犯罪心理学研究
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48 巻, 2 号
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資料
  • 半澤 利一
    2011 年 48 巻 2 号 p. 1-12
    発行日: 2011/03/31
    公開日: 2017/09/30
    ジャーナル フリー

    MRIモデルを活用した少年事件調査3例を検証することで,少年調査における理解と,その過程でなされる保護的措置におけるシステムズ・アプローチの用法について検討した。いずれの事例においても保護者が少年の自立を求め,叱責や罰など不適切な働きかけを繰り返したことで,少年に苛立ちや抑圧感などがうっ積し,被害者意識が醸成されたものと理解した。このように親子の言動の背後にある動機や思い入れを探ることが,少年のあり方や保護者の信念,相互の力動関係を把握する要点となる。

    また,親子関係の悪循環を行動水準でとらえることで,少年の問題行動を解決しようとする保護者の努力自体が問題の持続を招き,それが再び保護者の不適切な働きかけを引き起こすという偽解決を把握することにもなる。いずれの事例でも,リフレイミングにより行動の意味付けを変え,具体的で受け入れやすい課題を提示して介入することで,審判までの短期間に問題が改善した。MRIモデルは,問題を具体的に明確にすることを治療の端緒とするなど少年調査と近似する部分もあるが,非行や少年についての説明が求められる少年調査とは目的が異なるので,時機と局面を見極めて活用したい。

  • 小菅 律, 藤田 悟郎, 岡村 和子
    2011 年 48 巻 2 号 p. 13-27
    発行日: 2011/03/31
    公開日: 2017/09/30
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,暴走族集団の特徴に基づき類型化を行い,各群に分類された暴走族少年の特徴を分析し,類型別に効果的な対策を提言することである。都道府県警察で質問紙を配布し,共同危険型暴走族集団に現在加入している152人,かつて加入していた224人の男子少年を対象とした。多重対応分析の結果,集団の組織化程度,集団の人数の2次元が得られた。この2次元の成分スコアに基づきクラスター分析を行い,以下の3群に分類した。HoM群は高組織化・中人数の群で,非行経験が多く,学校・家庭への適応が悪いため,組織化程度を下げ,他の居場所を作るという対策を提示した。MoL群は中組織化・多人数の群で,学校・家庭への適応がよく,非行経験は少なく,暴走族の非行集団以外の側面に魅力を感じた可能性が考えられ,こうした興味に対処することを提起した。LoS群は低組織化・少人数の群で,自発的な集団結成の可能性が示唆され,取締りの必要性を指摘した。また,3群には地域差が見られた。

  • 緒方 康介
    2011 年 48 巻 2 号 p. 29-42
    発行日: 2011/03/31
    公開日: 2017/09/30
    ジャーナル フリー

    被虐待児の知的発達に関するレヴュー報告では定性的で主観的な方法論が用いられてきた。本研究では,先行研究で得られた知見を定量的にかつ客観的に統合することを目的に文献調査を行った。知見の統合と効果量の算出のために,方法論としてはメタ分析が採用された。データベース検索を経て,20の文献から27のデータが抽出されたが,感度分析の結果,17の文献から得られた22の統計値を用いるのが,方法論的に妥当であった。メタ分析の結果,統計的に有意で中程度の効果量が得られた(d=.53, r=.26)。そのため被虐待児の知能は確かに低く,その程度も決して小さくないことが示唆された。また身体的虐待とネグレクトに関して個別にメタ分析を実施して効果量を各々算出した。本研究知見は児童虐待が被害児の知能に悪影響を与えるという知見を支持しているものと考えられ,先行研究と併せて考えると,児童虐待は被虐待児の知的発達を低下させると結論された。

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