犯罪心理学研究
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53 巻, 2 号
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原著
  • 大塚 祐輔, 横田 賀英子, 小野 修一, 和智 妙子, 渡邉 和美
    2016 年 53 巻 2 号 p. 1-15
    発行日: 2016/01/31
    公開日: 2017/03/23
    ジャーナル フリー

    本研究では,文書を用いた恐喝事件に関する基礎的な知見を提供することを目的として,事件の類型化を行い,各類型と犯人特徴の関係について検討した。分析データとして用いたのは,2004年から2012年の間に全国のいずれかにおいて発生して解決した文書を用いた恐喝事件に関する情報である(N=414)。多重対応分析を行った結果,「匿名性の程度」と「罪悪感利用の程度」の2次元が見出された。次に,多重対応分析によって得られたオブジェクトスコアを基に階層的クラスター分析を行った結果,「匿名性低―罪悪感利用低群」,「匿名性低―罪悪感利用高群」,「匿名性高群」の3類型が見出された。類型と犯人特徴の関連について分析したところ,「匿名性低―罪悪感利用低群」は20代以下の犯人が多く,友人・知人を犯行対象としていること,「匿名性低―罪悪感利用高群」は怨恨・憤まんを動機として,配偶者・恋人や情交関係にあった者を犯行対象にしていること,「匿名性高群」は50代または60代以上の犯人が多く,生活費・借金苦を動機として会社等に対する恐喝を行っていることが示された。

  • 緒方 康介
    2016 年 53 巻 2 号 p. 17-27
    発行日: 2016/01/31
    公開日: 2017/03/23
    ジャーナル フリー

    被害児に対する加害親の過剰期待が虐待の発生に関連するとの知見が報告されている。児童相談所で新版S-M社会生活能力検査(S-M)とWechsler Intelligence Scale for Children-fourth edition (WISC-IV)が実施されたケースから,①虐待被害児のS-Mを加害親が評定(n=35),②虐待被害児のS-Mを施設保育士が評定(n=20),③虐待されていない子どものS-Mを保護者が評定(n=59),④虐待されていない子どものS-Mを施設保育士が評定(n=18)しているデータを収集した。社会生活指数(SQ)からIntelligence Quotient (IQ)を減算した差分Δに評定者の過剰期待が反映されていると操作的に定義した。年齢と群の要因が交絡していたため,年齢要因をランダム効果に設定した線形混合モデルにより分析したところ,Δ(SQ-IQ)には群間差が認められ(F[3, 126.3]=4.54, p=0.005),③虐待されていない子どもの保護者評定より,①虐待被害児を加害親が評定した場合にΔ(SQ-IQ)は大きかった。過剰期待が生じる背景に認知バイアスが潜在している可能性を考察した。加害親の過剰期待に関する知見が得られたことから,児童相談所における保護者支援の手掛かりが示されたものと結論した。

資料
  • 財津 亘
    2016 年 53 巻 2 号 p. 29-41
    発行日: 2016/01/31
    公開日: 2017/03/23
    ジャーナル フリー

    本研究は,最近10年間の放火事件を対象に,単一ならびに連続放火犯が述べた動機をテキストマイニングによって分類することを目的とした。研究1では,まず単一放火犯が供述した動機に関する文章(文字列)を対象に名詞を抽出し,放火犯ごとで名詞の出現度数を算出した。これにより作成されたデータセット(253名×67名詞)について,古典的多次元尺度法(重み付きユークリッド距離)による分析を行い,名詞を2次元上に布置した。つづいて,2次元上に布置された名詞の座標データを基に,階層的クラスター分析(Ward法,ユークリッド距離)を実施し,放火動機を分類した。その結果,単一放火に関する7類型が見出された(①怨恨型,②自殺型,③不満の発散型,④犯罪副次型,⑤保険金詐取型,⑥火遊び型,⑦人生悲観型)。続く研究2では,連続放火犯127名の供述における44の名詞を変数として,研究1と同様の分析を行ったところ,連続放火に関する5類型が抽出された(①不満の発散(雑多要因)型:ギャンブルの負けなど,②不満の発散(就業要因)型:仕事や就職活動の失敗など,③火事騒ぎ型,④逆恨み型,⑤犯罪副次型)。加えて,単一放火の中心となる動機が“怨恨”であり,連続放火の動機の中心は“不満の発散”であることを示唆した。

  • 久原 恵理子, 宮寺 貴之, 藤原 佑貴, 小林 寿一
    2016 年 53 巻 2 号 p. 43-57
    発行日: 2016/01/31
    公開日: 2017/03/23
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,非行少年に対する指導について教師が抱くイメージの特徴を,非行少年への個別的な指導に対する態度および共感性との関連のあり方から検討することである。中学校または高校の教師に対して,非行少年への指導に対するイメージ,個別的な指導に対する態度,共感性等を尋ねたウェブ調査を実施した。イメージ尺度と態度尺度をそれぞれ因子分析 (N=432) した結果,イメージ尺度は「冷静・公平」,「寛大さ」,「厳しさ」,「権威・一方的」の4因子,態度尺度は「受容」,「指導」,「自己開示」の3因子が抽出された。イメージ尺度と態度尺度や共感性尺度との相関関係のあり方から,イメージ尺度の4つの下位尺度には,それぞれ異なる特徴があることが示された。また,教師個人を単位とした場合における,イメージと態度の組み合わせの特徴を検討するために,イメージ尺度と態度尺度を用いてクラスター分析 (N=410) を行った。その結果,「権威・一方的」以外のイメージ尺度および態度尺度の下位尺度得点が相対的に高いという,父性原理と母性原理の両方を重視する群が見出された。さらに,この群の特徴として,共感性尺度のうち,「視点取得」と「共感的配慮」の得点が高いことが示された。したがって,父性原理と母性原理の両方を重視する教師は,非行少年の立場に立った指導を行うことが示唆された。

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