コミュニケーション障害学
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23 巻 , 1 号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
  • 北川 裕子, 小野 學, 石田 宏代
    2006 年 23 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 2006/04/30
    公開日: 2010/04/21
    ジャーナル フリー
    障害児教育を充実させるために,言語聴覚士(以下,ST)が週1回公立小学校特殊学級に出向き,以下のことを行った.(1)発達障害児の言語発達評価を行い,IEP(個別指導計画)を見直す,(2)STが行う個別指導を教員に見学してもらい,逆に教員が行う個別指導をSTが見学して指導法の改善点について協議する,(3)朝の会や給食などの時間は,言語指示などに留意しながら子どもに接し,行動観察を行って言語環境の改善をはかる,(4)授業参観や家庭訪問などの学校行事を通して家族支援を行う.今回,そこで支援した自閉症児2名の支援経過および結果から,(1)医療側のSTは日常生活場面における評価が不十分であり,教育側の教員は言語評価が不十分であった,(2)今回行った教員とSTの連携方法は,お互いの弱点を最小限に抑えるのに有効であったことが示唆された.従って,このような障害児教育に対するSTの参画が就学後の発達障害児にとって重要であると考えた.
  • 黄 素芬, 窪田 庸子, 大井 学
    2006 年 23 巻 1 号 p. 9-15
    発行日: 2006/04/30
    公開日: 2010/04/21
    ジャーナル フリー
    母親の会話スタイルと子どもの表出言語発達との関連について,台湾と日本の比較研究を行った.参加者は台湾と日本の各16組のダウン症をもつ子どもとその母親であった.パス解析の結果,両国で母親の会話スタイルが子どもの2年後の追跡時の表出言語発達に影響を及ぼすメカニズムが大きく異なることが示された.台湾では,母親の指示と指示質問の多さが子どもの言語発達を抑制する方向に働いており,明確化要請は促進因として働いていた.日本では,母親の指示と指示質問が抑制因として働き,確認要請が促進因として働いていた.応答は抑制因として働いていた.母親の指示が子どもの言語発達に否定的影響を及ぼすことを示す結果は,英語圏,台湾,および日本に共通であった.しかし,英語圏で子どもの言語発達に促進因として働いている母親の応答が,台湾では影響力をもたず,日本では否定的な影響を与えていることが明らかになった.
  • 三宅 裕子
    2006 年 23 巻 1 号 p. 16
    発行日: 2006/04/30
    公開日: 2010/04/21
    ジャーナル フリー
  • 道関 京子
    2006 年 23 巻 1 号 p. 17-22
    発行日: 2006/04/30
    公開日: 2010/04/21
    ジャーナル フリー
    全体構造法はテクニックでもhow-toでもなく,人間を知覚の全体構造体としてとらえ,その全体構造体である人間の意識活動の一つである言語活動,およびその発展(高次化)という基本認識から言語障害臨床を体系化したものである.本理論と実践である具体的手段について概説した.言語高次化の原動力である知覚の構造化を進めるためには,(1)知覚の性質,(2)言語知覚構造化階層の成り立ち,さらに(3)言語障害者の現知覚段階についての正確な判定,に関する言語発達学,心理学,言語心理学,神経心理学の知識が必須である.よって全体構造法を行う言語聴覚士は,人間を全体精神とみる専門家として知識と観察力が要求される.その上で臨床場面において具体的手段を各障害者の知覚構造化に合わせた最適刺激,すなわち障害者自らが能動的に高次化を進める刺激を設定していくことができるのである.
