聴能言語学研究
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16 巻, 2 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 増田 智美, 松宮 依子, 北野 市子
    1999 年16 巻2 号 p. 80-86
    発行日: 1999/08/30
    公開日: 2009/11/18
    ジャーナル フリー
    当院において月1回行われる摂食外来の実態について調査を行った.主な結果としては主訴の多くが「鼻注栄養から経口摂取に移行させたい」「離乳食が進まない」であったこと,指導回数は1回で終了したものが最も多かったこと,などであった.また本外来で指導した症例のうち,改善例と中断例を比較すると,疾患別では中断例に脳性麻痺児が多い傾向がみられた.初診時の食形態には顕著な差が認められなかったが,最終時の食形態について,中断例では食形態が不変または後退したものが多かった.また,他者に勧められて受診に至ったものが中断例には多かった.この調査を通じて,食事にまつわる援助が決して「訓練」的な位置づけだけでは解決しえないことが明らかとなった.こうした子どもにSTがどのようなサービスを提供するかについてST自身が自己の資質の限界吟味を主体的に行い,自己の臨床感や立場を明確にした上で指導に当たることが必要と思われた.
  • 西村 辨作
    1999 年16 巻2 号 p. 87
    発行日: 1999/08/30
    公開日: 2009/11/18
    ジャーナル フリー
  • 小薗 真知子
    1999 年16 巻2 号 p. 88-92
    発行日: 1999/08/30
    公開日: 2009/11/18
    ジャーナル フリー
    脳梗塞のためウェルニッケ失語を呈した患者の妻の手記を分析した.手記には患者の発病時,手足の麻痺がないため適切な医療を受けるのにとまどった家族のようす,言語障害に対して家族全員で取り組むようすなどが克明に描写されている.また,主治医の予後の説明に打撃を受けながらも,希望を見いだそうと揺れる気持ちなど,通常のインタビューでは表明されにくい患者家族の心理を知る一助となった.この手記より,失語症発症時の対処法を一般の人々へ普及することの重要性,発症初期から言語障害についての情報を提供し相談に応じるスタッフの必要性が考えられた.また,家族の障害受容に対して家族指導において考慮すべきことなどを考察した.
  • 加藤 正子, 新藤 満寿美
    1999 年16 巻2 号 p. 93-99
    発行日: 1999/08/30
    公開日: 2009/11/18
    ジャーナル フリー
    口唇裂口蓋裂の問題は形態・機能・心理面と多義であり,治療も長期に渡るが,親の意識調査の結果もそれを裏づけた.このように多様な問題を抱えた口唇裂口蓋裂の子どもに対する親の関わりかたはそれぞれの家庭によって異なるため,指導も単一ではない.大多数の親は困難な乳児期を克服して,その後は健常な環境で子どもを育てられる.このような親には,治療の情報提供や現症を伝えるといった狭い意味の言語治療だけですむ.しかし,個別のカウンセリングを行わないと子どもの発達にとって望ましくない環境をつくるおそれのある親には広い意味での言語臨床が必要とされる.初回手術後,鼻咽腔閉鎖機能不全を示し言語に問題を生じたが,親の積極的な行動により就学前に正常なスピーチを獲得したケースの母親の手記も併記した.この手記をとおして,自分自身を含め病院の治療者にとっては日常的な言動が,受ける側にとってはどんなに重いものか改めて認識された.
  • 筒井 優子
    1999 年16 巻2 号 p. 100-104
    発行日: 1999/08/30
    公開日: 2009/11/18
    ジャーナル フリー
    就労や在宅生活への援助を主訴に来所する,「失語症者」の「障害」を支える要因について事例から考察した.受障後の生活を立て直すとき,受障前の家族関係(夫婦,親子,兄弟関係)や人間関係が,心理的回復過程や障害認識を大きく左右する要因となっていると筆者は考えている.これらの要因について,受障前の家族関係が円満な事例Aと家族関係が希薄な事例Bを通して具体的に検討した.また,人とのかかわりの要因のほかに,「障害者」を支える環境要因,(1)地域の福祉サービス,(2)失語症友の会(ピア,サポート)も在宅生活や就労支援を勧める上では大きな要因になっていると考えられた.
  • 佐藤 妙子, 宮崎 真理
    1999 年16 巻2 号 p. 105-108
    発行日: 1999/08/30
    公開日: 2009/11/18
    ジャーナル フリー
    健康を自負していた51歳の夫が,脳幹部出血で倒れ,右半身が麻痺して言語障害が残った.運動訓練とともに,言語訓練を受けて1ヵ月後に声が出るようになり,意思の疎通が取れるようになった.そののち自宅に戻り,通所の言語訓練を受け,自宅勤務というかたちで復職できた.本人の生きたいという気持ちと周りの人からの援助に,家族が勇気づけられたことが大きいと思う(妻).生活費の心配をする必要がない幸運に恵まれ,純粋に父の回復を願えたことは心強かった.父の回復には本人の生きる希望が支えになっていた.本人や家族の気持ちをくみ取って重要なことがらを伝えてほしいと専門家たちに願う(娘).
  • 高橋 和子
    1999 年16 巻2 号 p. 109-114
    発行日: 1999/08/30
    公開日: 2009/11/18
    ジャーナル フリー
    コミュニケーションに問題のある発達障害児を我が子にもった場合,親はどうすれば子どもをうまく援助できるのだろうか.親や周囲のどんな要因が,子どもを支えるときに大切になるのだろうか.本稿では,高機能自閉症児の親であり,コミュニケーション援助の仕事にも就いている筆者が,自らの経験を通じて考えたことを述べることにする.親が子どもを援助するときに大切になるのは,(1)子どもの障害をいかに受けとめるか.(2)子どもや親自身にとって必要な情報をうまく収集し,活用できること.(3)共に支え合える仲間(親)の必要性.(4)家族の理解と支援.(5)信頼できる専門家の支援.(6)子どもの状態をうまく理解し,それに合った援助をすること.(6)親が学ぶこと等である.ここでは,子どもを援助するときに,親側のどのような要素が重要となるかを考えるとともに,親が専門家に望むことについてもふれてみたい.
  • 西村 辨作
    1999 年16 巻2 号 p. 115-121
    発行日: 1999/08/30
    公開日: 2009/11/18
    ジャーナル フリー
    発達に遅れをもつ子どもの言語治療は発達全般を考慮して進めていかなければならない.また長期の対応を必要とする.このため家族との協力は不可欠である.子どもが育つ環境としての家庭を「家族」の視点から考える意義は3つある.(1)子どもの療育訓練の効果や長期的な発達に,母親の安定したかかわりが大きく影響している.(2)発達に遅れをもつ子どもの家庭養育が重視されているが,それは同時に,家族構成員への心身両面の配慮を示唆している.(3)母親の立ち直りの過程の道筋をうまく書き出すことは,困難な時間にある人々の立ち直りへの指針になる.本稿では,子どもの誕生と母親の気持ち,慢性的悲嘆,父親の気持ち,きょうだいへの配慮,拡大家族とのかかわり,親が高齢になったとき,の問題を取り上げた.精神的負荷に対処するため,普段から信頼できる援助のルートを確保しておくことが肝要であると考えた.
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