主たる動脈性末梢血流障害は, 動脈硬化性閉塞, 閉塞性血栓血管炎とRaynaud症候群の3疾患である。末梢組織毛細管の循環障害と, 中枢側動脈閉塞の2病因がこれらの原因と考えられている。次の2疾患とことなり, 中枢側の動脈閉塞は, 全く認められないRaynaud症候群には, 末梢動脈の発作的収縮が発来し, 最後に末梢組織壊死が生ずる。この疾患は病的血管運動神経反射によると思われている。よって交感神経遮断が, 最も適した療法である。閉塞性血栓血管炎は末梢組織毛細管障害が先行するか, 中枢側動脈閉塞がはじめに発生するか不明である。動脈硬化性閉塞は, 中枢側動脈閉塞が先発する。乏血性指趾壊死の病理反応と治療傾向をとらえるため, 指趾容積脈波を測定した。本法は如何なるriskもなく, 頻回に施行しうる。このとき脈波を3要素に分離して検討した。その3要素とは丘形波, 棘状波とノッチである。丘形波は指趾組織毛細管循環を表現し, 棘状波とノッチは, 中枢側動脈が開存し, 心拍動のリズムが指趾まで達していることを示す。指趾乏血性腫瘍の創傷治癒には, 丘形波のみが問題になる。中枢側動脈閉塞に対しては, 血行再建術が適当である。これに対して末梢毛細管循環障害は, 交感神経遮断が合理的である。創傷治癒と指趾末端壊死の予防という両目的に行った各種療法の効果を, 79症例について追跡調査した。血行再建, 交感神経遮断と抗凝固化学物質療法の3症例群に分類し, それらの遠隔成績を比較した。当教室に治療目的にて来院した症例は, 病勢進展度が大である。血行再建術をうけた患肢を, 数年後再手術したり, 切断したものが多い。それに反し, 交感神経遮断手術は多くの愁訴, たとえば患肢冷塞の自覚症状は残るも, 患肢切断することなく, 5年以上生存する患者が多い。
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