コミュニケーション障害学
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31 巻, 2 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 青木 さつき, 林  豊彦
    2014 年 31 巻 2 号 p. 61-71
    発行日: 2014年
    公開日: 2025/04/16
    ジャーナル オープンアクセス
    我々は従来よりも機能変更が容易な携帯型VOCA を開発してきた。その特徴は,スイッチの画像や音声出力だけでなく,画面上のスイッチの数と大きさ,スイッチの配置を変えられることである。加えて,スイッチを押すと他ページに移ることができるため,例えば文の作成や応答を目的としてページ構成を設計できる。この特色を利用すると,このVOCA はさまざまな言語発達段階とそれに応じた指導内容に対応できる。その有効性を検証するために,発達段階の異なる2名の発語のない児の言語指導を試みた。ひとりは染色体異常による重度の知的障害があり,もうひとりは視知覚認知系は正常域で特定不能の広汎性発達障害がある。機能を柔軟に変更できるVOCA を用いた継続的な指導の結果,対象児はコミュニケーション手段を獲得しながら,同時に各発達段階に応じて言語能力を伸ばすことができた。このように,提案した指導法の有効性が示唆された。
  • 野尻 恵美子
    2014 年 31 巻 2 号 p. 72-79
    発行日: 2014年
    公開日: 2025/04/16
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は,障害児をもつ祖父母の障害受容の程度や,障害に対する意識・理解が,どのように両親の受容と関連しているかを検討することである。障害児をもつ420 家族の祖父母および両親に質問紙調査を依頼した。119 名の祖母,56 名の祖父,209 名の母親,156 名の父親から回答を得た。その結果,現在の受容の程度については,祖母,祖父,母親,父親の家族間で相互に関連しあっている可能性が認められた。また祖父母が障害名を知ることが,母親の前向きさに関連し,重要な要因であることも明らかになった。そして祖母が,障害は孫が成長してもなくなることはなく,障害の原因を「仕方がなかった」と認識することも両親の受容に関連していた。さらに,祖父母および父親については,障害の種別と受容との関連は認められなかったが,母親については,ダウン症の母親が発達障害児や身体障害児をもつ母親に比べて受容が進んでいるという結果であった。
  • 権藤 桂子
    2014 年 31 巻 2 号 p. 80
    発行日: 2014年
    公開日: 2025/04/16
    ジャーナル オープンアクセス
  • 塘  利枝子
    2014 年 31 巻 2 号 p. 81-89
    発行日: 2014年
    公開日: 2025/04/16
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿は日本にいる外国にルーツをもつ子どもに焦点をあて,日本語のコミュニケーションに違和感をもつ24 人の小・中・高校生への面接調査から,彼らのコミュニケーションの違和感と,対人関係,教科学習の自己効力感,自己アイデンティティとの関係を分析した。その結果,言語間移動をした年齢によってコミュニケーションの違和感の内容は異なり,就学前の移動では日本語の語彙の少なさが,小学校低学年での移動では日本語文法の躓きが問題であった。小学校中学年以上での言語間移動は,たとえ教科学習に大幅な遅れがみられても,母語を基盤とした学習方略を活用することが可能であり,母語の喪失も少なかった。またコミュニケーションの違和感は特に自閉症スペクトラムの子どもに対して対人関係能力感を低下させたり,自己アイデンティティにも影響を与えていた。多文化・多言語環境にいる子どもに対する言語間移動の年齢を考慮した発達支援が必要であろう。
  • 松井 智子, 須藤 美緒子
    2014 年 31 巻 2 号 p. 90-101
    発行日: 2014年
    公開日: 2025/04/16
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は,日本在住のブラジル人就学前児童を対象に,幼少期の継承語および社会言語の2言語発達と,心の理論を中心とする社会的認知および日常的な社会的スキルの発達との関係性を明らかにすることである。実験的調査および質問紙調査を通して,①参加児の文法能力の発達の遅れが心の理論の発達の遅れと強く関連していること,②心の理論の発達の遅れが日常的な社会的スキルの未発達と関連していることが明らかになった。日常的な社会的スキルの未発達は,就学後の学校適応を困難にする要因となり得ることは広く知られている。本研究の結果は,外国人児童の就学前の言語能力の発達を促進することは,学校における学習適応のみならず,豊かな社会生活を可能にする意味でも重要であることを示唆するものである。
  • Hiukei Li , 大井  学
    2014 年 31 巻 2 号 p. 102-111
    発行日: 2014年
    公開日: 2025/04/16
    ジャーナル オープンアクセス
    The purpose of this study is to again a deeper understanding of how a multilingual home environment influences children with Autism Spectrum Disorder (ASD) by focusing on one child's language development and the role of the primary caregiver's use of language. In this study, the language development of the child with ASD was within normal range; rather than being confused, the child benefited from the enriched trilingual environment provided by the primary caregiver through code-switch and code-mix. In addition, healthy family interaction and communication were maintained by preserving the trilingual home environment. These findings suggest the necessity of considering the possibility of raising a child with ASD in a multilingual home environment before giving any advice concerning language choice, so as to not jeopardize the child's language development and the natural family communication.
  • 下井田 恵子
    2014 年 31 巻 2 号 p. 112-119
    発行日: 2014年
    公開日: 2025/04/16
    ジャーナル オープンアクセス
    文化言語的に多様な背景をもつ人口が40%以上を占めるカリフォルニア州では,バイリンガル環境で育つ子どもや母語が英語以外の言語である子どもに言語評価を行う機会が多い。本稿では,筆者がアメリカ言語聴覚士学会(ASHA)認定スピーチパソロジストとして勤務していた小児発達クリニックでの事例を通じて,多文化多言語児童への言語評価の現状と課題について論じた。多文化多言語児童に言語評価を行う際には,言語能力を両言語の語彙力から測定することの重要性と,英語の標準化言語検査ツールを第2言語の言語力評価に活用する際の注意点を考慮した。そして,家族が子どもの言語発達に対して正しい認識をもてるよう,啓蒙・啓発活動にも力を入れた。
  • 門松 朋子
    2014 年 31 巻 2 号 p. 120-124
    発行日: 2014年
    公開日: 2025/04/16
    ジャーナル オープンアクセス
    多文化主義を社会的背景に継承語教育が積極的に進められるカナダBC 州において,発達障害児・者の家族のためのサポートグループを設立した。このグループの設立までの経緯,現在の活動内容,問題点について述べた。海外での発達障害児の子育てという環境において,このようなサポートグループの必要性は高く,日本に住む外国人家庭などマイノリティーの家族支援の意義についても言及した。
  • 田尻 由起
    2014 年 31 巻 2 号 p. 125-129
    発行日: 2014年
    公開日: 2025/04/16
    ジャーナル オープンアクセス
    本報告では,2011 年にフランス,パリで設立された「発達障害児と家族を支える会Inフランス」の活動を紹介し,その意義について検討した。参加者へアンケート調査を行った結果,居住スタイルや親の現地語習得状況に関係なく,多言語多文化環境で育つ,発達に課題のある子どもの子育てには,親自身と,同じ言語・文化をもった「専門家」と「仲間」の存在が必要であり,本会の試みがパリ近郊に住む邦人家庭に有用であることが確認された。
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