犯罪心理学研究
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54 巻, 1 号
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原著
  • 河合 直樹, 窪田 由紀, 河野 荘子
    2016 年 54 巻 1 号 p. 1-12
    発行日: 2016/09/27
    公開日: 2017/03/22
    ジャーナル フリー

    社会的養護にある児童の高校進学率が年々高まっているなか,高校中退率を見てみると,一般家庭よりも社会的養護出身者のほうが高く,とりわけ,児童自立支援施設退所者に至っては,全国的に調査されたデータはなく,その要因についてほとんど研究がなされていない。そこで本研究では,児童自立支援施設退所後,高校進学した者の社会適応過程について,複線径路・等至性モデルを用いて質的に分析した。調査協力者4名へのインタビューから作成したTEM図をもとに分析を行った結果,高校を卒業した者と中退した者とでは,(1)高校へ入学した初期の段階で,部活へ入るなどの新しい活動の場=自分の居場所を見いだせること,(2)授業でわからないことがあったときに友人や教師に助けを求められること,(3)担任教師に対する信頼感があることが,高校を継続していくために重要な要因であることがわかった。

  • 野村 和孝, 安部 尚子, 嶋田 洋徳
    2016 年 54 巻 1 号 p. 13-29
    発行日: 2016/09/27
    公開日: 2017/03/22
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,累犯刑務所におけるマインドフルネス方略と目標設定に焦点をあてた集団認知行動療法(MGF)に基づく薬物依存離脱指導への参加が,覚せい剤使用者の再使用リスクに及ぼす影響について検討することであった。本研究では,累犯刑務所に服役しており,薬物依存離脱指導の対象となった者56名を対象に,MGFプログラムと野村ほか(2014)の開発した集団認知行動療法プログラム(TAU)の2つのプログラムのいずれかを実施し,プログラム実施前後に刑事施設における薬物依存症者用評価尺度(山本ほか,2011; C-SRRS)への回答を求めた。MGFプログラムでは,TAUにおけるコーピング方略の検討部分をマインドフルネス方略と目標設定の検討に変更したプログラムを実施した。分析対象となったMGF群の12名とTAU群の13名を比較した結果,MGF群のみ薬物依存離脱指導の実施前後において「情動・意欲面の問題」の因子得点の減少が有意であったことが確認され,また「再使用への欲求」,「薬理効果への期待」,「薬物使用への衝動性」,および「薬害・犯罪性の否定」の4つの因子得点が両群ともに減少が有意であったことが確認された。さらに,薬物依存離脱指導の前後におけるC-SRRSの下位因子得点の変化量と属性項目の関連性を検討した結果,両群ともに入所回数が少ない者ほど「薬害・犯罪性の否定」因子の改善がなされていることが示された。これらのことから,マインドフルネス方略と目標設定に焦点をあてることによって「情動・意欲面の問題」因子の改善を促進することが明らかとなった。一方で,入所回数の多い者に対しては,「薬害・犯罪性の否定」因子の改善効果を高めるための手続きをさらに検討する必要が示唆された。

資料
  • 緒方 康介
    2016 年 54 巻 1 号 p. 31-40
    発行日: 2016/09/27
    公開日: 2017/03/22
    ジャーナル フリー

    犯罪心理学を含めた実践領域の心理学方法論では,臨床における対象者の特徴を描き出すために,比較対照するコントロール群の構成問題が極めて重要である。本研究では,従来用いられてきたマッチング法の欠点を指摘しつつ,新たにモンテカルロ法の導入可能性を検証するため,両方法によるコントロール群を構成し,標的となる虐待された子どものWISC-IVにおけるプロフィール特徴を比較分析した。児童相談所の記録から,虐待された子ども(以下,虐待群)137名分のデータが収集され,交絡要因が統制された同数のマッチング群が抽出された。次にモンテカルロシミュレーションを用いて,理論的な母集団をモデルとした乱数データを生成し,虐待群の知能水準に近似するデータを反復抽出して検定を繰り返した。その結果,マッチング群のプロフィールには偏りが発見され,偏りのないモンテカルロ群のほうが,コントロール群としての適切性を有している可能性が示された。

  • 菅 美知子, 萩野谷 俊平, 細川 豊治, 蒲生 晋介, 石内 彩美
    2016 年 54 巻 1 号 p. 41-51
    発行日: 2016/09/27
    公開日: 2017/03/22
    ジャーナル フリー

    本研究では,拠点推定モデルの精度について,犯行地点数を考慮した検討を行った。分析では,15地点以上の住宅侵入盗を行った55名分のデータを使用し,サークル仮説中心,空間平均,CMD(center of minimum distance: 最小距離中心)の各モデルについて,3地点から15地点までの各犯行地点数における誤差距離(犯人の推定居住地と実際の居住地の間の直線距離)を比較した。多重比較を行った結果,犯行地点数が7地点以上の場合に,CMDにおける誤差距離がサークル仮説中心よりも短かった。結果から,犯行地点数がモデルの推定精度に与える影響はモデルによって異なることが示唆された。

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