犯罪心理学研究
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53 巻, 1 号
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原著
  • 横田 賀英子, 倉石 宏樹, 和智 妙子, 大塚 祐輔, 小野 修一, 渡邉 和美
    2015 年 53 巻 1 号 p. 1-20
    発行日: 2015/08/05
    公開日: 2017/03/23
    ジャーナル フリー

    住宅対象窃盗は,発生件数が多い重大な犯罪であるにもかかわらず,住宅対象窃盗犯の犯人特徴と彼らの犯行スタイルの関係に焦点を当てた研究はわずかである。本研究の主目的は,住宅対象窃盗の再犯者と初犯者において,どのように犯人特徴と犯行特徴が異なるのかについて検討することである。データは,単独による住宅対象窃盗の検挙歴を有する196人の再犯者と244人の初犯者の計440人の住宅対象窃盗の単独犯より構成され,再犯者と初犯者で特徴を比較した。分析の結果,より低い学歴や無職といった社会的不適応に関連する変数が再犯者においてより多く認められた。次に,18の犯行特徴を,変数間の関係性を記述することを目的として数量化III類によって分析した結果,「犯罪性」と「犯罪痕跡」の2軸が見出され,犯罪性のオブジェクトスコアは,住宅対象窃盗の犯罪経歴の回数と有意な相関関係を有していた(Spearman's ρ=-.46, p<.001)。最後に,ロジスティック回帰分析によって,再犯者と初犯者を識別するためのモデルを検討した。ROC分析の結果,構築されたモデルは中程度の予測精度を有していることが示された (AUC=.80)。

資料
  • 國吉 真弥
    2015 年 53 巻 1 号 p. 21-36
    発行日: 2015/08/05
    公開日: 2017/03/23
    ジャーナル フリー

    本研究では,集団場面における粗暴行為に影響を与える変数として,自己呈示目標,自己呈示を向ける対象及び印象操作への動機づけに焦点を当て,場面想定法を用いた質問紙により検討を行った。調査対象者は,非行少年(少年鑑別所収容中の男子少年194名)と無非行少年(非行歴のない男子高校生204名)であった。その結果,不良集団所属歴のある非行少年は,無非行少年に比べ,自分を強く見せようと虚勢を張るような自己呈示目標を抱きがちであること,自己呈示を向ける対象として「仲間」や「相手」を意識しがちであること,本研究で用いられたタイプの印象危機場面で印象操作へ強く動機づけられることなどが明らかになった。次に,想定場面で印象操作を動機づけられた少年を抽出し,そのうち,想定場面で粗暴行為を実行しようとする少年(高粗暴群)と実行しようとしない少年(低粗暴群)とを比較したところ,高粗暴群は,自分を強く見せようと虚勢を張るような自己呈示目標を抱きがちである一方,低粗暴群は,社会的に受け入れられやすい穏当な自己呈示目標を抱きがちであること,高粗暴群は,自己呈示を向ける対象として「仲間」や「相手」を意識しがちである一方,低粗暴群は「周囲の人」を意識していることなどが明らかになった。

  • 緒方 康介
    2015 年 53 巻 1 号 p. 37-48
    発行日: 2015/08/05
    公開日: 2017/03/23
    ジャーナル フリー

    本邦における犯罪心理学の実態を明らかにするために『犯罪心理学研究』の論題をテキストマイニングにより分析した。半世紀にわたる原著および資料の研究論文326本から抽出されたキーワードの関連性を多重対応分析で探索し,研究テーマの時系列による変遷ならびに領域による相違を調べた。総じて,本邦の犯罪心理学は多様化してきており,伝統的な矯正領域に加え,警察領域や児童領域の研究テーマが増え,大学でもさまざまな研究が行われている実態を描き出すことができた。

展望
  • 入山 茂
    2015 年 53 巻 1 号 p. 49-63
    発行日: 2015/08/05
    公開日: 2017/03/23
    ジャーナル フリー

    心理学的検死とは,変死事例における故人のパーソナリティ,思考方法,および自身の死亡への関与の程度に焦点を当て,死亡直前の故人の心理状態を再構成しようとすることである(Canter, 1999, p. 125)。本論文では,捜査心理学における理論的位置づけ,歴史,定義,手続きおよび課題に加え,関連する法医学的概念ならびに日本の検視体制を明らかにした上で,日本の捜査心理学における心理学的検死の概念を明らかにすることを第1の目的とした。また,日本の捜査心理学における心理学的検死研究の今後の展開について展望することを第2の目的とした。特に,日本では理論,実証および実務の3つの側面から研究する必要があることについて議論した。

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