非行少年や犯罪者について,共感性に焦点を当てた研究がなされてきた。しかし,共感を喚起させるさまざまに異なった状況における非行少年や犯罪者の感情や対処についての反応の特徴を明らかにすることも大切である。したがって,少年鑑別所在所中の男子非行少年(n=174)と男子学生(n=164)の反応を比較することにした。共感を喚起させる3場面における感情的反応の指標として並行的感情,他者指向感情,行動的反応の指標として衝動的援助,統制的援助,回避的対処が測定された。Davidによる共感の組織モデルに基づいて構築したモデルについて共分散構造分析を行った結果,双方の感情的反応は統制的援助に正の影響を与えていた。反対に,並行的感情は衝動的援助に正,回避的対処に負の影響を与えていた一方,他者指向感情は衝動的援助に負,回避的対処に正の影響を与えていた。さらに,非行少年は学生に比べて並行的感情,統制的援助,回避的対処が少なく,加えて,他者指向感情,衝動的援助が多い傾向にあった。
埼玉県警察では,授業抜け出しや校内暴力などの問題行動が継続している中学校に,警察職員であるスクール・サポーター(以下「SS」と記す)を派遣し,巡回,教師への助言,生徒への声かけや指導を行っている。今回の研究では,「SSと教師,生徒の関係の変化のプロセス」「教師の指導体制の変化のプロセス」「問題行動の変化のプロセス」を明らかにすることを目的として,SS計14人を対象として,主にSSの活動内容をインタビューテーマとした半構造化面接を行い,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(M−GTA)を用いて分析した。その結果,変化のプロセスは,「SS導入時に見られる学校の個別性」「SSへの抵抗と問題行動の継続」「SSとの連携形成と指導体制のエンパワー」「問題行動が緩和された学校」の四つにまとめられた。