人工血管置換術で問題になる人工血管からの漏血について検討するために, 新しく動物実験モデルを作成し, 5種類の人工血管で経時的漏出量, 漏出液の性状, 漏血状態を観察した。4時間体外循環後, 各人工血管の内面を走査電子顕微鏡で観察した。人工血管の種類は, ゼラチン被覆処理knitted Dacron (“Gelseal”グラフト), およびlow-porosity (50ml/cm2/min), high-porosity (1200ml/cm2/min) の2種類のwoven Dacron人工血管に, 各々アルブミン熱処理, フィブリン糊処理を施行した計5種類とした。経時的漏出量は, 各時間毎, 各グラフト別で統計学的有意差なかったが, ゼラチン被覆処理, アルブミン熱処理グラフトで少ない傾向を認め, フィブリン糊処理では経時的漏血の進行を認めた。漏出血液の性状は, 赤血球数, Ht値において各グラフト間, 循環血液との間に統計学的有意差はなかった。人工血管の漏血はいずれもpreclottingの脱落や脆弱部位からの漏出であり, 特にフィブリン糊処理では, fibrinolysisが関与していると考えられた。本実験モデルは, 日常臨床で経験している体外循環下の人工血管の漏出形態 (グラフト特性, 経時的漏出量の変化) をよく反映しており, 人工血管の臨床的な検討に有用であることが示唆された。
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