本論では,家族の中でも,父,母,きょうだいというような狭義の家族に対する認知から見た心理的な距離に着目して研究を進めた.その結果,認知といっても,各少年の年齢・性別や置かれていた環境により大きく異なること,それは男子より女子により大きな影響を及ぼしやすいこと等が明らかになった.少年達は自我がぜい弱であることは本論の始めで述べた通りであり,家族という最も身近な人から受ける影響は,少年たちにとって計り知れないくらい大きいものと考えることができ,非行に走った要因の一つとして,家族の問題を考えることの重要性が改めて認識される結果となった.今後は,今回の調査では分析しなかった家族と非行性の関係などを考察することにより,一層研究を深めていきたい.
仮説「探索質問法において,犯罪事実と非裁決質問となる一質問との関連性が高い場合,検出率は低下する」を実験により検証した.
まず,評定尺度法によって項目の関連性をみる調査を行い,実験にて使用する記憶項目を選定した.実験は,仮想犯罪を用いた探索質問法による虚偽検出検査である.被験者を2群に大別し,前調査から得られた各記憶項目を含む仮想犯罪の文章を記憶させ,同一質問表により虚偽検出検査を実施し,得られた生理反応の特異性を得点化して分析した.その結果,犯罪事実と特定の非裁決質問の関連性が高い条件のH群と,それらの間の関連性の低いL群の2群の検出率に差があり,仮説は支持された.