日本臨床作業療法研究
Online ISSN : 2188-8418
10 巻
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 小野 健一, 金山 祐里, 大岸 太一, 池知 良昭
    2023 年10 巻 p. 1-7
    発行日: 2023/01/19
    公開日: 2026/07/22
    ジャーナル オープンアクセス
    共作業とは,複数の人が関わり,互いが主体として相互作用を及ぼしながら行う作業を指す.本研究では,共作業を行う上で生じる身体性・情緒性・志向性の3領域に含まれる構成要素を明らかにすること,共作業の知見を概観することを目的とし,スコーピングレビューを行った.結果,13件の文献が対象となり,12件が国外文献であった.身体性は13項目,情緒性は25項目,志向性は33項目の構成要素が抽出された.身体性の構成要素はAssessment of Motor and Process SkillsやThe Evaluation of Social Interactionで評価される作業遂行の技能が多く含まれていた.情緒性・志向性は身体性に比べ多くの構成要素が抽出されており,共作業の持つ複雑性を表していると考えられた.今回明らかになった共作業の概念は,家族支援・介護者支援の現場において,作業療法士が対象者の内面を理解する際の一助となることが期待できる.
  • 上田 祐二, 齋藤 佑樹
    2023 年10 巻 p. 8-12
    発行日: 2023/03/20
    公開日: 2026/07/22
    ジャーナル オープンアクセス
    肘頭骨折術後に骨折部の転位が発覚し,気分の落ち込みから今後の生活や手を使用することに不安を抱いた事例を担当した.事例は殆ど患側を使用せずに術後の病棟生活を送っていた.本事例に対し,カナダ作業遂行測定(Canadian Occupational Performance Measure:以下,COPM)で再開したい作業について共有するとともに,作業選択意思決定支援ソフト上肢版(Aid for Decision-making in Occupation Choice for Hand:以下,ADOC-H)を用いて,上肢の使用について具体的な目標を設定・共有し,難易度を調整しながら介入を継続したところ,心理面の変化がみられ,生活における手の使用頻度が向上した.また,自分から新たな作業に患側を参加させるようになるなど,挑戦的な行動を認めるようになった.
  • 小池 真愛, 田原 正俊
    2023 年10 巻 p. 13-19
    発行日: 2023/06/01
    公開日: 2026/07/22
    ジャーナル オープンアクセス
    本報告は,回復期リハビリテーション病棟にて,外傷性くも膜下出血を呈した事例に対して教師への復職を目標に多職種で支援を行った介入経過である.作業療法では担当作業療法士や,他の職員を生徒役とした授業や,小テストの作成と添削,通勤や授業時間を想定した訓練時間の調整など,復職を想定した介入を行った.経過の中で,精神的な落ち込みや悲観的な発言があったため,作業的挑戦尺度と一般健康調査票日本語版短縮版を使用しながら評価と分析を行い,面接を通して復職に関連した作業の抽出や不安事項などを整理した.そして,授業の様子や面接で得られた情報を多職種で共有し,各職種の専門性を活かしながら支援を行った.介入後,事例は復職への自信と価値観の変容を語り,職場の協力のもと就業環境が調整された上で,教師への復職を果たした.今回の介入を通して,復職支援で作業的挑戦尺度を使用することは,個人的,環境的側面から事例の仕事という作業への向き合い方を整理することや,支援者の介入の方向づけをしていく上で有用であることが示唆された.
  • 池田 晋平, 芳賀 博
    2023 年10 巻 p. 20-26
    発行日: 2023/05/26
    公開日: 2026/07/22
    ジャーナル オープンアクセス
    COVID-19の流行初期における地域在住高齢者の外出自粛と抑うつ症状の実態を検討するため,A県B市の高齢者を対象に2020年7月に質問紙調査を実施した.1083名のうち感染予防を理由とした外出自粛群は71.0%で,非外出自粛群は29.0%であった.抑うつ症状の発生割合は外出自粛群で45.3%,非外出自粛群で29.3%であった.抑うつ症状に対し,外出自粛群では日中独居の頻度が多いこと,友人・知人と会う頻度が少ないことが関連し,非外出自粛群では社会的側面の関連は確認されなかった.このことから外出自粛を求める防疫対策は,高齢者のメンタルヘルスを深刻化させる可能性がある.政府は2022年7月(第7波の直前)に制限緩和へ方針転換したが,地域に関与する作業療法士は,とくに外出自粛に応じた高齢者を対象に,孤立・孤独の解消や対面交流の促進に向けた方策が求められる.
