日本語の指示詞の発達的な出現順序と,その出現順序を規定している要因を探るために,幼児初期の3組の母子自由遊び場面における指示詞コ・ソ・アの出現状況を,母親からのインプットとの関係から検討した.その結果,コ系(コレ,コッチ,ココ,コノ)・ア系(アレ,アッチ,アソコ,アノ)・ソ系(ソレ,ソッチ,ソコ,ソノ)の出現順序が最も一般的な出現順序パターンであったが,その他の出現順序パターンも観察され,自己中心性というような,従来からいわれていた社会認知的要因のみによって,指示詞出現順序が規定されているとは断定できなかった.一方,母親からのインプット量とも指示詞出現順序は明確な対応が認められなかったものの,インプットの影響も完全には否定することができなかった.今回は母親からのインプットの頻度のみを取り上げたが,インプットの影響を検討するためには,より多角的な言語環境の検討が必要といえよう.
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