自由記述,およびWell-being関連尺度について回答を得た。325件のデータを集計したところ,介護者は家族・友人・同僚等の身近な人や被介護者向けの支援者に助けを求めていた。重回帰分析・t検定の結果,身近な人に援助要請をしている介護者は精神的健康が高く,医薬的な対処やピアサポート・自治体等の支援を受けている介護者は心理的苦痛が高いことなどが明らかになった。支援を受けない理由としては,悩み・困難がないことのほか,援助要請が苦手,適切な援助要請先がわからない,期待できない等が選択された。以上を踏まえ,介護者支援の今後の発展可能性について論じた。
  • ポストコロナ期における検討
    神前 裕子
    2026 年7 巻 p. 15-25
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/03/31
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究ではポストコロナ期における高齢者のICTの利用状況,ICTに対する態度・実践について検討し,QOLの関連について明らかにすることを目的とした。高齢者20名に面接調査を行い,質問項目を構成し,インターネット調査を実施した。調査協力者は,全国の高齢者310名(平均年齢71.17歳)であった。分析の結果,ICTへの態度・実践は,「ICT積極活用」「コミュニケーションICT活用」「ICTへの物足りなさ」の3因子が見出され,QOLとの関連は,前期高齢者においては3因子全てに,多重比較補正後も有意な正の相関が見られたが,後期高齢者においては,「コミュニケーションICT活用」因子に正の相関が見られたものの,補正後には有意な関連は確認されなかった。前期高齢者にはICT活用がQOLに寄与する一方,後期高齢者ではその関連は限定的であり,ICT(非対面)のみならず対面交流を含めた支援の重要性が示唆された。
  • 中山 莉子, 涌井 智子, 大久保 豪, 藤原 聡子, 粟田 主一
    2026 年7 巻 p. 26-36
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/03/31
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は認知症の人(以下,本人)の家族の言語・非言語的な関わりを「コミュニケーション行動」と定義し,日常生活場面における家族のコミュニケーション行動を測定する尺度の開発と,その尺度の信頼性と妥当性,全要介護度における測定不変性の検討を目的とした。家族介護者へのインタビューを基に作成した尺度原案を認知症の症状がある65歳以上の要介護者の家族に実施し,有効回答者1,846名を解析した。探索的因子分析を行い,【双方の意思の尊重】【本人との摩擦の回避】【本人の意思の拒否】【予防のための時間の共有】【受容的配慮】の5因子を抽出した。尺度原案から1因子が削除されたが想定した因子構造は概ね支持され,信頼性と妥当性も概ね十分であった。また,全要介護度における測定不変性が確認された。本尺度を用いて,認知症の人の家族の介護の特徴をコミュニケーション行動としてより詳細に把握できるようになるだろう。
  • 中川 威
    2026 年7 巻 p. 37-43
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/03/31
    ジャーナル オープンアクセス
    加齢は,年齢,疾患や障害,死という3つそれぞれに伴って生じる複数の変化が相互に関連し合う複雑な過程であると考えられている。80歳以上を指す超高齢期に着目し,研究することで,加齢をより精緻に理解できるだろう。そこで本論文では,超高齢期を理解するため,縦断研究を行うことを勧めることを目的とした。超高齢期を対象とする縦断研究には,脱落が生じやすいといった方法論的課題があり,これまで十分に行われてこなかった。こうした課題の解決策として,ミクロな時間(例:時単位)からマクロな時間(例:年単位)までの複数の時間尺度で同一個人を観察する時系列デザインを用いること,医療や福祉を含む多様な領域の実践データを利用することが提案されている。臨床実践では,疾患や障害の発生直後から死の直前まで少数の個人の心理と行動を精緻に観察することで,加齢を理解する理論と高齢者の支援の発展に寄与するだろう。
  • 森本 浩志
    2026 年7 巻 p. 44-51
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/03/31
    ジャーナル オープンアクセス
    認知症の人の介護家族は,認知症という疾患に起因する様々な被介護者の生活上の困難へのサポートのために,身体的・精神的健康を崩しやすい。介護家族への心理支援は従来から医療機関等において個別に行われてきたが,近年では心理社会的ストレスモデル等に基づいた心理教育的支援も増えている。本稿では認知症の人の介護家族への心理支援の今後の方向性として,生成AI等のICTの活用,家族の心理的プロセスを考慮した支援,就労している介護家族への支援における産業領域との連携の3点について検討した。
  • 事例研究という古くて新しい試み
    林 智一
    2026 年7 巻 p. 52-59
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/03/31
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿は,老年期心理臨床領域における事例研究の意義と役割について,先行研究の整理と筆者自身の臨床実践および研究経験をもとに検討したものである。高齢者の心理的体験は個別性が高く,量的研究のみでは捉えきれない側面を多く含む。本稿では,事例研究を「臨床の知」を可視化し,批判的思考を促す研究方法として位置づけ,3つの高齢者事例(脳出血後遺症例,施設入所高齢者の喪失体験例,ライフレビューの研究事例)を通して,その臨床的・研究的価値を示した。さらに,リサーチクエスチョンの構築やトライアンギュレーションなど,事例研究の確からしさを担保する方法論について論じ,臨床実践と研究が相互触発的に循環する重要性を指摘した。事例研究は,老年臨床心理学の発展に資する「古くて新しい」試みであることが示唆された。
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