  • 奥平 奈保子
    2006 年 23 巻 1 号 p. 23-29
    発行日: 2006/04/30
    公開日: 2010/04/21
    ジャーナル フリー
    語彙障害の解析には認知神経心理学的アプローチが有効である.しかし,このアプローチの最大の問題点は治療への方向づけの弱さであり,治療者は直感や試行錯誤によって治療戦略やアプローチを選ばねばならない.言語機能の回復には,脳の神経回路の再構築と,それを基盤とした活動依存的機能学習が必要である.治療を効率的で無駄のないものにするためには,神経・認知レベルの回復過程に沿い,回復を促進するような働きかけを選択することが望ましい.そのため,神経・認知の回復パタンや個人差に関する神経学的側面からの知見を言語臨床に取り入れ,活用していくことが必要である.
  • 土橋 三枝子
    2006 年 23 巻 1 号 p. 30-35
    発行日: 2006/04/30
    公開日: 2010/04/21
    ジャーナル フリー
    失語症者の文発話障害に対するマッピング訓練について,文の発話プロセスとマッピング障害仮説を概説したのち,訓練方法を述べた.このうち,先行研究からは,述語項構造をもとに意味役割や格付与の理解を促して文の発話改善を図った方法をいくつか取り上げた.言語訓練ソフト「言葉の散歩2005」からは,「意味役割の理解訓練」,「動作を表現する文の作成訓練」,「情景画の説明訓練」の3項目に関して,それらの内容構成と訓練例を紹介した.そして最後に,本邦におけるマッピング訓練の今後の課題について見解を加えた.
  • 山田 那々恵
    2006 年 23 巻 1 号 p. 36-40
    発行日: 2006/04/30
    公開日: 2010/04/21
    ジャーナル フリー
    実用的なコミュニケーション能力に対するアプローチとして,PACE訓練やAACの適用などさまざまなアプローチが実践されている.本稿では,日常生活のコミュニケーション行動の改善を目的に2症例に対してアプローチを試みた.重度失語症者に対しては,コミュニケーションの相互交流を中心に症例と家族にアプローチした.また,特定のコミュニケーション場面へのニーズをもつ症例に対しては,買い物の技能の向上に対してアプローチした.その経過から,日常のコミュニケーション行動に対してSTは,(1)伝達する・されるの両者にアプローチすること,(2)言語機能を把握した上でニーズを考慮し課題を設定,シミュレーションを行うこと,(3)伝達のメッセージが及ぼす心理・社会面を考慮すること,(4)言語機能のアプローチと併行して実施,(5)コミュニケーションを楽しむように促すことを支援していく必要があると思われた.
  • 林 耕司
    2006 年 23 巻 1 号 p. 41-45
    発行日: 2006/04/30
    公開日: 2010/04/21
    ジャーナル フリー
    「命を救うような気持ちで言葉を聴いてほしい」「良い環境とは周囲に響き合う魂があることである」「ゆっくり話し良く聞いて虹の橋」筆者はこのようなコミュニケーション障害者が語ってくれる言葉たちに力を得てコラボレーションセラピーを展開してきている.コミュニケーション障害の現場はSTの手によって深く耕され,滋養を与えられていかなければならない.そのためにはコミュニケーション障害者とコミュニケーションパートナー(家族・専門家・会話ボランティア)が協働し,心を響かせ合いながら具体的な方策を展開し,より良い環境を創り上げ未来を切り拓いていく必要があると考えている.この協働=響同作業をコラボレーションセラピーとよびたいと思う.次の4つの方策を展開している.(1) 芸術活動を通した楽しみの共有.(2) 会話ボランティアの養成.(3) コミュニケーション障害者を取り巻く専門職への教育.(4) 失語症友の会支援やグループ訓練の継続.