  • 松田 直人, 熊野 宏冶, 進藤 篤史, 倉澤 茂樹, 上村 瞳歩, 大石 綾乃, 中野 智也, 鈴木 有統, 小石 恭士
    2023 年10 巻 p. 27-33
    発行日: 2023/09/28
    公開日: 2026/07/22
    ジャーナル オープンアクセス
    終末期がん患者の希望は,死への過程の中で身体的な希望から,生活の意味,人生の目的達成,生活の統制,価 値といった実存・人間関係の希望へ変化する. 本研究では,終末期がん患者の希望する作業実施の有無と,実存面を含めたQOLの関係性を明らかにすることを目的とした.対象を緩和ケア病棟入院患者19名として後方視的に調査した.作業療法介入時に,希望する作業を聴取した回答をもとに,希望する作業あり群と,希望する作業なし群に分類した.両群とも,作業療法介入1週間以内の初期評価時と,初期評価から2週間後評価時のデータを分析対象として,QOLの変化をWilcoxon符号付順位和検定で分析した.患者が希望する作業は,他者との交流を目的にする希望が大半を占めていた.2週間後の評価時の希望する作業実施状況は,実施7例,一部実施3例,調整中3例であった.希望する作業あり群のMcGill Quality of Life Questionnaire日本語版では,実存面のQOL初期中央値5.3点,2週間後中央値6.0点で有意差を認めたが,希望する作業なし群ではすべての項目で有意差を認めなかった.患者自身が希望する作業に参画することは,QOLの改善につながることが示唆された.終末期がん患者が,限られた人生の中で自ら希望する作業に,一部でも参画することは重要である.
  • 伴 大輔, 京極 真, 寺岡 睦, 森下 元賀
    2023 年10 巻 p. 34-41
    発行日: 2023/12/20
    公開日: 2026/07/22
    ジャーナル オープンアクセス
    訪問リハビリテーションの作業療法士の役割は作業機能障害(Occupational Dysfunction:以下,OD)の理解や 支援であるものの,ODの実態・評価・介入が明らかにされていない現状がある.本研究の目的は,訪問リハビリテーション利用者のODの実態,評価,介入を明らかにすることである.方法は構造構成的質的研究法(Structure Construction Qualitative Research Method:以下,SCQRM)を用い,質的データ分析はSteps for Coding and Theorization(SCAT)で生成したテーマ・構成概念をもとにSCQRMの関心相関的構造構築法でケース内とケース間の理論記述の共通パターンを把握した.データ収集は半構造化された個別面接法を用いた.参加者は訪問リハビリテーションで作業に根ざした実践を行う作業療法士6名であった.その結果,大カテゴリーが「ODの実態」「ODの評価」「ODの介入」の3つに分類され,小カテゴリーが11個になった.ODには顕在化と潜在化という特徴が認められた.また,実際の生活環境でODの評価を行い,目標を定めること,環境を調整した上で,チームで連携したアプローチを実践していく必要があることがわかった.
  • 田原 正俊, 神藤 星那
    2023 年10 巻 p. 42-48
    発行日: 2023/12/20
    公開日: 2026/07/22
    ジャーナル オープンアクセス
    本報告はGoogleフォームTMを用いて自主訓練を提示した,外来作業療法での実践報告である.事例は肩関節の動作時痛を主訴とした,脳卒中後の上肢運動麻痺がある40歳代の男性である.動作時痛の要因として考えられた,肩関節の機能低下の改善を目的にGoogleフォームを用いて自主訓練の説明書を提示し,事例のスマートフォンで訓練内容を確認する管理方法を導入した.導入前の自主訓練は自宅で紙面での確認であり,仕事の疲労などにより習慣化されていなかったが,Googleフォームでの管理方法を導入後,訓練のアドヒアランスの向上と肩関節の動作時痛の軽減,精神的健康状態の改善に至った.本事例への介入を通じて,Googleフォームでの自主訓練の管理は,スマートフォンで訓練の確認ができることなど,高い利便性があり,情報にアクセスしやすいことで自宅での訓練のアドヒランスの向上が期待できる方法の一つとなる可能性が示唆された.
  • ー認知的徒弟制に基づく作業療法士の関わりー
    畠山 久司, 松本 好, 藤井 望, 宮野原 勇斗, 兵頭 朋行
    2023 年10 巻 p. 49-56
    発行日: 2023/12/21
    公開日: 2026/07/22
    ジャーナル オープンアクセス
    本報告の目的は,作業療法士の助言・指導の下,自閉スペクトラム症の子どもと母親間で行う身体を介した情緒的コミュニケーションを伴った遊び(以下,身体を介した遊び)を集中的に行うことが,アタッチメントの形成に及ぼす影響を調査することである.対象は,4歳5ヶ月の自閉スペクトラム症の男児とその母親とした.介入は1回50分で4回実施した.初回介入時に母親と母子関係についての目標設定を行い,COPMの遂行度を評価した.その後,作業療法士は男児の感覚欲求を充足できる身体を介した遊びを通じて,非言語的な二者関係の構築は図った.男児と作業療法士の遊びの定着後に,男児の遊び相手を母親に移行した.作業療法士は認知的徒弟制に基づき母親に支援を行い,母子間の身体を介した遊びが成立するように介入した.結果,COPMの遂行度は向上し,アタッチメントの形成に繋がった.自閉スペクトラム症の子どもと母親間で行う身体を介した遊びはアタッチメント形成に有効であると示唆された.
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