抄 録:くも膜下出血(subarachnoid hemorrhage;SAH)は脳卒中3 病型のなかでもっとも頻度が低いが,死亡率がもっとも高い疾患である。転帰不良の最大要因は,出血直後から生じる早期脳損傷(early brain injury;EBI)である。EBI はSAH 発症72 時間以内に進行する脳損傷と定義され,脳動脈瘤破裂による急激な頭蓋内圧亢進(intracranial pressure;ICP)と脳灌流圧(cerebral perfusion pressure;CPP)および脳血流(cerebral blood flow;CBF)の低下,ならびに血腫そのものによって惹起されるさまざまな有害事象の連鎖がその本態である。EBI をもたらす要因として,全脳虚血,出血による機械的応力,微小循環障害,脳血液関門の破綻,皮質拡延性抑制,エンドセリン-1,炎症等の関与が想定されている。EBI に対する特異的な治療法は現在のところ確立されていないため,その進行を可及的に抑制し,二次的脳損傷を軽減するとともに遅発性脳虚血を予防し, 早期発見と治療を行うことが転帰改善のためにきわめて重要である。EBI を中心にSAH の病態を概説し,最重症SAH に対する超急性期からの脳低温療法導入と復温後の血管内冷却法による体温管理に関する当施設の取り組みを報告する。
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