犯罪心理学研究
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49 巻, 1 号
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原著
  • 山本 麻奈, 等々力 伸司, 西田 篤史
    2011 年 49 巻 1 号 p. 1-14
    発行日: 2011/08/08
    公開日: 2017/09/14
    ジャーナル フリー

    本研究では,刑事施設における薬物依存者の再使用リスクを評価する尺度 (C-SRRS) を開発し,信頼性と妥当性を検討することが目的とされた。研究Iにおいて,平成20年3月から同年6月までの期間に薬物関連の犯罪により刑事施設に入所し,「薬物依存離脱指導」の対象者となった712人の受刑者のデータに対して因子分析を行ったところ,「再使用への欲求」,「情動・意欲面の問題」,「薬理効果への期待」,「薬物使用への衝動性」,「薬物依存への自覚の乏しさ」及び「薬害・犯罪性の否定」の6つの因子が抽出された。また,C-SRRSは,各下位尺度及び合計得点とも,高い信頼性が示された(α係数は,因子1から順に0.931, 0.850, 0.806, 0.805, 0.559, 0.683,全項目で0.895)。研究IIにおいては,平成21年1月から同年2月までの期間に薬物関連の犯罪により刑事施設に入所し,「薬物依存離脱指導」の対象者となった297人の受刑者に対し,精神医学的診断基準(DSM-IVによる物質依存の診断基準)及び再使用リスクに関連する項目を尋ねた自己記入式質問紙を外的基準とした分析により,C-SRRSの妥当性の検討が行われた。

  • 遊間 義一
    2011 年 49 巻 1 号 p. 15-27
    発行日: 2011/08/08
    公開日: 2017/09/14
    ジャーナル フリー

    CantorとLand (1985) の理論(C-L理論)及びGreenberg (2001) と遊間 (2009) の数理モデル (G-Y model) に基づいて,日本の少年による殺人事件発生率 (HR) の原系列に対する完全失業率 (UR) の犯罪動機効果(URの一階の差分によって測定される)と犯罪機会効果(URの原系列によって測定される)について,1974年から2006年までの年次時系列データを用いて検証した。その結果,中間少年及び年長少年の両群において,URの原系列とHRの原系列は共和分関係(長期的均衡関係)にあることがわかった。また,誤差修正モデルにより,短期的な関係においても,URはHRを促進することがわかった。G-Yモデルにより,これらの結果を総合すると,中間少年においても年長少年においても,犯罪機会効果は,C-L理論とは異なり,正で有意な犯罪促進効果を有しており,犯罪動機効果は年長少年にだけしか認められなかった。これらの結果について,日本で少年の殺人事件が発生する状況と,米国との違い及び犯罪動機効果のタイム・ラグという観点から考察を行った。

資料
  • 金子 泰之
    2011 年 49 巻 1 号 p. 29-37
    発行日: 2011/08/08
    公開日: 2017/09/14
    ジャーナル フリー

    本研究では,集団レベルの規範文化と個人レベルの規範意識を独立変数とし,3つの学校内問題行動(対教師的問題行動,対学校的問題行動,対生徒的問題行動)を従属変数とした。そして,規範文化と規範意識の水準によって,学校内問題行動にどのような違いがあるのかを検討した。公立中学校5校と私立中学校1校の中学生1,306名を分析対象とした。中学生に対し①問題行動の経験に関する項目と,②規範意識に関する項目について回答を求めた。学校ごとに規範意識尺度の得点を算出し,その得点を規範文化得点とした。得点の低かった下位3校を〈規範文化の低い学校〉と定義し,得点の高かった上位3校を〈規範文化の高い学校〉と定義した。生徒個人の規範意識得点を算出し,中央値をもとに規範意識低群と規範意識高群に分類した。そして,規範文化と規範意識によって問題行動経験がどのように違うのかを検討するため,規範文化(2)×規範意識(2)の2要因の分散分析を行った。その結果,対教師的問題行動と対学校的問題行動に対しては,学校レベルの規範文化が影響する可能性が示された。一方で,対生徒的問題行動に対しては,個人レベルの規範意識が影響する可能性が示された。

  • 大江 由香
    2011 年 49 巻 1 号 p. 39-49
    発行日: 2011/08/08
    公開日: 2017/09/14
    ジャーナル フリー

    本研究では,少年鑑別所に収容されることによる被収容少年の行動や態度に関する意識の変化を調査した。2008年にS少年鑑別所に入所した少年248名(男子219名,女子29名,平均年齢16.7歳,SD=1.6)に同意を得たうえで,入所時と退所時に調査票への回答を求めた結果,対象者が,自己のさまざまな行動や態度が健全な方向に変化したと感じていたことが認められた。また,少年鑑別所特有の要因が,対象者の行動や態度に関する意識の変化に有意に影響していることが示唆された。

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