  • 硲 道代
    2006 年 23 巻 1 号 p. 46
    発行日: 2006/04/30
    公開日: 2010/04/21
    ジャーナル フリー
  • 久保田 功
    2006 年 23 巻 1 号 p. 47-51
    発行日: 2006/04/30
    公開日: 2010/04/21
    ジャーナル フリー
    ダウン症児たちとの長い期間にわたる関わりを通して筆者の知的障害をもつ子どもへのセラピィのあり方とSTとしての役割について考えた.以前は彼らに対して狭い範囲の援助しか引き受けられなかった筆者が,次第により広い援助のニーズと可能性に気づき,臨床のスタイルを変えていった.現在彼らに対する役割として,ことばが出るまでの時期は「親と子が安心して生活やコミュニケーションを楽しめるように」サポートする役割,ことばが出てからは「本人のペースを尊重しつつ,できることを増やす」よう導く役割,そして実用的なコミュニケーション能力を身につけた後の長いつきあいの中では「社会とのインターフェイス」を担う役割があるのではないかと考えている.それらの役割を実現するためには養育者に信頼されること,子どもに「一番楽しく,刺激的なコミュニケーション相手である」と認めてもらうことが大事であろうと考えている.
  • 小林 一恵
    2006 年 23 巻 1 号 p. 52-56
    発行日: 2006/04/30
    公開日: 2010/04/21
    ジャーナル フリー
    自閉症は「人との相互干渉,コミュニケーション,想像力」の「3つ組」の障害である.支援に際しては《個々の子どものもつ自閉症特性への配慮》が望まれる.つまり《肯定的な表現を心がけること,適切な行動を示すこと,分かるように示すこと=視覚的に具体的に示すこと,興味と能力に合わせること》が重要である.このようにして子どもに合った適切な環境を用意し,音声言語にこだわらずに自発的コミュニケーションや自立的行動を育てることは,自閉症の子どもたちが不適応行動をおこさず,必要な援助(代替コミュニケーションやスケジュール,ソーシャルストーリーなど)を自ら積極的に利用する力を育み,自閉症としての自己を肯定的に受けいれることにつながるであろう.
  • 北野 市子
    2006 年 23 巻 1 号 p. 57-62
    発行日: 2006/04/30
    公開日: 2010/04/21
    ジャーナル フリー
    両側唇顎口蓋裂と読み書き障害を合併した1事例について,幼児期から20歳までの長期経過を報告した.4歳半まで鼻咽腔閉鎖機能不全が残存したが,これが解消した後も声門破裂音が持続した.1音1文字学習は就学前後に成立したが,単語や文章の読み書き障害は中学時代までみられた.特に文章の読みに関しては黙読では意味把握が困難であった.仮名文字の読み書きに支障がなくなった中学から高校にかけて会話時の声門破裂音も消失した.アルファベットの学習には問題がみられなかったが,英単語や漢字の学習には非常な困難を示した.これらの経過から本児の発話不明瞭および読み書き障害の原因として,(1) 音韻構造の意識化の遅れ,(2) 語彙アクセスによる音韻的な再符号化の障害,(3) ワーキングメモリーによる音声の再符号化の問題,(4) 聴覚情報処理の問題などが考えられた.
  • 野中 信之
    2006 年 23 巻 1 号 p. 64-68
    発行日: 2006/04/30
    公開日: 2010/04/21
    ジャーナル フリー
    難聴幼児の言語獲得上の予後は聴力という要因だけでは説明できない.本稿ではそこにことばの基盤の完成度という要因を想定し,事例を観察した.なお,ことばの基盤とは子どもが物に興味を示すと同時に人にも興味を示すことである.観察の結果,言語獲得に困難を示す難聴児の中にことばの基盤の形成が不良な場合があるとわかった.ことばの基盤は情緒的関わりを通じて形成され,その過程で「自分と相手との関係を繰り返し試す行動(対人的循環反応)」と「待つ」という期待行動とが現れる.また,よくあやされた正常児は乳児期後半にことばの基盤を形成する.本稿で観察した難聴乳児では,対人的循環反応が始まるまでに1ヵ月を要したが健聴乳児では数分間であった.これは聴覚には他者の存在を認識する「きっかけ」としての機能があるためと考えられた.またこの機能が乏しい難聴児ではことばの基盤の形成が遅れやすいと考えられた.
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